目次

航空機は人だけではなく貨物輸送も行っている

1.高成長が見込まれる貨物部門
「旅客部門」とともに航空会社のビジネスの大きな柱となるのが「貨物部門」である。世界にはフェデラル・エクスプレスやユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)など、インテグレーター(空陸一貫輸送企業)と呼ばれる貨物専業の大企業があるが、旅客輸送を担う世界の大手航空会社もそれぞれ貨物事業を展開。

ジャンボ機では1階客室の下にあるベリー(機材の腹の部分)などに貨物を搭載し、輸送している。日本航空の場合、2005年度の国際線の売上の約21%を貨物収入が占めている。貨物の中身は、日本からの輸出では約73%が機械機器、約20%が半導体等電子部品など。

こうした高付加価値商品を中心に、日本発着の国際貨物量は急速に拡大した。輸出入の合計は1990年の約158万tから05年はその2倍以上にあたる約319万tとなった。経済のボーダーレス化による国際分業の増加、在庫削減、製品サイクルの短縮化などがその背景にある。国際貨物を輸送量ベースでみると、航空輸送が占める割合は0.3%に過ぎないが、金額ベースでは約30%を占めるのである。

航空会社別では、IATAの国際航空貨物輸送実績で04年度、05年度と連続で世界1位にランクされた大韓航空をはじめ、ルフトハンザカーゴ、シンガポール航空などがトップクラスの実績をもつ。


2.今後20年間、平均6%台の成長
日本の航空会社も貨物事業の拡大を最重要課題のひとつに掲げる。日本航空は、05年度に2100億円だった貨物事業の売上(国際。国内合計)を10年度には約3割増の2710億円に拡大する計画だ。そのために同社は、大型機と中型機のコンビネーションによる効率的な運航体制の実現や、中国および国内深夜便マーケット等の成長市場への展開を積極的に図るとしている。

全日空にとっても、貨物事業は国内、国際の旅客事業と並ぶ3本柱のひとつで、国内の深夜貨物便事業等にも積極的だ。06年2月には、日本郵政公社などと貨物専業のANA&JPエクスプレスを設立した。ほかに貨物専業では、日本郵船グループの日本貨物航空(NCA)、06年10月末より運航を開始した佐川急便系の新規航空会社、ギャラクシーエアラインズなどがある。

世界経済の堅実な成長をバックに、航空貨物輸送は今後も高い成長が見込まれる。ボーイングでは25年までの今後20年間の年平均成長率を6.1%と見込む。これは旅客輸送の同4.9%を大幅に上回る数字だ。とくにアジア圏では高い成長が予測される。同社では今後20年間で世界の貨物専用機の数が、06年時点のちょうど2倍になるとみている


3.「人と一緒に運ぶ」か「物だけ運ぶ」
人を運ぶだけが航空機の役割ではありません。物を運ぶ役割、つまり、貨物輸送も航空産業を支える環境として無視するわけにはいきません。

貨物輸送には大きく分けて2つの形態があります。旅客を運ぶ航空機の下部のスペースを使って、旅客と同時に貨物を運ぶ方法(ベリー輸送)と、貨物専用機を使って貨物だけを運ぶ方法です。

フェデックス(フェデラル・エキスプレス)やユナイテッド・パーセルといった貨物便専門会社は、後者に特化して輸送を行っていますが、日本航空などの航空会社は、貨物専用便を持ちつつ、ベリー輸送も行っています。

大手航空会社の貨物輸送については、もう1つ注目すべき事柄として、航空貨物アライアンスWOWがあります。これは、旅客輸送の面で行っているアライアンスとは別の形で、すなわち貨物輸送の面で形成されたアライアンスです。

WOWでは、旅客面でのアライアンスの枠組みを越え、まったく違ったアライアンスに属する会社同士が結びつき合っています。具体的には、ルフトハンザ、エールフランス、英国航空、シンガポール航空など、有力な航空会社がメンバーとなっており、日本航空も2002年に加盟しています。

このようなアライアンスが登場してきた背景としては、2点考えられます。1つは、旅客輸送だけでなく航空貨物の輸送も、景気の動向に強く影響されるため、航空会社間で提携する必要があったということです。

しかし、より重要なのは、主としてベリー輸送を行う航空会社が、単独ではなかなか貨物専用会社の規模に勝つことができず、貨物事業の継続が難しくなるという点でしょう。実際、日本航空は、再建過程の中で、貨物専用便の撤退を表明しました。それは、貨物専用会社である日本貨物航空との提携交渉が行き詰まり、結局は決裂という形に終わったのを受けてのことです。今後は、全日空が那覇空港の貨物基地をどのように展開していくのかが、大いに注目されるところです。


4.「9.11」を機に貨物輸送の見直しが進む
歴史的に見て、航空貨物の重要性が飛躍的に高まったのは、先進国メーカーが生産コストのより安い場所、特にアジアヘと生産拠点を移し始め、国際分業体制が深化していく過程の中でのことでした。

こうしてメーカーの部品・完成品が、アジア域内、あるいはアジアとその他の地域との間で、頻繁に空輸されるようになります。特に電子部品など、容積が小さい反面、付加価値が高いものであれば、海運よりもはるかに効率的です。

それにもかかわらず、こうした物流体制の重要性は、実際の市場の中ではともかく、国際経済学のような学術的な面ではあまり顧みられてこなかつたように思われます。「物流体制は確実に機能して当たり前」そんな思い込みがあったせいで、そのリスクが注目されることがあまりなかったのではないでしょうか。

そんな無関心な態度に大きな反省を迫ることになったのが、2001年9月に起こった米国同時多発テロです。この事件直後、米国の空港は全面的に閉鎖され、国際物流は完全にストップしました。これによって生じた経済的損失は膨大です。

その後も、米国を離発着する航空便には多くの制約が課されることになります。旅客の入国管理が非常に厳しくなったことは有名ですが、貨物に関しても、爆発物が含まれていないかどうかをたしかめるために、貨物を空港内に一定時間取り置くという措置が長期にわたって実施されました。

この結果、スピードが要求される航空貨物輸送に遅れが生じ、大きな支障をきたすことになりました。また、検査待ち貨物のためのスペース確保が、空港側の悩みの種になりました。

しかし、こうした国際的物流体制の大きな混乱を機に、物流体制の確保・維持は、一種のリスク管理として見直されるようになったのです。

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