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原油価格の高騰による燃油サーチャージは運賃に組み込めない

1.燃油サーチャージ
「ヨーロッパ往復4万8,000円!」インターネットでそんな割安な航空券を見つけて予約すると、あとから「諸経費」の名目で追加の請求があり、結局は予算をオーバーしてしまう。最初の「4万8,000円」という値段は、いったいなんだったのか!

海外航空チケットを買ったりパックツアーを予約して、そんな経験をしたことはありませんか?
追加で請求される「諸経費」のうち、旅行者にとってとくに大きな負担になっているのが「燃油サーチャージ」です。

2.欧米路線では片道3万円以上も!
燃油サーチャージとは、原油価格の高騰にともない、航空会社の企業努力だけでは吸収しきれなくなった燃油価格の一部を乗客に負担してもらうという追加運賃のこと。日本でも2005年より、ほとんどのエアラインの旅客便に導入されました。

飛行機を飛ばすには、大量のジェット燃料(ケロシン=灯油の一種)が必要になります。それだけに、原油価格の高騰がエアラインの経営に与える影響は小さくありません。燃料経費は本来、航空運賃に含まれるもので、運賃を値上げして対処するという方法もあります。しかし業界は、高い運賃を利用者が嫌い、旅行需要力抵迷することを恐れました。

そこで、空港施設使用料などに加えた「諸経費」の一部として航空券とは別に徴収する方法をとったのが、燃油サーチャージなのです。サーチャージがかかるのでしょうか?

サーチャージは各社それぞれに日本の国土交通省に申請し、認可されるもので、エアラインや区間によって設定が若干異なります。たとえば2008年10月時点でのJALとANAのサーチャージをエリア別に見てみると、韓国が片道4,000円。中国や台湾、香港などで片道1万500円。シンガポール、タイ、マレーシアになると距離が延びるぶん、片道2万円と高くなり、北米やカナダ、ヨーロッパ線では片道3万3,000円に達してしまいます(いずれも日本で購入した場合)。

3.航空運賃に組み込めないの?
燃油サーチャージという言葉自体は旅行者の間でかなり浸透してきたものの、行き先によっては「こんなに払わなければならないの?」と驚かされることもしばしばです。燃油サーチャージだけで3万円を超えるとなると、単なる「諸経費」としては割り切れないという人も出てくるでしょう。

だったら、最初から航空運賃に組み込んで徴収したほうがいいのでは?最近はそんな声もよく耳にします。それに対して、あるエアライン関係者はこう答えてくれました。

「燃油サーチャージとは本来、原油価格の激しい変動に対応するための暫定的な措置です。国土交通省も、原油価格が一定水準に戻るまでという廃止条件を明確にしています。原油価格が下落した際には額を引き下げるか、廃止しなければならないのですが、一度航空運賃に組み込んでしまうとそれが既成事実となって、値段を下げないところが出てくる危険があります」

なるほど。しかし現実は逆で、原油価格は下落するどころか、ずっと高騰の一途をたどってきました。2008年の夏を境にやや下がり始めましたが、それでも燃油サーチャージは旅行者の肩に重くのしかかっています。今後もこれまでどおり、ただ黙って高い燃油サーチャージを払い続けていくしかないのでしょうか。
4.天然カスやバイオ燃料への期待
いいえ、最近はジェット燃料を原油にこれ以上頼らないための新しい取り組みをスタートするエアラインも出てきました。
その1社がカタール航空で、航空機メーカーのエアバスやエンジンメーカーのロールスロイス、カタール石油などと提携して天然ガスジェット燃料の開発に着手すると発表。もう1社はヴァージンアトランティック航空で、ボーイング747を使った世界初のバイオ燃料による試験飛行を2008年2月に実施しました。

ヴァージンアトランティック航空が試験飛行で使用したバイオ燃料は、ババスオイルとココナッツオイルを混合したもの。再生可能なバイオ燃料は、従来のケロシンに代わる航空機用ジェット燃料として期待を寄せる人も多く、ほかにニュージーランド航空、コンチネンタル航空、JALなどもバイオ燃料を使った同様な飛行実験を計画しています。

いずれも実用化までには時間がかかるでしょうが、原油価格の大幅な下落が期待できない先行き不透明な時代には、そうした先進性に富んだチャレンジに期待するほかはありません。両社の試みにはいま、世界の注目が集まっています。

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