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LCC旅客機(格安航空会社)が低運賃な理由に迫ってみた!

1.安さを実現するための秘訣LCCの基本的な特徴とは
まず「LCC」とは、ロー・コスト・キャリアの頭文字をとった略語である。直訳すれば「低経費航空会社」ということになろうか。訳語として一般的なのは「格安航空会社」という言葉で、新聞やテレビでもこの訳語を使うことがほとんどだ。

しかし、低コスト運航をしているからといって、その航空会社が航空券を格安販売しているとは限らない。大手航空会社の中には子会社を設立して運賃体系や人員体制を親会社とは差別化し、大幅に運航コストを削減しているケースが珍しくないが、運賃体系はグループ一体となっている場合が多い。

そう考えると、LCCを格安航空会社と訳すのはやや正確性を欠く。格安航空会社を表す言葉としては「ロー・フェア・エアラインなどという言葉のほうがふさわしい気がするが、とにもかくにもLCCという言葉が定着してしまった。それは、LCCがコスト抑制分を利用者に還元して低運賃を提供しているからだ。逆に低コストモデルであっても運賃が安くなければLCCと呼ばれることはない。

それでは、LCCとそうでない航空会社の差はどこにあるのだろうか。そこで典型的なLCCのビジネスモデルについて、その特徴を次のように簡単にまとめてみた。

2.LCCの起源とは
LCCという言葉が世の中で広く使われはじめたのは1990年代になってからである。それまでもLCCという言葉は使われていたが、他にも「ノンフリル・エアライン」や「バジェット・エアライン」、あるいは「ロー・フェア・エアライン」と呼ばれていたのは別稿でも説明したとおりである。日本語では「低運賃エアライン」とでも訳すべき呼称だろうが、ここでは混乱を避けるためLCCで統一する。まず、LCCの起源(オリジン)はどこにあるのだろうか。

実ははっきりとは分かっていないのである。なぜなら、通常のエアラインよりも安い運賃を提供する戦略は1950年代からアメリカ国内線等で見られたからだ。そんな中、LCCの起源と考えられるのが、アメリカのパシフィック・サウスウエスト航空である。PSAは1950年代末、ロッキード・エレクトラを需要の多い西海岸の短距離路線に投入、極めて短いターンアラウンド時間を実現し、他社よりも安い運賃でサービスを提供していた。

この低運賃モデルは多くの利用者を惹き付けただけでなく、メーカーであるロッキードはPSAの低運賃モデルを紹介し、エレクトラの優秀さをアピールしたほどだ。

PSAは必ずしも現在のLCCと同様のビジネスモデルを確立したわけではないが、その後も低運賃サービスを売りとするエアラインは複数登場している。例えば、日本の立川基地に米軍チャーターで飛来していたキャピタル航空もそんなエアラインの一つだった。そして、このPSAの低運賃モデルに注目したのが、サウスウエスト航空の創始者である。

3.LCCは、なぜチケットをここまで安くできるのか?
日本国内を拠点とする格安航空会社(LCC)が登場し、日本でも空の価格破壊がはじまった。 そのLCCの特徴のひとつに、折り返し時間が短いことがある。空港に到着してから離陸するまでの時間は、わずかに25~30分程度。全日空や日本航空よりも15分以上短い。

もともと、旅客機は空を飛んでいるあいだだけが。営業時間である。安いチケット代金で利益を上げようとすれば、その旅客機の営業時間比率を高める必要がある。逆にいえば、駐機場での。遊び時間を短くすることが必要なのだ。 また、折り返し時間が短いということは、空港での人件費を安くおさえられるということでもある。

たとえば、全日空や日本航空は、45~60分という折り返し時間内に、燃料補給、機内清掃、機内食搭載などの作業を行なっていくことが必要であり、その人件費はチケット価格になる。

いっぽう、機内サービスのほとんどを省略しているLCCでは、まず機内食を搭載する必要がない。そのぶん、ゴミの出る量が少なくなるので、機内清掃は客室乗務員( キャビンアテンダント)の仕事となっている。そうして、機内食を運んだり、機内を清掃する作業員の人件費を丸々カットできることも、つながっている。

さらに、LCCの旅客機は自走してゲートから離脱できるように駐機することが多い。すると、トーイングカーに押してもらう必要がなくなり、その使用料をカットできることも、チケットを安くできる一因となっている。

4.運航機種の統一
LCCの多くは運航する旅客機を1機種に限定している。旅客機のパイロットは、基本的には1機種しか操縦しない。複数機種のライセンスを持っているパイロットは大勢いるものの、たとえば現在エアバスA320に乗務しているとすれば、他機種を操縦することはないのである。

複数の機種に同時期に乗務することによって操縦ミスなどのヒューマンエラーが発生することを防止するのが主目的だ。その後、機種移行訓練を受けてボーイング737に乗務するようになった場合、今度はA320に乗務することはない。

これを航空会社側から考えると、複数機種を運航した場合、その分だけ必要なパイロットが増えることを意味する。訓練も別々に行わなければならないし、整備作業も別々で予備部品は大幅に増える。整備士にもそれぞれの機種の整備資格が必要だ。また、座席配置や定員の異なる機種があると、予約システムなども複雑になる。いずれにしても、機種が増えることによってコストは大幅に跳ね上がってしまうのだ。

5.ウェブの最大活用
かつて航空券は空港や市内の航空会社カウンターや旅行会社で手配するのが一般的だった。直接出向かなくても、予約センターに電話すれば、係員が対応してくれる。
こうした作業をLCCでは基本的にウェブに移行させている。

ウェブ予約の最大の利点は、システムを整えてしまえばあとは利用者自身が必要な作業をして航空券を発券できるところだ。もちろん、まったく人手が要らないわけではないが、カウンターや予約センターに人員を配置するのに比べれば大幅に人件費を抑制できるのは間違いない。機種統一でも同じことがいえるが、余計な人員を雇わない、というのがLCCの基本中の基本となっている。

サービスを最低限に抑制
「LCCはサービスがまったくないか、あっても有料」という先入観を持っている人は少なくない。多くのLCCがそうしたシステムを採用しているのは事実で、ノンフリル・エアラインという言葉もある。

フリルとは洋服の袖や襟についている飾りのことだが、ほかに「余分なもの」という意味もあり、転じて航空会社の過剰サービスについて指す言葉ともなった。

フルサービスエアラインともいわれる大手航空会社ではドリンクサービスはもちろん機内食も無料だが、これらを廃止してしまえば仕入れ費用だけではなく、搭載などに必要な人員を削減でき、機内で発生するゴミも少なくなり、わずかではあるが離陸重量の低下により燃料費も安くなる。

実際にはLCCでもドリンクなどは完全廃止することなく有料化するなどして提供されているが、無料でフルサービスを行うLCCはかなり少数派だ。また、国際線であってもビジネスクラスなどを設けず、エコノミークラスのみの単一クラスで運航するのが一般的。

もちろんコストを抑制するのが主目的で、大手よりも座席数を多くすることによりさらに収益率を上げている場合が多く、個人用モニターなどの娯楽システムもない。乗客にとっては窮屈さに耐えなければならないわけだが、LCCは短距離路線を中心に飛ぶので、快適性が低くても乗客のストレスはそれほど大きくはならないだろう、という計算もある。

6.機材稼働率の最大化
「旅客機は地上にいる間は稼がない」とは、航空業界でしばしば聞かれる言葉である。確かに旅客機は空を飛んで乗客を運んでこそ事業に貢献する。そこでLCCでは「稼がない時間」を極力減らす工夫をしている。旅客機が空港に到着し、再び出発するまでの折り返し時間を「ターンアラウンドタイム」という。

LCCでは国内線ならばターンアラウンドタイムを30分程度に設定する場合が多い。日本の大手航空会社では、空港にもよるが40から50分が一般的で、1時間以上停留することも珍しくない。

特に日本では地方空港であっても乗降にボーデイングブリッジ(搭乗橋)を使用することが多いが、実は搭乗橋を使うと快適である反面、時間的・コスト的には無駄が発生することにもなる。まず搭乗橋を操縦するオペレーターが必要になるし、小型機の場合は前方1か所にしか搭乗橋を接続できないため、乗降に時間がかかる。出発するときにはトーイングトラクター(牽引車)によって駐機スポットから押し出すプッシュバック作業が必要だ。

LCCではあえて搭乗橋を使わず、タラップ車を使うケースが少なくない。簡易なタラップの場合、係員が手で押すだけで機体に接続させられるし、前後のドアから乗降させることでターンアラウンドタイムが短縮できる。プッシュバックを必要としない自走式スポットであれば、さらに効率的だ。

乗客にとっては若千不便なこともあるかもしれないが、だからLCCは運賃が安いのだと納得して利用しなければならない。こうした徹底した効率化の結果、大手航空会社の旅客機が1機あたり1日3往復くらいしかできない路線をLCCの旅客機は4往復したりする。「1往復分だけLCCの旅客機のほうが稼ぐ」ということになるのだ。


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