目次

航空運賃のPEXやITって何?普通運賃との違いを解説

1.普通運賃とPEX運賃
基準となるのは「普通運賃」
国内線以上に種類が豊富な国際線の旅客運賃。航空会社のオンライン予約の画面を開いても、予約可能な運賃の種類が多く、その利用条件もさまざまだ。
だが、国際線の運賃を大きく分けると、「普通運賃」と「特別運賃」の2種類に集約される。

まず、すべての運賃の基本となる「普通運賃」。利用する航空会社が自由に選べ、日付や便の変更、および一定の飛行マイル数の範囲で乗り換えやルート変更等も無料でできるなど、利用上の制約がほとんどない。

有効期間も旅行開始日から1年間と長く、出発時期による料金の変動もない(出発曜日等により若干異なる場合はある)。利便性はとても高いが、その分、料金も非常に高価だ。

たとえば、日本発ロンドン往復はエコノミークラスでも60万8700円、ビジネスクラスでは89万3200円、ファーストクラスになると162万7700円(2006年10月の平日利用の場合。それぞれ燃油特別付加運賃や航空保安料などは別途必要)。

一般人には高嶺の花といえる。ただし、その使いやすさから、臨機応変な行動が求められる業務渡航などでは、この運賃を利用するケースも珍しくはないようだ。

普通運賃の料金は、同じ区間ならどの航空会社を利用しても同じだが、これは世界の航空会社で構成されるIATA(国際航空運送協会)の会議で運賃の調整が行われ、そこで決まった運賃が世界標準となるからだ。最終的には、自国と相手国の当局(日本では国土交通大臣)が認可して決定する


各種の割引運賃が「特別運賃」
普通運賃以外の運賃をIATAでは「特別運賃」と呼ぶが、普通運賃が定価販売なら、特別運賃は割引販売といえる。特別運賃には多くの種類があるが、主に二つに分類できる。

ひとつは、個人旅行者向けの割引運賃であるPEX (ペックス)運賃(エコノミークラス正規割引運賃)。2つ目は、航空輸送と宿泊、現地の地上輸送や飲食などを組み合わせたパッケージツアー用として、旅行会社向けに設定されるIT運賃(包括旅行運賃)。いずれも普通運賃に比べ割安だが、利用にはさまざまな制約がある。

PEX運賃にもタイプがある。リーズナブルな料金設定で観光客にも人気なのが「ゾーンPEX」(以下PEX)。料金や名称は各社が独自に設定、日本航空の「JAL悟空」や全日空の「エコ割」をはじめ、アメリカン航空は「アメリカンドリーム」、カンタス航空は「スーパーカンガルー」など、ネーミングにもそれぞれ工夫を凝らす。

PEXは1992年、日本発ヨーロッパ路線に初めて導入された。背景には、格安航空券の拡大等で政府が認可する正規運賃と市場の実勢価格が大きく乖離、硬直化していた運賃制度を見直し、利用者の便宜を図りたいとする当時の運輸省の考えがあった。

以降、PEXの運賃制度は改善を重ね、98年からはIATAの定める上限運賃内で、各社が運賃を自由に設定できるようになり、現在のような割安感のある運賃が登場した。なかでも、一定期間内の予約および購入を条件とする前売りタイプ(早割)のPEXは、格安航空券とほぼ同水準、路線や時期などによってはより安い料金が出ることもある。

テレビや雑誌等で、各社が積極的にPRしているのもこのタイプが多い。購入期限は航空会社や方面によっても異なるが、たとえば全日空の北米行きの「エコ割28」は出発の28日前まで、「エコ割14」は出発の14日前までの予約&購入が条件だ。

購入期限をさらに細かく設定する航空会社もあり、一例としてスカンジナビア航空の成田/ コペンハーゲンでは、購入期限が出発の49日前、同42日前、同21日前、同14日前と前売りタイプだけでも4種類のPEXをそろえる(それぞれ06年下期の場合)。

これらの各種PEXの料金は、一般的に予約時期が早ければ早いほど割安だが、その分、有効期限や払い戻しなどの利用条件は厳しくなる。早割タイプに加えて、割高だが当日でも購入可能なスタンダードタイプのPEXもある。また最近は、一定の条件のもと、出発直前でも比較的割安に買えるタイプも登場するなど、多様化が進んでいる


割安な航空会社ウェブ限定運賃
最近増えているのは、各社のウェブサイト予約限定のPEX。通常のPEXは旅行会社からも購入でき、どこで買っても料金は同じだが、この限定タイプは航空会社のオンライン予約のみに適用され、購入期限は同じでも料金が割安になる。

たとえば全日空の「エコ割」にはそれぞれ同社ウェブ限定のタイプがあり、通常のタイプより平均3%割安だ。旅行会社経由で販売すると、旅行会社への販売手数料(コミッション)が必要だが、航空会社の直接販売ならその分のコストが削減できる。自社サイト限定の割安な運賃設定の大きな理由はそこにある。

ほかに特別運賃としてのPEXには、普通運賃に次いで使い勝手がよく、どの航空会社を利用しても料金が同じタイプ(IATA PEX、当日の購入可能)がある。またビジネスクラスにも、各社独自の正規割引運賃(日本航空の「JALビジネスセイバー」や全日空の「ビジ割」など)がある。

特別運賃には、ほかにも行き先や利用対象を限定したものがいくつかある。12歳以上26歳未満の青少年に適用される「ユース運賃」、1年間に一定回数往き来する旅行者に適用される「回数券運賃」(香港行きに設定、同一航空会社に限る)、夫婦同伴旅行を対象に、普通運賃をベースに割引を適用する「配偶者割引運賃」、ファーストクラスを利用する60歳以上の夫婦同伴旅行に適用される「ファーストクラス高齢者夫婦割引運賃」(ハワイ行きに設定)、中学・高校生の修学旅行用の「修学旅行運賃」(オーストラリア、ニュージーランド、韓国、中国などに設定)などはその一例だ。



2.格安航空券
米西海岸往復が2~3万円
PEXとともにIATAの特別運賃の中心となるのが「IT運賃」。ITは「inclusive tour」の略で、航空券とホテル、現地での観光などをセットしたツアー(包括旅行)用の運賃だ。日本人の多くがこの運賃を利用して海外ツアーに出かけている。だが、一部のIT運賃は、この原則を超え、単独の航空券としてバラ売りされている。それが格安航空券である。

料金の割安さが人気を呼び、1980年代半ばごろから市場に浸透。98年にはベースとなるIT運賃の下限が撤廃され、航空各社が一定の範囲内で運賃を自由に設定できるようになるとともに、各社独自の「キャリアIT運賃」の設定も可能となり、格安航空券市場の拡大と多様化をもたらした。

格安航空券にもさまざまな種類があるが、一般的な特徴としては、
①旅行会社が販売し航空会社からの直接購入はできない
②料金は旅行会社によって異なる
③予約&購入時点で「航空会社未定」の場合もある
④多くの場合で発券後は予約内容の変更が一切できない、などがあげられる。

料金が安いだけに制約は多い。だが、オフシーズンには一例として、成田/ロサンゼルスのエコノミークラス往復に2~3万円の航空券が出るなど、日本発の格安航空券はいまや世界で最も安い部類に入る。

最近は早割タイプ(出発間際ほど安くなる傾向にあった従来のパターンとは逆で、早期予約すると割安になるタイプ)の格安航空券も定着しつつある。ただ、日系航空会社では現在、格安航空券に替えて前売リタイプのPEX(正規割引運賃)を広く流通させており、料金もほぼ格安航空券並みにリーズナブルだ。

ビジネスクラスの格安航空券も普及してきた。ビジネスの格安航空券は、一般に出発時期による料金変動が少なく、なかには年末年始やゴールデンウィークなどの繁忙期も料金一律の場合があるなど、エコノミーのそれに比べ総じて使いやすい。


格安航空券と報奨金の関係
ところで、格安航空券が流通する理由のひとつは、飛行機の座席は生鮮食料品と同様、在庫をもつことができないから。空気を運ぶより、格安でも乗客を運んだほうが売上になるため、低需要期や低需要路線などには大幅な割引料金が出ることがある。

もうひとつの理由に、航空会社が旅行会社に支払う多額の報奨金(ボリューム・インセンテイブ、キックバック)の存在がある。旅行会社(主に航空券の卸売業者にあたるホールセラー)は上期(4~9月)・下期(10~翌年3月)のシーズンごとに、ツアー商品造成のため航空会社から大量の座席を仕入れる。

その座席の販売実績(目標達成率)に応じ、旅行会社は航空会社から報奨金を受け取る。仮に仕入れ価格を下回る格安料金で航空券を販売しても、この報奨金で補填できるわけだ。旅行者にとってうれしい格安運賃だが、チケット単価の安さが航空会社の収益を押しとどめる要因のひとつであることも事実だ。
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