目次

滑走路のなぞに迫る!形や本数と航空機発着回数の関係

1.滑走路の形や本数と発着回数の関係とは
日本国内では、滑走路は1本だけという空港が大半を占めている。そのような、滑走路を1本だけ配置するタイプを「単一滑走路」というが、当然ながら、離着陸できる回数は限られる。滑走路をフル回転させても、1時間当たりの離着陸回数は、せいぜい30回程度だ。

それに対して、大型空港では、2本以上の滑走路を備えている。たとえば、羽田空港では、現在4本の滑走路が稼働している。長さ3000メートルの平行滑走路(A滑走路、C滑走路)に加え、2500メートルの横風用滑走路(B滑走路)、2010年10月からはD滑走路(2500メートル、沖合に建設、A・C のメイン滑走路にたいして横向き)が運用されはじめた。

この4本の滑走路で、羽田は1時間当たり80回の離発着を目指している。
ただし、ほかの空港は大型とはいっても、滑走路の数は2本以下に止まっている。
成田が2本(3本目の工事が中断され、現在誘導路として利用中)、関空が2本(3本目を計画中)、中部国際空港(セントレア) は1本で、2本目の建設計画が事実上凍結されている。

では、滑走路が2本あれば、発着回数は1本の場合の倍になるのかというと、話はそう単純ではない。たとえば、滑走路を並行に配しても、その間隔が狭い夕イプは「クロースパラレル滑走路」と呼ばれ、それぞれの滑走路を独立させては運用できない。それでも、効率は多少よくなり、1時間に約40回ほど離着陸できる。北海道の新千歳空港がこのタイプだ。

いっぽう、成田や関空は、おなじ2本でも、滑走路同士の間隔が広い「オープンパラレル滑走路」。これだと、2本の滑走路を独立して利用できるので、離着陸の処理能力は単独滑走路の倍、1時間あたり約60回にまで伸びる。


2.「普通の道路」と比べて滑走路はどのくらい強いのか?
ジャンボ機の重量は、離陸するときで、積載燃料を合わせて、300トンから400トンにもなる。
着陸のときは燃料分が減って軽くはなるが、それでも300トン前後の機体が着陸するのだから、滑走路は約300トンの物体が空から降ってくる衝撃に耐える強度が必要になる。

映画では、セスナ機が高速道路へ着陸するシーンが登場することもあるが、セスナ機は機体が軽いので、現実に高速道路への着陸が可能である。いっぽう、ジャンボ機は、普通乗用車の200倍もの重量があるので、高速道路には降りられない。
路面がもたないのだ。

高速道路のアスファルトの厚さは、ほんの数センチほど。それにたいして、ジャンボ機が降りられるような滑走路は、アスファルト部分だけでも2、3メートルの厚さになる。
建設のさい、アスファルトを敷いてはローラーで固めるという作業がくり返され、ジャンボ機の着陸にも耐えられるような強度に固め上げられている。

専門的には、滑走路の強度は「AcN‐PcN法」という方法で表される。AcNは飛行機が滑走路面におよぼす影響を数値化したもので、機種ごとに決まっている。
いっぽう、PcNは、滑走路面の強度を数値で表したもの。PcN値がAcN値よりも大きければ、その飛行機はその空港(滑走路) に着陸可能というわけだ。


3.滑走路はお一人様専用
滑走路の横まで誘導された航空機の航空管制は、飛行場(ローカル管制官に引き継がれる。
国際民間航空機関(ICAO)で定められている、滑走路の利用についての管制ルールを一言でまとめてしまうと、「滑走路は、常に一つの航空機しか使っていない状態にしろ」となる。

到着機に滑走路使用を許可したら、着陸して誘導路に出て行くまで、出発機の場合には、離陸して滑走路上からいなくなるまで、他の離着陸機・横断機に滑走路を使わせてはいけない。もちろん、どうしたら安全を確保できるか、という観点から作られているルールなので、離陸滑走を開始した後ろに次の離陸機を進入させてスタンバイさせたり、離着陸機が走り抜けた後ろを横断させたりするような場合は、問題ない。

「滑走路は、常に1つの航空機しか使っていない状態にしろ」というルールは簡単に響くが、残念なことに航空管制に関するトラブルが最も起きやすいのが滑走路の運用である。滑走路周辺という、上空の空域に比較すると狭いエリアで、離陸。着陸・横断など、さまざまな種類の運航が複雑に入り混じって行われるため、管制指示の言い間違いや聞き間違いが、ただちにトラブルにつながりやすい。

どんなに注意してもミスをしない人間はいないので、日頭での管制指示の授受に加え、航空管制官やパイロットに視覚的に情報を提供するレーダーや照明がいろいろと整備されている。

地上の航空機を映す空港面探知レーダーというレーダーで管制官が航空機の位置を確認できるようにしているものや、ストップバーライトといって、停止線にライトを埋め込んで、管制官がパイロットに進入を許可するとともに赤いライトを緑のライトに変更することでパイロットに情報提供するものなどがある。最近、混雑する空港を中心に、マルチラテレーションという新しい技術の導入が進んでいる。

これは、空港内に航空機からの距離を測るアンテナを何十本も設置して、測量のように空港の中と周辺の低高度の航空機の位置を正確に把握するシステムである。このアンテナからの正確な位置情報をコンピュータシステムで処理して、新たな視覚的情報を提供するシステムの整備が進んでいる。

航空管制官に対しては、滑走路を使用している航空機があるときに、他の航空機が入ろうとするとレーダー画面上で警告を発する滑走路占有監視機能の整備が行われている。パイロットに対しても、到着する航空機があるときに横断の誘導路の停止線が自動的にすべて赤く点灯するなど、他の航空機が使用している滑走路に入らないための情報提供システムであるランウェイステータスライトの整備が進んでいる。

4.鳥は滑走路の天敵
2009年1月に、「ハドソン川の奇跡」と呼ばれる事案があった。ニューヨークを飛び立ったUSエアウェイズー549便が、離陸直後に鳥をエンジンに吸い込み両エンジンストップしたが、機長の機転とテクニックにより、ハドソン川に不時着して全員無事だったという事案である。

航空業界でも滅多に聞くことのない珍しい事案だが、実は、珍しいのはエンジンストップしてしまったというところから先だけであり、航空機はしょっちゅう鳥に当たっている。車で空港の中を回って、滑走路近くにいる鳥を空砲などで追い払うというバードパトロールが毎日行われている。だが、水辺にある空港で、特に雨が降った後などはどうしても鳥が集まってきてしまうため、すべて防ぐのは困難である。

このため、航空機は鳥に当たってしまうことを前提に作られており、エンジンの耐久テストでも、鳥を吸い込んでも故障しないか、というテストは入念に行われている。

エンジンに吸い込まれて犠牲になる鳥には気の毒だが、航空機の運航上はさらにさまざまな影響を受ける。バードストライクの通報があると、鳥の亡骸をそのままにして離着陸することはできず、ただちに滑走路を1時間鎖し、飛行場を管理している職員が車で回収しに行く。

所要時間は15分くらいだが、混雑している空港ではその時間がそのまま遅延の原因となる。他にも、エンジンオイルの漏れや、着陸の衝撃によるボルトの脱落といった理由でも滑走路はその度に閉鎖される。羽田空港でも平均して1日に1回くらい何らかの理由で滑走路が短時間閉鎖されている。

空港の運営に関することは、空港管理者が行っており、国が管理する空港では、航空管制運航情報官が担当している。航空管制運航情報官の業務は多岐にわたるため、一言で説明するのが難しいのだが、バードストライクヘの対応やスポットの運用という国が管理する空港の運営のスペシャリストとしての業務と、航空管制を行っていない交通量の少ない空港に離着陸する航空機や有視界飛行方式(VFR)で飛行する航空機への情報提供、航空路誌(AIP)を通した情報提供などが中心業務となっている。

ほかにも、航空機の運航には、航空管制官が使用するモニターの処理システムを構築する専門家や、滑走路の照明、土木工事など、さまざまな専門家がそれぞれの役割を果たしている。

さまざまな専門家がかかわって安全な施設が整備され、交通の安全を確保するための無線施設やコンピュータシステムにバックアップされ、最後はパイロットや航空管制官の職人的な技術により、航空機は今日も安全に飛行している。
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