目次

飛行機の機体整備は飛行時間ごとにチェックする内容が違う

1.機体とエンジンの整備
旅客機の安全な運航を技術的に支えているのが整備(メインテナンス)だ。その中心となる機体とエンジンの整備について、概略を紹介しよう。

機体整備(シップ・メインテナンス)は、最も頻度の多い日常的なものから、最も複雑で作業量も多いものまで段階的に分けられている。まず運航整備がある。

これはT・A・Bの3段階に分けられている。T整備(Tチェックまたはプリフライト・チェック)は機体の出発・到着の際に、主に外観から機体の状態をチェックするもの。A整備(Aチェック)は飛行時間250時間ごとに、T整備を含めて行われる。エンジン・オイル、作動油の補充、動翼、タイヤ、ブレーキ、エンジンの点検を、運航の合間を利用して実施するものだ。

T、Aチェックを繰り返し、飛行時間が1000時間になるとB整備(Bチェック)が行なわれる。特にエンジン関係の点検が中心だ。これらの運航整備は格納庫の外で実施される。

飛行時間が3000時間になると4、5日運航を休んで定時点検に入る。これをC整備(Cチェック)という。機体を格納庫の中に入れ、T・A・Bに加えて各システムの点検を中心に、機体構造の外部からの検査や、一定時間がくると交換する必要のある部品類の交換、さらには比較的に簡単な改修作業も行う。

次の段階がオーバーホールとも呼ばれるD整備(Dチェック)だ。2~3週間機体をドックに入れて実施する重整備。機体構造の内部検査が本来の目的だ。ただし現在ではこの機体構造の検査を、大部分定時点検の時に分散して行い、手間のかかる改修や整備は新しく設けられたH整備(Hチェック、Hはホスピタリゼーションの略)で実施されるようになっている。

これは信頼性の向上に伴って、チェックの間隔が延長されて、3~4年に1度くらいになった結果、品質向上のための機会としては不適当なものになったためである。Dの内容をCに分散してDを廃止し、代わりに不定期に(3、4年に1回程度)機体を1~2週間休ませて、積極的に機体の改修や外部の再塗装を行なう方式がHチェックである。大型機にはこの整備方式が採用されている。

次にエンジンの整備だが、これには点検、修理、改修がある。エンジンの整備は年代別に3つの方式に分かれている。まずエンジン・オーバーホールだが、これは一定の使用限界時間内に機体からエンジンを取りおろし、総分解整備する方式。ピストン・エンジンで採用されている方式だ。

在来型のジェット・エンジンで採用されているのが、信頼性管理に基づくEHM方式だ。EHMとはエンジン・ヘビー・メインテナンスの略で、エンジン重整備と呼ばれている。限界時間内にエンジンを取りおろして行なう分解整備だが、エンジンの構成部品ごとに分解整備の時間と内容が設定されている方式のため、総分解整備作業は実施されない。

重要な構成部品については、サンプリング検査を並行して実施する。最近の大型機に搭載されている高バイパス比の大推力ジェット・エンジンでは、オン・コンディション整備という方式が行われている。状態によって必要な整備を行うという意味だ。使用限界時間を設定せずに、エンジンを機体に搭載したままで外部から内部を検査して、その結果を見て必要ならば取りおろして整備を実施する方式だ。

外部からエンジン内部を検査するのには、ポァスコープという光学器具やテレビ・スコープ、またエックス線、ラジオ・アイソトープ(放射性同位元素)による検査装置などが使用されている。またエンジン・オイルを分析することによって、エンジン内部の状況を判定する手法も取られている。

これらの整備を担当するのが整備士だ。整備士には整備員、検査員などがあるが、航空法で「有資格整備者」という国家資格が定められており、これらの有資格者が整備作業の確認を行なわなければならないとされている。有資格整備者には、航空整備士、(工場)検査主任者などの資格がある。有資格者にしか整備をまかせないこの厳しい制度は、整備員個々の知識や経験、技能の差から生じる整備に伴う機材の品質のバラツキを防止するためのものだ。


2.機長より偉い1等航空整備士
「ライン整備の作業を終えると、自分が担当した部分になにも問題がないか、そのつど先輩に確認してもらっています」と話すのは、成田空港で働く若手整備士です。「そうやって先輩からの完壁なチェックが入るので絶対に大丈夫なのですが、整備士になりたてのころは、出発していく機を見送りながらいつも不安でいっぱいでしたね」

それが最近は、大切な家族にこそ自分が整備した飛行機に乗ってほしいと思えるようになったという。現在は「1等航空整備士」の資格取得に挑戦中です。

整備責任者の承認なしに出発できない
日常の運航の合間に機体に異常がないかをチェックするライン整備。航空機が到着すると、担当整備士はただちにタイヤやボディ、エンジンなどの外部点検を開始し、さらにパイロットからフライト中に気づいたことの報告を受けてコクピット内の計器類・スイッチ類などもチェックします。

機体やコクピットだけではありません。客室内のシートやエンターテインメントシステム、ギャレーなどについても、キャビンアテンダントから不具合の有無を聞き、対処することもライン整備の仕事の一つです。
ちなみに次のフライトに向けての燃料補給は、こうした作業と並行して行われます。

ひと通りの作業が終わると、大型機の場合は1等航空整備士の資格をもつ整備責任者に報告。整備責任者のチェックを受けてOKが出れば、その機体は次のフライトの担当パイロットに引き渡されます。

では、整備責任者からOKサインが出ない場合は、どうなるのでしょうか。安全の確認がとれてOKにならないかぎり、その機体をふたたび飛ばすことはできません。たとえ機長が「大丈夫、この程度なら問題ない」と言ったとしても、です。1等航空整備士はその意味で、機長も頭の上がらない存在といえるのです。

3.「1ケタ」の超難関資格
それほど責任の重い資格であるだけに、1等航空整備士を取るための国家試験は超難関です。エアラインに整備士として入社しても、すぐに試験は受けられません。現場で4年ほど整備の実務経験を積んでから資格取得にチャレンジすることになります。

試験科目は、筆記試験と実技試験の2つ。筆記試験では、航空力学の理論からエンジンのメカニズム、電気部品、航空法規など航空機に関する幅広い知識が問われます。これに合格すると、次のステップが航空機を使った口頭と実地による試験。

整備の基礎にはじまり、点検・検査に関する知識実際の作業や機器の扱い方法など実技試験の問題は多岐にわたり、確かな知識と経験がないと合格できません。年度によっては合格率が「1ケタ」という年もめずらしくないようです。

1等航空整備士の資格は機種ごとの「型式限定」であることも特徴です。ボーイング747の試験に合格した人なら、ライン整備の最終チェックができるのはその1機種のみ。別の新しい機種を担当する場合には、その機種についてあらためて資格試験を受けなければなりません。
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