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航空会社のサービスは空港にまで及び格差がとどまることを知らない

公共サービスの一翼を担うとともに高い独自性をもつ航空産業
1.膨大な設備投資が必要な装置産業
年間19億6300万人、1日平均では538万人の乗客(定期便)を運ぶ世界の航空産業。人とモノが地球規模で日々行き交う現代にあって、他の輸送手段とは比較にならない高速移動を実現する航空は、世界の基幹産業のひとつとして社会生活においてきわめて重要な役割を担う。

では、航空輸送とはどんなビジネスなのか。航空業界のいまを展望するにあたり、まず業界の特徴を見てみよう。

そのひとつは、膨大な設備投資を基盤に成立する「装置産業(資本集約産業)」であること。機材のリース費や整備費など航空機を保有することで生じるコスト、および人件費など、固定費の割合が高い産業なのだ。

こうした固定費の高さ、および以下に述べる業界の熾烈な競争のために、最近の業界は薄利構造が定着している。1993年から10年間、日本の全産業の経常利益率は平均2%強から4%強の間を推移した。これに対して、航空大手3社(当時のJASを含む)は2000年に4%弱の経常利益を計上した以外、すべてマイナス2%から2%の間で利益率が低迷。03年はマイナス2.2%と、産業界平均の4.3%を大幅に下回っている。

「世界情勢や景気の影響を受けやすい」ことも利益率が伸びない要因のひとつ。景気動向や世界情勢、流行病、天災などが、各社の業績にそのつど大きな影響をおよぼす。また、急な需要変動が起きても、便数の増減などの生産調整を行いづらい環境にある。

「独自性が発揮しにくい」ことも特徴だ。たとえば航空機。メーカーが限られるため、各社はシートや機内の設備、人的なサービスなどで独自性を発揮している。空港施設でも同じことがいえる。


2.需要はハイペースで伸び続ける
世界的にみて「規制緩和への動きが劇的に進んだ」ことも特徴のひとつ。日本を含め、かつて世界の大手航空会社は、各国の権益を代表する存在として、政府の保護のもとで育成されてきた。そこでは路線の参入、便数、運賃などに強い規制が存在した。

だが、米国市場を皮切りに、ここ30年ほどの間にこれら規制が次々に緩和、撤廃され、自由競争の時代へ突入。その潮流のなかで、安さを最大の武器とする新しいビジネスモデルが急成長、とりわけ欧米では業界を席巻するほどの勢いをみせている。

世界の各地域で企業の淘汰と大再編が起こり、現在もその流れは止まらない。ただ、そこに大きなビジネスチャンスが待ち構えていることも事実である。

また、たとえ自由化が進んでも、「公共サービスを担う社会性の高い産業」であることには変わりない。収益性を求める私企業としての課題、同時に社会のインフラを背負う公企業としての使命。その狭間で、経営のバランス感覚が求められる。

一見華やかに見え、就職人気も高い業界だが、その独自性ゆえに、さまざまなハードルが立ちふさがり、各社の勝ち残り競争も激しい。しかしながら、世界的な観光需要の拡大基調や、経済のさらなるグローバル化、ボーダーレス化が予測されるなか、航空産業の果たすべき役割と重要性は増す一方だ。

インターネットやテレビ会議など、オンラインでのコミュニケーションが急速に進んだ現在も、航空需要はいぜんとして高いペースで伸び続けており、今後もおしなべて高成長が見込まれる。またマンパワーに関しては、運航乗務員、客室乗務員、整備士、運航管理者など特殊技能が必須となる職種が多く、プロフェッショナルたちがもてる能力を存分に発揮できる舞台が待っている。「安全性」を最重要テーマとして、各社は現在進行形の航空ビッグバンにどう立ち向かい、勝ち残りを目指すのか。


3.ビジネスから癒しまで顧客ニーズに対応する地上サービス
新空港開港を機に新ラウンジが登場
国際線では通常、複数のサービスクラスが設定され、それぞれの運賃に見合ったサービスが機内で展開される。だが、各クラスのサービス格差は機内だけにとどまらない。極端にいうと、上級クラスでは自宅出発から現地のホテル到着まで、旅程全体を通して手厚いサービスが用意される。

なかでも最近、各社が力を注いでいるのは空港のエアラインラウンジだ。ラウンジは通常、ファーストとビジネスクラスの搭乗者、およびマイレージの一部の上級会員のためのサービスである。かつてはソファを並べただけのちょっと上品な待合室、といった造りが多かったが、最近はそれが大型化し、提供されるサービスも多様なものとなってきた。

従来のイメージを大きく変えた次世代ラウンジとして話題を呼んだのが、キャセイパシフィック航空が1997年、新しい香港国際空港にオープンした「ザ・ウイング」だ。吹き抜けの広々とした空間に、大型のバスタブやデッキチェアなどを配した個室スパ、本格的な料理がビュッフェスタイルで楽しめるレストラン(以上はファーストクラス専用)、英国の伝統ある書斎を思わせるリーディングルーム、さらにパーソナルなワーキングエリアなどを完備。

香港の最高級ホテル、ペニンシュラグループの関連会社が運営を手がける。アジアではほかにも、ソウル・仁川(インチョン)国際空港、クアラルンプール国際空港など、世界有数の規模を誇る大空港が90年代後半から次々と誕生し、最新設備をもつ新ラウンジが続々と登場した。アジアの既存空港や欧米の主要空港でもターミナルの新設や改修が相次ぎ、最新設備を備えた快適な新ラウンジが誕生している


上級クラスとエコノミーの差が顕著に
こうしたサービスの高級化の一例が、ルフトハンザドイツ航空が05年春から始めた「プライベートジェット」である。欧米のVIPの間では自家用機の利用が普及しているが、ルフトハンザのこのサービスは定期便と同じように電話で予約し、欧州内の約1000の空港から空港へ、好きなときに好きなスケジュールで飛べる業界初のサービス。 

一部の空港では搭乗機まで高級リムジンで送迎され、機内ではファーストクラスと同等のサービスが受けられる。他方、一部の短距離路線ではあるが、エコノミークラスのみのモノクラス設定で、機内食のサービスもないフライトがある。

長距離路線でもここ数年で一部の航空会社が、長年続けていたエコノミークラスのアルコールの無料サービスを廃止、有料化している。北米内やヨーロッパ内においては、エコノミークラスで軽食や飲み物を有料販売するケースが、大手の間でもすでに一般化しつつある。

燃油価格の高止まりなどが航空会社の経営を圧迫するなか、利益率の高いビジネス客の集客を目指して、今後も上級クラスのサービス改善は加速、一部の路線では満席でも利益が出にくいとされるエコノミーとのサービス格差がさらに開きそうだ。

ただ、06年秋、一部の航空会社が長距離便のエコノミークラスのシート改善を発表するなど、航空会社間でも温度差の出てきたことは注目される。


4.WEBチェックインで座席指定を最大限活用したい
日本航空。全国空および日本就航の一部の航空会社では、出発前にインターネットや携帯電話を利用したWEBチェックインサービスを実施している。概ね出発日の2~ 3日前からチェックインが可能で、チェックインをしておけば後は空港でボーディングパスを受け取るだけという便利なものだ。WEBチェックイン時にシートマップを表示させ、自分の好きな席を選べるのも魅力のひとつ。事前座席指定では指定不可能だった座席が開放されており、自分の好みの座席位置を選択することができる。

マイルボーナスが貰えることもあって、WEBチェックインをする機会は多くなり、座席指定などの利便性を体感することになったが、WEBチェックイン後に旅程が変更となることもあった。日本の航空会社の場合は電話予約センターに連絡して簡単にキャンセルできたが、WEBに関する取り扱いを海外の拠点で行っている外資系航空会社の場合は、国際電話で英語対応となることがあった。

また、WEBチェックインの方法は簡単だが、キャンセルの場合の対応については別記されていることも多いので、まずはキャンセル時の対応についてのチェックが必要だ。どこへ連絡すればいいのか、日本語で対応できるのか、万が一キャンセル連絡ができなかった場合に変更可能な航空券はどうなるのか、といったことを調べておくのがよい。

便利で簡単なサービスだけに、WEBでもチェックインが取り消せる機能(一部の航空会社では可能)が付いていると利用価値がぐんと上がるのだが。もちろん当日になって搭乗をキャンセルする人が多くなれば、航空会社側にとっては事前に利用客の正確な人数を把握できるという利便性が損なわれるので、確実に乗るという場合にするのがよいだろう。

以前、Yクラスの予約で2日前にWEBチェックインをした際、青色のビジネスクラスの航空券が表示されたのには驚いた。Yクラスのオーバーブッキングが確定しているため、FFPの上級会員に対して事前にCクラス席を用意したというものだ。それ以来、WEBチェックインの楽しみがひとつ増えてしまった。次回の搭乗でも「青色航空券」が表示されないかと、クリックする時にドキドキの瞬間を体感している。

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