目次

飛行機のスピード向上は戦争が深く関わっている背景にせまる

1.第二次世界大戦中に200km/hのアップ
第一次世界大戦中に戦闘機が初めて戦場に姿を現した時、機体に求められていた速度性能は必ずしも高くはなかった。初期の航空機は、その種類を問わず最高速度及び巡航速度に大差がなかったことがその理由だ。しかし1920年代から1930年代にかけて、機体とエンジンの双方に対して様々な技術革新が行われ、導入されると、戦闘機のパフォーマンスにおける、スピードヘ対する要求は次第に増していくこととなった。

その背景にあったのは、戦闘機にとって重要な攻撃対象物だった爆撃機や偵察機の高速化に他ならない。戦闘機が運動性能という、航空機の設計においてはスピードと相反する要求に答えなければいけなかったのに対し、これらはスピードのみを追求することが許されていた。そこで戦闘機の一部に運動性能よりも高速性能を重視した機体が登場する。

それが1930年代の終わりのことである。技術的には鋼管フレーム羽布張り複葉から、全金属製モコノック単葉へとスイッチし始めた時代のことだった。ここに来て戦闘機同士の格闘戦を重視した軽戦闘機と、爆撃機や偵察機の迎撃に特化した重戦闘機という2種類のカテゴリーが発生したというわけである。

1940年代初めは軽戦闘機と重戦闘機が共に実戦の場に送り込まれた。しかし第二次世界大戦/太平洋戦争という、それまでなかった熾烈な戦いの場は戦闘機に非常に過酷な任務を強いることとなった。その結果、戦闘機は1940年代半ば以降、多用途性に優れた重戦闘機がその大勢を占めることとなった。第二次世界大戦初頭と末期とでは、主力戦闘機の最高速度差はおよそ200km/hにも達していた。

もちろん実際に戦闘機動を行う際のスピードは最高速度よりは邊かに遅かったものの、それでも高速の機体のパイロットはその優れたスピードを最大限に活かした新しい戦闘機動を考案し、実戦で活用していたということである。

ちなみに航空機のスピードを向上させるためには、機体に対する抗力(いわゆる空気抵抗)を低減する必要があった。だが、抗力が少ないということは、運動性能以外にも、離着陸性能や動翼の効果といった、操縦性能に関係する各項目に、大きな影響を及ぼす。
そのため設計者たちは、揚力、推力、抗力をバランス良くまとめ、可能な限りのスピード向上を目指したということである。

なお第二次世界大戦末期頃の高速機の多くは、「層流翼」という新しい翼断面形状の主翼を採用する例が多かった。この翼形こそ有害抵抗の一つだった主翼表面の乱流を抑える効果があり、機体の運動性能を損なうことなく高速性能を実現できるという、まさに画期的な発明だった。単にエンジン馬力が大きかったから高速だったというわけではないのだ。


2.限界が見えてきた戦闘機の速度の追求
戦闘機という飛行機の機種にとって、速度性能の追求は、その誕生からして重要な項目のひとつであった。相手よりも優速であることは、そのまま空戦時に有利なポジションを得られる可能性が高くなるからだ。

そのため、飛行機のジェット化は戦闘機が一番早かった。そして1947年にアメリカのX_1実験機(これはロケット推進機だった)がはじめて音速を突破。音速域での機体形状の設計手法の発明であるエリアルールの発見や、ミサイル(自ら目標に向かうロケット弾など)の開発成功など、いくつかの技術革新によって、戦闘機の速度の要求はますます増大していく。

1953年にはアメリカ空軍に史上初の超音速戦闘機であるF-100が登場し、5年後の1958年にはマッハ2を超えた速度を持つ、F_104スターファイターが配備されている。この頃は、航空機の高速性を追求した時代と言え、後にマッハ6.7を記録する実験機X-15の初飛行は1960年であり、マッハ3を超える超高速偵察機、SR-71が配備されたのも60年代のことである。

F-104はミサイルの使用を前提にしている。高速性能の追求は、ミサイルの登場と無関係ではない。その後もマッハ2級の戦闘機が続々と開発されるが、それらの機体もまた、 ミサイル装備と高速性能を中心に考えられていて、戦闘爆撃機的な性格の機体が多く、機関砲を廃するなど全体的に運動性を軽視していた。

しかし、この頃の対空ミサイルの性能はそれほど高くなく、ベトナム戦争において、アメリカ製の機体は、速度が出ても運動性が悪く、ソ連製のMiG‐ 17などの軽快な旧式機に劣る場面も多かった。こうした経緯から、戦闘機の開発は格闘性能を重視する方ヘシフトしていった。90年代頃まで世界最強の戦闘機と言われたアメリカのF-15イーグルは、そうした時代の要請により登場した機体である。

飛行機の高速性能は、機体重量をエンジン推力で割った推力重量比と、翼面荷重によっておおむね分かる。つまり、エンジン・パワーが大きくて、翼の小さい機体ほど、高速性が向上するのだ。逆に言えば、高速性を追求すると機体の運動性は自ずと制限を受けるということだ。

そしてベトナム戦争や、フォークランド紛争の戦訓から、戦闘機の戦いにおいて超音速域になることはほとんどないことが分かってきた。超音速飛行は、ほとんど直線で進むことしかできず、ろくな機動戦闘ができなくなるからだ。かくして戦闘機は、速度追求はほどほどにしつつ、運動性を向上させる方向に進化していく。

そして近年、ステルス技術や機体制御技術などの進歩により、再び超音速域での効果が認められるようになり、長時間持続できる超音速航行である「スーパークルーズ性能」(その多くはアフターバーナーを使用しない)が、最新鋭戦闘機の条件となっている。
この記事を見た人は、一緒にこんな記事も読んでいます!


ページのトップへ戻る