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日本は空港へのアクセス方法で鉄道が最も進んでいる国のひとつ

1.鉄道でアクセスできる空港
日本は空港へのアクセス方法で鉄道が最も進んでいる
空港用の敷地を確保するのは難しく、空港は市街地から遠くなる傾向にあるが、その距離を縮めることができるのは、時間が正確で速い鉄道アクセスだ。

日本で鉄道など時間に正確な交通機関が乗り入れる空港は、2007年に鉄道が乗り入れるようになった仙台空港を含めて、北から新千歳、仙台、成田、羽田、中部、伊丹、関西、神戸、福岡、宮崎、那覇の11空港となる。これは世界的に見ると空港アクセス交通が整っている国といえる

かつて、当時の国鉄には「飛行機は鉄道の敵」という考えがあったため、空港のそばを線路が走っていても、空港にそっぽを向くように空港アクセスには無関心であった。あるいは「飛行機の補完役を鉄道が行うなどもってのほか」と考えていたかもしれない。それが変わったのは1980年の千歳空港駅開業からで(現在の南千歳駅)、対抗から連携へと変化が現れた。

現在は成田、羽田、関西へはそれぞれ複数の鉄道会社が乗り入れ、成田や関西では双方の鉄道会社が競ってアクセス専用列車を運行しているが、海外ではこういった例がなく、日本は空港アクセス鉄道が最も進んでいる国ともいえる。

パリのシャルルドゴールやフランクフルトの空港でも複数の駅があるが、市内への列車と長距離列車が発着する2駅なので競合はしていない。ロンドンのヒースロー空港でも地下鉄と「ヒースロー・エクスプレス」が乗り入れるが、地下鉄は普通の地下鉄、「ヒースロー・エクスプレス」は空港と市内中心を直結する空港アクセス専用列車だ。

日本各地の空港アクセス列車の詳細は下の表にまとめてみたが、このほかにも鉄道が空港への交通手段として機能している例はある。まず以前から鉄道が空港のそばを走っていて、車窓からも空港が見える路線として、米子空港のそばを走るJR西日本境線があったが、2008年6月に米子空港駅が開業している。これは滑走路延長に伴って線路が迂回するのと同時に大篠津駅を移転して「米子空港」駅に改称したもので、空港から徒歩5分の距離となり、連絡通路も新設される。

また「空港駅」はないが鉄道でアクセスできる意外な空港が山口宇部空港で、JR西日本宇部線の草江駅から徒歩10分ほどだ。これはたまたま空港が近いだけではなく、空港のホームページにもアクセス交通機関として紹介されているが、駅名は空港とはかかわりがないという例だ。

こんな例もある。JR北海道ではDMVという、バスのスタイルをしているものの道路と線路双方を走れる乗り物を試運転中だが、もともとは線路を敷くなどの大規模な工事を伴わないで石北本線から女満別空港に乗り入れるという計画があった。石北本線は女満別空港のそばを走っているのだ。このほかにも空港のすぐそばを鉄道が走っているという例はある。

JR東日本奥羽本線は山形空港、JR西日本山陰本線は出雲空港のそれぞれそばを通っている。しかしローカル空港ゆえに便数が少なく、鉄道も空港アクセスに無関心といったところだ。いっぽうJR東日本東北本線には、ずばり花巻空港という駅がある。空港ターミナルビルと連絡通路か何かでつながっていそうだが、実際には駅からバスに乗らねばならない。それも頻繁にシャトルバスがあるわけではなく、一日数本しかない。


2.日本の鉄道でアクセスできる主要空港一覧
新千歳空港 JR北海道 駅は空港直下。快速「エアポート」が札幌・小樽へ、また一部は札幌から特急列車となり岩見沢、滝川、深川、旭川などへ直通する。
仙台空港 仙台空港鉄道 2007年開業。全列車がJR東日本東北本線に乗り入れて仙台へ直通する。車両も仙台空港鉄道とJR東日本で同型車を導入、相互に乗り入れする。
成田空港 JR東日本 JRが特急「成田エクスプレス」と快速「エアポート」、京成は上野から特急「スカイライナー」と特急を運行、JRは横浜、新宿などに直通~できるのが強み。京成は料金が安く庶民的なサービス。
羽田空港 京浜急行電鉄 京浜急行電鉄は品川、横浜などから運行、モノレールはJR系列なので、JRと私鉄が対抗している。京浜急行電鉄はひとつの駅で出口によって各ターミナルへ、モノレールには羽田空港第1ビルと羽田空港第2ビルの2つの駅が.ある。
中部空港 名古屋鉄道 全車指定席の特急、一部指定席の特急、そしてそれ以外の列車を運行、全車指定席の特急の始発は名鉄岐阜や新鵜沼で、岐阜県から直通運転している。
伊丹空港 大阪高速鉄道 空港に直接乗り入れているものの、大阪市中心街方向に向かっていないので、空港アクセス交通の主役はバスである。
関西空港 JR両日本 JRは特急「はるか」を京都から、「関空快速」を大阪や天王寺から運転。南海は特急「ラピート」や急行を大阪の南の中心難波から運転する。しかし空港島への鉄橋は両者が同じ線路を共用する。
神戸空港 神戸新都市交通 ポートライナーは1981年に開かれた神戸ポートアイランド博覧会(ポートピア81)の観客輸送目的に建設され、以降はポートアイランドへの足になっていたが、それが神戸空港まで延長された。
福岡空港 福岡市交通局 福岡空港が日本で最も便利な空港などといわれるのは、近さに加えアクセスのよさがある。博多駅から地下鉄で2つ目、天神からは5つ目が空港である。ただし国際線ターミナルには駅がない。
宮崎空港 JR九州 日南線が空港のそばを走っていたので、線路を空港横まで延長した。日豊本線の特急列車が宮崎空港を始発にし、宮崎空港~宮崎間は全列車が乗車券だけで利用できるが、本数ではバスのほうが便利である
那覇空港 那覇都市モノレール 那覇の市街地を横断するモノレールが那覇空港を始発にする。離島が多く、県内の移動でも空を飛ぶことが多い沖縄の県庁所在地としては、モノレールが空港始発なのは当然であろう。

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