目次

飛行機の危険度は気象の影響が大きいので対策も徹底している

1.飛行機を危険な着氷から守る機体の防除氷システムとは
航空機着氷
飛行機が凍りついて墜落する。 航空機が寒冷地や雲の中を飛び始めた時代、多くの事故が起こり、着氷は「航空最大の敵」と怖れられた

ヒコーキの主翼はその表面に沿って空気が流れることによって揚力を生じる。ところが、翼に着氷が生じると、この空気の流れに乱れが生じ、通常より速い速度で失速してしまう。速度を測るピトー管に着氷が起こると、速度計が使えなくなるだけでなく操縦系統などにも不具合が生じ、大変危険である。

過冷却水滴と飛行中の着氷水は0℃ で凍るが、空気中の雲粒は氷点下になっても、凍りつく対象(氷晶核)がないとなかなか凍らず-20℃くらいまで液体のままで存在している。これを「過冷却水滴」と呼んでいる。この過冷却水滴でできている雲に飛行機が入ると、一瞬で凍りついてしまうのである。この過冷却水滴がぶつかるところ、特に翼の前縁やピトー管など尖った部分に着氷しやすい。

過冷却水滴は積乱雲に代表される対流雲(上昇気流の強い雲)で生じやすく、密度も高い。
ジェント機は30,000~ 41,000フィート(9,100~12,500m)の高度をマッハ07.5~ 0.86で巡航する。音速に近づくと空気の圧縮性効果が現れて、この速度では空気は25℃ ~35℃ 昇温する。

上昇・降下中であっても15℃ 以上は上昇するので、過冷却水滴が多く着氷の起き易い-10℃ 付近のエリアを飛んだとしても翼前縁の温度は+5℃ 以上となり、着氷は起こらない。巡航高度での外気温度は-30℃ ~-60℃となるが、ここではほぼ全てが氷晶となるため過冷却水滴が存在せず、着氷の心配はない。

着氷が特に怖いのは速度を落とし、かつ失速速度まで余裕のない10,000フィート(3,000m)以下の空域と、速度の遅いターボプロップ機だ。頼りの機上レーダーも低高度では地形性のエコーが強く映るため、判別が困難だ。


2.機体の防除氷システム
機体表面で飛行中に着氷しやすい部分には、防氷・除氷のための装置が設けられている。エンジン・カウル(空気取り入れ口)と翼の前縁はエンジンからの抽気(ブリード・エア)で暖め、ウィンドシールドやピトー管などは電気で暖める。B787は、全て電気だ。ターボプロップ機では、翼の前縁に貼り付けられたコムが数本の筒状に膨らむようになっていて、水を強制的に剥がすシステムになっている


飛行前の積雪と防除氷
離陸時には特に大きな揚力が必要で翼の上面の雪や氷は大敵なのだが、駐機中に降り積もった雪はとても厄介だ。機体の防氷装置は翼の前縁にしか装備されていないため、地上では外部から除雪・除氷を行なう必要がある。

まず、雪や氷は、高圧空気で吹き飛ばしたり、加熱したTYPE-1という粘度の低い薬剤を吹きかけて溶かして落とす。その上にTYPE-Vという粘度の高い防氷液を吹き付けて皮膜を形成する。雪や氷は直接金属の翼表面に触れずに、融かして水として流すのだ。

ただ、防氷作業には1回で数万円から数十万円のコストがかかるうえ、防氷液にはホールド・オーバー・タイムという有効時間が設定されているので、滑走路の除雪状況や雪の降り具合、出発機の混み具合を勘案して、タイミング良く作業を行なうことが重要だ。

過冷却の雨
稀な現象ではあるが、地上でも過冷却の雨・霧雨が降ったり、過冷却の霧が発生したりすることがある。
地上気温が氷点下でかつ上空に暖かく湿った空気が流入して雨が降ると、雨は凍りきれずに過冷却のまま、氷点下の地物や機体に激しく着氷する。METARではFZRA(着氷性の雨)、FZDZ(着氷性の霧雨)と表記され、この中の飛行は防除氷システムの能力を超えることがあり大変に危険だ。

3.火山灰と気象
火山の爆発は大きな運航阻害要素である。国内だけでも活火山(現在も噴気活動が活発、又は過去およそ1万年以内に噴火した火山)が110もあり、世界の火山の約1割を占めている。千島列島・カムチャッカ半島・アリューシャン列島・アラスカ、フィリピン・インドネシアなど日本周辺の主要な航空路にも多くの火山がある。

高高度で火山灰がジェットエンジンに吸い込まれると、含まれるガラス質が燃焼室の高温で一旦溶け出し、タービンなどに固着しエンジンにダメージを与え、最終的にはフレームアウト(燃焼停止)に至る。1982年と1989年にはB747が飛行中、4基のエンジン全てが停止する事故も起きている。そのため、火山灰の存在するエリアは避けて飛行しなければならない。

2010年にアイスランドのエンヤフィヤトラヨークトル火山が噴火した時にはヨーロッパのほぼ全域で飛行が禁止された。
全世界を下図のように9つのVAAC(航空路火山灰情報センター)で監視しており、日本の気象庁はカムチャッカ半島からフィリピン北部までの広い範囲を受け持っている。

気象衛星等を使って噴火や噴煙が観測されると、火山灰に関する実況の情報が発出される。また、火山灰は上空の風に乗って拡散するので、数値予報資料(風)を利用して噴煙の拡散予想図が提供される。
さいごに1年間にわたって、実際の運航に気象がどう関わっているかを説明してきましたが、航空気象について興味を持っていただけたでしょうか。

上空の風や雲、気流は刻一刻と変化しており、同じ路線を飛んでも毎日のフライトは新しい天候との出会いであり、新たな挑戦です。航空機の運航も、航空気象も大きく進化を遂げています。
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