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飛行機のエンジンは双発機と4発機を比較してどちらが良いの?

1.双発機と4発機ではどちらがすごい?
双発機と4発機を比較してどちらが良いエアライン業界では近年、左右の主翼に1基ずつのエンジンを搭載した双発機が主流になっています。左右の主翼に2基ずつ計4基のエンジンを装備した4発機も大型機では見られますが、燃料費の高騰が続くなか、エンジンの数が多ければそれだけ燃費や整備コストがかさんでしまう。そんな理由から双発機を主力に据えるエアラインが増えました。

ですが、4発機はもう時代遅れなのかというと、そうではありません。「操縦していても、4発機のほうがやっぱり安心ですよね」と話すパイロットは少なくないのです。

4発機としては現在、ジャンボ機の愛称で親しまれているボーイング747と、エアバスの長距離路線用機材であるA340、そして2008年5月から日本にも就航したエアバスのオール2階建て機A380の3機種が活躍を続けています。

新しい機種の開発に際して搭載するエンジンを何基にするかはその機体の大きさで決まってきます。機体の重量に対して必要な総推力を、いくつのエンジンでまかなうことができるか。その推力が得られるのであれば、エンジンの数を少なくしたほうが、燃料費や整備コストの面で経済的になります。

エンジンにもハイテクが導入されて進化した結果、従来は3基か4基が必要だった大型機でも、2基で必要な推力が得られるようになりました。その結果、ボーイング777のような大型で航続性能にも優れた双発機も登場し、エアライン各社は長距離路線の中心機材として、日本と欧米などを結ぶ路線に積極的に777を投入しています。777のボディを拡張したタイプである777-300は、初代のジャンボ機とほぼ同等の収容力を実現し、2基のエンジンで一度に500人近い乗客を長時間運べるようになりました。

では、双発機が主流の時代に、なぜパイロットの中には「4発機のほうが安心」と言う人がいるのでしょうか。
もっとも大きな理由は、エンジンが2基の双発機には、飛行する際にいくつかの制約があるからです。


2.夜間の洋上飛行が禁止されている
双発機に課せられた制約の代表的な一つが、長時間の洋上飛行が禁止され「常に60分以内の場所に代替着陸場のある経路を飛行しなければならない」という規定です。

もっとも、この規定はまだエンジンの信頼性が低かった時代に制定されたもので、現在は信頼性が実証されれば「60分」という時間を最大「207分」に延長することが認められています。これは双発機の拡張運航(ETOPS)という制度で、このETOPSルールによって双発機でも長距離の洋上飛行が可能となり、大西洋や太平洋を横断する路線にも投入されるようになりました。

しかしETOPSが認められたとはいっても、双発機にはやはり洋上飛行の時間的な制限があり、かならずしも万能というわけではありません。パイロットの中には、現在も4発機に安心感を抱く人が意外に多いのです。


3.レシンプルな空冷、そして信頼性重視の液冷
航空機エンジンには、大きく分けて空冷と液冷(水冷)がある。シリンダー配置は空冷はその大部分が星型、液冷は列型やV型、H型などが多く採用されていた。中には空冷の列型や液冷の星型なども存在はしていたが、いずれも少数派だった。

「空冷と液冷、そのどちらが優れているのか?」ということにクローズアップするのは、ほとんど意味がない。得失はどちらにもあって、要は設計思想の違いでしかない。

まず空冷だが、星型と組み合わせた場合、もっとも軽量かつコンパクトにパッケージすることができた。また胴体の断面が円形に近い航空機の構造に対して、空力的にマッチングさせやすく、その際にカウリングと胴体側面を最適設計することによって、シリンダーの間を流れる冷却風と、排気管をキレイにレイアウトできた。

また、被弾に対して強かったのも空冷星型のメリットであり、オイルタンクを別に設けたドライサンプ構造ゆえに、シリンダーに2、3個被弾したとしても、エンジンオイルが大きく漏れることもなく運転し続けることができる可能性が高かった。


4.現在の旅客機用のエンジンの効率はプロベラ機なみ!?
ひとくちに航空エンジンといっても、軍用機と民間航空機ではずいぶん違う。軍用機ではスピードや加速力といった性能に重きをおくのに対し、民間旅客機は低速時や音速時のパワー、燃費、騒音の低減などを重視する。

現在、軍用機、民間機に限らず航空用ジェット・エンジンはターボファン・エンジンが使用されている場合がほとんどだ。ターボファン・エンジンとは、エンジンの前方で巨大なファンが回り、生じた低圧縮空気を、燃焼のためのコンプレッサーに送るだけでなく、そのままエンジン外に排出し推進力にもする。乱暴に言えば、ファンを通じて外に出される空気は、プロペラ機と変わらない効果と言っていいだろう。

推進力として排出される空気の比率をバイパス比と呼ぶ。戦闘機などはバイパス比が低く、旅客機などでは高い。とくに最新の旅客機用のエンジンは、効率を高めるためバイパス比が9近いもの(軍用機は1~ 2)も登場している。これはターボプロップ・エンジンの比率に近い。

最新の旅客機用のターボジェット・エンジンの効率はプロペラ機に近いのである。ただしターボプロップ・エンジンは低速に強いエンジンであり、やはり旅客機用のエンジンはターボファン・エンジンが最適といえるだろう。

現在、旅客機に必要とされている、大バイパス比の航空用ターボファン・エンジンを生産できるのはアメリカのゼネラル・エレクトリック社、プラット&ホイットニー社、イギリスのロールス・ロイスplc社の3社に限られている。実際には協力メーカーも数多く、日本ならば川崎重工とIHI(旧称。石川島播磨重工)、三菱重工などが、各々の得意とする分野で各メーカーに協力している。

そして、近年のエンジンの性能向上(効率化)は目に見える形でも表れている。四発旅客機であるボーイング747と、二発の旅客機であるボーイング777‐ 300ERは実際の大きさや旅客数はそう変わらない。

しかし、777は双発のため、エンジン整備に関するコストや手間は半分程度で良く、さらに燃費も良い。つまり、ランニング・コストがいいのだ。その性能を得るため777用のエンジンは巨大なバイパス比を実現、エンジンはひと目で見て分かるほど巨大になっているが、それはファンの大きさでもある。

また、現在では新規に製造される旅客機のほとんどで、エアラインがエンジンメーカーを選ぶことができるようになっている。これもまた効率を追求するものだ。もちろんエンジンの燃費などの性能もあるが、エアラインが同一メーカーのエンジン搭載の機体を多数所有していれば、それだけ整備などの効率は良くなり、全体のコストダウンや安全運航に繋がる。効率というのは、そういったことを含めた総合的なものなのである。

5.過給機などの進歩で1000馬力から2000馬カヘ
戦闘機のエンジン出力は、第一次世界大戦時にはおおむね200hp(馬力)前後。その後、1920年代から1930年代にかけて500hpから800hpくらいへと進化し、第二次世界大戦/太平洋戦争開戦時には1000hpが一つの基準となっていた。

ここで注意しなければいけないのは、1930年代の代表的な戦闘機用エンジンと1940年代初めのそれとでは、エンジンの排気量自体は大きく変わってはいない、ということである。500hpと1000hpが同じような排気量とは一体どういうことなのか?

具体例を挙げよう。三菱重工が1930年代初めから1940年代にかけて量産したエンジンに「金星」があった。ボア×ストロークが140mm× 150mmの空冷複列星型14気筒エンジンである。このエンジンは最初から最後まで排気量は約3万2000ccと不変だったのだが、1930年代半ばに登場した初期型の最高出力が600hp程度だったのに対して、終戦時の最終型は実に2倍以上の1500hpにまで達していた。

こうした例は他のエンジンでも見ることができた。たとえば名機スーパーマリン・スピットファイアに装備されたロールスロイス・マーリンは原型となったP.V.12(1933年)の最高出力が790hpだったのに対して、高々度性能に特化したマーリンの特殊試作型の中には2780hpものパワーを記録したものがあった。

アメリカ製星型9気筒の傑作、ライト・サイクロンも1931年の初期型は500hpそこそこだったのに対して、50年代の最終型は1500hpを超えていた。メッサーシュミットBf109と共に進化したダイムラーベンツのDB601もまた、1935年の初期型のDB600は900hpそこそこだったのに対して、速度記録用に特化したDB601ARJになると2300hpを発揮したのである。

それでは、これらのエンジンでは一体どんなことが行われていたのだろう? もちろん排気量はいずれも不変である。パワーアップの秘密、それは過給機の進化だった。インペラー(羽根車)の大型化による過給圧のアップ。大過給圧に耐える優れた燃料の開発。不完全燃焼を防止する信頼性の高い点火系。こうした要素が複雑に絡み合い進化することで、大幅なパワーアップを実現したのである。そしてこの流れは特殊仕様ではなくコンスタントに2000hpを発揮できるモデルヘと引き継がれた。

星型の場合、14気筒から18気筒へのシリンダー数の拡大が代表的な手法だった。中島飛行機の栄と誉、三菱重工の金星とハ43。ライト・ダブルサイクロンとデュプレックスサイクロン、P&Wツインワスプとダブルワスプの関係などは、いずれも14気筒仕様と18気筒仕様である。ここで気になるのは、たった4つシリンダーが増えただけで馬力が倍近くも増えるものだろうか、という素朴な疑問だが、これもまた18気筒化と同時に、過給機や補機類が大きく進化していたことが理由なのである。



6.飛行機雲とエンジンの知られざる関係
晴れわたった青空に伸びる飛行機雲。よく見ると筋が1本のものもあれば4本のものもある。なぜ飛行機雲の本数が違うのだろうか? じつは、この飛行機雲の筋の数は飛行機のエンジンの数である。

そもそも飛行機雲にはおもに2種類ある。翼付近の空気の渦が冷えてできたものと、ジェットエンジンから排出された排気ガスが外気により一気に冷やされてできるものとの2種類だ。このうち後者の場合は、ジェットエンジンの数だけ飛行機雲がつくられるというわけだ。

旅客機のエンジンは種類や数もさまざまだが、小型旅客機の場合は、燃費がよいターボロップ・エンジンが、中型以上ではターボファン・エンジンを搭載していることが多い。 旅客機では、万が一、飛行中にエンジンが故障した場合に備えて2基以上を装備する双発機が一般的だ。

エンジンの数が多いほど安全性も高いので、3基の三発機のほか、長距離を飛ぶ国際線の大型機ではエンジン4基の四発機が主流である。 ただし、双発機は経済性に優れているという利点がある。

そのためボーイングではジャンボの愛称で知られるボーイング747の4基以外は、主力機777も含めてほとんど双発エンジンだ。つまり、飛行機雲もジャンボなら4本、777なら2本の筋ができるというわけだ。 今度、地上から飛行機雲を見つけたら、その本数で機種を想像してみてはいかが 。
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