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国際航空運送協会(International Air Transport Association,IATA)

1.国際航空運送協会(International Air Transport Association,IATA)
1944年11月にシカゴで行われた戦後の民間航空の発展を目指す条約作りでは、立場の異なる英米関の対立の下で多国間条約の形成ができなかった。このシカゴ会議ではオブザーバーとして世界の航空会社の代表が成り行きを見守っていたが、実際の民間航空の運営に必要な路線権、運輸権、輸送力、運賃などの取り決めがなされないのを見て、航空企業による国際団体の設立が急務であると考えられた。そこで世界の航空会社の代表はシカゴ会議の半年後にキューパのハパナ市において世界航空企業会議を開催し国際航空運送協会(IATA) の設立を決議し定款を採択、25カ国41の航空企業の署名によりIATAが成立した(現在約280社が加盟)。

1945年10月にモントリオールにおいて第1回総会を開催し本部をICAOと同じくモントリオールに決定、カナダ法に基づくカナダ法人として登録された初代事務総長には、シカゴ会議において英国側の主張である規制の下における航空の発展を主張、推進していたウィリアム・ヒルドレッド卿が選任された。シカゴ会議は英米両国の激しい対立の下で種々の妥協的産物となったが、ICAOが米国の主張を取り入れた緩やかな調整組織になったことで、英国側の国際的な組織による国際民間航空の運営、管理という志をIATAにその活路を見出すべくヒルドレッド卿の登用が薦められたものと考えられる。

IATAの重要な目的には
イ)安全かつ効率的航空運送の助成
ロ)国際航空業務運営の円滑化の促進
ハ)国際機関(ICAO等)との協力がある

国際航空業務の円滑な運営に関する活動では、IATA航空会社間での連帯運送についての標準契約を設けたり、空港でのハンドリング契約についての標準方式を定めたりするほか、以下のような活動がある。

IATA Clearing House (ICH,航空会社同士の精算機関):連帯運送などで生じる航空会社同士の債権・債務を定期的に一括して精算している。これにより航空会社間で発生する種々の債権、債務の精算の安定、効率化が図られている。

Bank Settlement Plan (BSP,IATA代理店一航空会社間の精算機関):航空会社は航空券の発券業務に伴う手数料などの精算を世界中のIATA代理店との間で行っているが、IATAが認めた銀行を仲介しIATA代理店との間で定期的に行うことで、債権の回収、保全などの効率化と安全性が確保されている。

Schedule Coordination (空港発着枠の調整):国際線の運航に必要となる世界中の空港での発着用の時間枠配分(SlotAllocation) の調整を行う。

その他、航空運賃についてはIATAの運賃調整会議において決められ、それぞれの2国間協定の下で各国の承認により有効になる形で進められてきたが、近年EUや米国においてこの運賃調整がカルテルに当たるとして独禁法の対象として検証する動きがある。今後のIATA運賃調整の活動は大きく変化していくものと考えられる。ここにおいてもシカゴ=バミューダ体制の重要な一角である運賃設定メカニズムが変貌しつつあることがうかがわれる。


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