目次

空港ターミナルビルは航空機を効率よく駐機させる工夫がある

1.空港ターミナルの形にもいろいろ
空港ターミナルの形にもいろいろある。日本の地方空港へ行くとおおよその場合、国内線のボーディングブリッジが3~4カ所あり、さらに1カ所は国際線、また出入口のドア部分をパーティションなどで仕切ることによって、国際線・国内線双方に使えるようになったボーディングブリッジがあり、発着するほとんどの便がボーディングブリッジに横付けできるというものだ。

そしてプロペラ機など、機体備え付けのタラップがある便のみタラップを使う。タラップを使う場合も、大きな空港では機体の前までランプバスを使うが、地方空港ではターミナルビルから乗客は歩いて機体まで向かう。

ところが大きな空港ではなかなかこうはいかない。羽田空港ではターミナル1はJAL、ターミナル2はANAが発着、ターミナルに余裕ができたと思われるものの、朝の出発便が集中する時間帯は、半分近くの便がタラップでの乗降になる。
小さな機体ほどタラップを使う、通称「沖止め」になるので、地方空港便冷遇との声も聞かれるほどだ。

しかしこれは世界の空港に共通の問題で、大きな空港ターミナルを造っても造っても駐機場は足りないといった傾向があるほか、かといってあまりに大きいターミナルにすると、搭乗手続きをしてから機体までの距離が長くなり、利用者にとっては「かえって不便」ということになりかねない。

そのため各空港ではさまざまな工夫が繰り返されてきている。たとえば成田空港では、現在のターミナル1北ウイング側は開港当初とほぼ同じスタイルになっていて、ここには第1サテライト、第2サテライトとあるが、当初は南ウイングに第3、第4サテライトがあり、左右対称のスタイルであった。

ターミナルを核とするならば、航空機が駐機する部分を衛星(サテライト)として機体が多く駐機できるようにしたものだ。この方法を最初に確立したのが1974年開港のパリ・シャルルドゴール空港で、核となるターミナルビルの周りに7つのサテライトがあり、ターミナルとサテライトは地下道で結んだため、航空機の出入りもスムーズにできていた。

しかしサテライト方式では、サテライト同士の連絡はなく(いったんターミナルビルに行かないと移動できない)、乗り継ぎに便利とはいえなかったので、現在はこの方式を採用する空港は減り、その後にできたシャルルドゴール空港のターミナル2ではサテライト方式は採用されなかった

ちなみにその後も空港様式は、サテライトがコンコースやフィンガーなどと呼ばれる形に変わるものの、いかに多くの航空機を効率的にボーディングブリッジに横付けし、利便性を高めるかという方向で空港ターミナルは推移するが、近年はそれとは逆行する動きもある。

シンガポールやクアラルンプールには近代的なターミナルがあるいっぽうで、「バジェットターミナル」と呼ばれる格安航空会社のみが発着する簡素なターミナルがある。そこでは全便がタラップを利用、地上業務に費用をかけないことで格安運賃を実現している。
世界的にもこのような格安航空会社専用のターミナルが広がりつつある。



空港の建築様式としてサテライト方式が少なくなり、続いて登場したのは、ターミナルビルに直接航空機を横付けする方法だ。航空機を多く駐機させるためには、建築物の壁、つまり側面が多くなくてはならない。

そこで成田空港第2ターミナルでは、ターミナルビル部分とは別に、そこから新交通システムに乗って棒状のサテライト部分に移動、そこにも航空機を駐機させるようにした。成田空港ではこの棒状の部分も「サテライト」と呼んでいるが、世界的にはこのスタイルの場合「コンコース」と呼ばれることが多く、「コンコースA、B」などと分けられている。

成田空港はターミナル1もターミナル2も、いわばその当時の流行だった空港スタイルを取り入れたわけだが、ターミナル1でもターミナル2でもターミナル本館とサテライト部分を結ぶ部分は地下ではなく地上でつながっていて、この部分が航空機のスムーズな動きを妨げている。成田空港のターミナル1はパリ・シャルルドゴール空港のターミナル1、成田空港のターミナル2はアトランタ空港などに似ているが、パリやアトランタでは本館とサテライトやコンコースは地下で結ばれている。

関西空港も基本的には同じスタイルで、非常に長いターミナルビルで、多くの航空機が横付けできるようにし、航空機はビルを回りこんで、ターミナル正面玄関側にも駐機できる。しかしあまりに細長いターミナルビルになっているため、異なるビルに向かうわけではないのだが、新交通システムも使われている。

次に空港ターミナル建築として多く採用されるのがフィンガーと呼ばれるものだ。ターミナルビルの核になる部分を扇の要だとすると、そこから航空機が横付けされる部分が放射状に伸びるもので、上から見ると手を開いた形になり、指の部分に航空機が駐機するので「フィンガー」と呼ばれる。

アムステルダム・スキポール空港、ソウル・仁川空港、シンガポール・チャンギ空港ターミナル2の増築部分などがこれにあたり、中部空港や成田空港ターミナル1の増築部分ともいえる南ウイングもこれに近い形だ。成田空港ターミナル1南ウイングでは、フィンガー形式となった現在も「サテライト」という名称を使っているが、かつてのターミナル1、そしてターミナル2での反省もあってか、ターミナル1南ウイングでは、第4サテライトと第5サテライトを結ぶ通路は地下に設けられている。

このようにターミナルビルは、いかにして効率よく多くの航空機を駐機させるかということで、さまざまなスタイルが試みられたといえるが、「これがベスト」というものがない。その証拠に、さまざまな空港で増築や、新ターミナルが建設されているが、増築や新築されるたびにスタイルが変わっている。使ってみて反省点をフィードバックさせると異なるスタイルになってしまうようである。

成田空港も1978年に開港したときのスタイル、1992年完成のターミナル2、そして2007年にリニューァルオープンしたターミナル1の南ウイング、すべてが異なるスタイルだ。パリのシャルルドゴール空港でも、ターミナル1、そしてターミナル2は最初にA~D、さらにEとFが完成するが、それぞれが異なるスタイルになった。各空港とも試行錯誤がうかがえる。

そんな中、当初の計画を着々と進めている空港もある。アメリカはテキサス州のダラス・フォートワース空港は、アメリカナンバーワンのアメリカン航空が拠点にする空港だが、半円形のターミナルが現在はAからEまで5つあり、当初からターミナルは6つ分の敷地が確保されていて、4つに始まり現在5つ、将来的には6つのターミナルまで建設できるようになっているが、すべて同じ形にそろえられており(最も新しいターミナルは若干、形が異なるが大きさなどは同じ)、当初の計画が将来的にも通用するものだったことを示している。

リオデジャネイロのガレオ空港(現在は国際空港と呼ぶ)も同様で、やはり基本計画時と同じスタイルのターミナルが増設されている。日本では、増設までは行われていないが、新千歳空港がこのダラス・フォートワース空港などと似たスタイルだ。

2. いっぽう世界に普及しなかったスタイルもある。
それがアメリカの首都ワシントン・ダレス空港で採用されたスタイルだった。そもそもターミナルビルは、他の空港でいうところの本館にあたる部分しか建設せず、航空機は沖止めにするというやり方で、これなら発着量が増えても、駐機スペースを増やせばいいだけというメリットがある。

タラップで乗降するので「ローカル空港となんら変わりはない」となるところだが、雨の日でも乗客が濡れることなどのないよう、そして階段の上り下りも不要なように「モービルラウンジ」が採用された。これは待合室が航空機まで移動して、横付けするもので、MDI別クラスからジャンボ機まで対応するように、車体が油圧装置で上下し、前後どちらにでも移動できるバスのような乗り物であった。

このモービルラウンジは、他の空港でも、沖止めになった機体へのバスの替わりとしても運行された。しかしながら、この特殊な乗り物の運行経費が、航空会社にとって負担としてのしかかり、この方式は世界で採用されることはなかった。現在では、ワシントン・ダレス空港もコンコースが増設され、通常のスタイルに改められた。この空港ではANAの成田への直行便が運航されているが、かつては時刻表に、飛行機の出発時刻とともに、このモービルラウンジの出発時刻までが記されていた。
この記事を見た人は、一緒にこんな記事も読んでいます!


ページのトップへ戻る