1.ビジネスの進化を加速させたファースト廃止の世界的傾向
レジャー客の利用も増えているビジネスクラス。ビジネスクラス利用ツアーの増加や割安なビジネスクラス正規割引運賃の登場などにより、一般の旅行者にとってもビジネスクラスは比較的身近な存在になりつつある。
ビジネスクラスでは最新のプロダクトが次々に登場し、サービスは急速に進化を遂げている。1990年代以降、
ファーストクラスをなくし、ビジネスクラスのサービスを改善する動きが続いたことも、近年のビジネスクラスの高品質なサービスの背景にある。
あこがれのビジネスクラスと言われるだけあって、エコノミークラスとのサービスの格差は大きい。一人あたりのスペースが圧倒的に違うのである。シートをはじめ、食事やアルコール類、アメニティなどの機内サービスはもちろん、出発空港での地上サービスから現地に着いて空港で手荷物を受け取るまで、トータルで手厚い対応が受けられる。出発から到着までストレスのない空の旅を実現してくれるところが、ビジネスクラスの真のアドバンテージといえるのではないだろうか。
ただし、
同じビジネスクラスでも、航空会社や路線、機材によってサービス内容が大きく異なることも少なくない。同じコストをかけるなら、最新のサービスを選びたいものだ。これはファーストクラスと同じだが、欧米などへの長距離路線で利用すると、上級クラス本来のサービスの違いがより実感できるだろう。
このほかビジネスクラスは、一般的に
マイレージのポイント加算率でも優遇される。
エコノミークラスの加算率に制約が増える傾向のある現在、割引航空券でも制約が概して少なく、マイルの加算率が高めなこともビジネスクラスの魅力の一つといえる。
2.長距離便ではフルフラットが増加
最新シートは「スタッガード」タイプ
エコノミークラスと決定的に違うのがシート。かつてはシートビッチやシートの幅、リクライニング角度が多少異なる程度だったが、ここ20年ほどでエコノミーとの格差はどんどん広がっていった。
現在、長距離路線を中心に、ビジネスクラスのシートの主流となっているのはフラットシートだ。床に対して完全に水平になるフルフラット(180度リクライニング可能)と、床に対して多少斜めになる状態でシート面がフラットになるライフラット(斜めフラット)があるが、最近はより快適なフルフラットタイプが増えつつある。デザイン面ではどちらのタイプもそのほとんどが、大きめのパーティションでプライバシーを確保したシェル型。シートをベッドにすると、全長が2m近くになることも多い。
長距離路線では大手航空会社の多くが、フルフラットタイプのシートを導入している。ただし同じフルフラットでも、航空会社により座席のレイアウトが異なる。ヴァージンアトランティック航空やニュージーランド航空、エア・カナダなどが採用しているのは、各シートが通路を挟んで互いに斜め前方を向くヘリンボーン型。魚の骨に似ているためこのように呼ばれる。窓から景色を眺めるには向かないが、すべて準個室スタイルになるため、プライバシー重視のビジネスパーソンには好評のようだ。
一方、最先端の座席配列といえるのが、ANAやアシアナ航空、スイスインターナショナルエアラインズ、エティハド航空などが導入しているスタッガード型。座席を半席ごとにずらし、互い違い(スタッガード)に配列することにより、パーソナルな空間を実現した。アシアナやスイスインターナショナル、エティハドなどは、ソロタイプとカップルや子供連れに便利なペアタイプの両方を用意。さまざまなニーズに応えることができる。加えて、スタッガード型は全座席が前向きで、窓側席なら普通に景色が眺められる。なお、ヘリンボーン型もスタッガード型も、すべての座席からそのまま通路にアクセスできる点は共通している。
このほか、元祖フルフラットのブリティッシュ・エアウェイズやユナイテツド航空などが採用する、前向きと後ろ向きシートを組み合わせた配列もユニーク。またシンガポール航空のエアバスA380やボーイング777-300ERなどの、1-2-1配列の幅広フルフラットシートも個性的だ。
3.一部を除き、基本はコース料理 レストランスタイルのサービスも
一部の短距離路線などを除いて、フルコースメニューが楽しめるビジネスクラスのミールサービス。通常3~4種類のコースが用意され、日本発着の多くの航空会社では、往復とも和食コースが選べる。食事の時間になると客室乗務員がテーブルクロスをセット。陶磁器に盛り付けられた、街のレストランさながらのコース料理が機内で楽しめるのだ。これはビジネスとエコノミーのミールサービスの大きな違いの一つである。
また長距離便を中心に、クルーが前菜からデザートまで一品ずつ料理を席へ運んでくれるスタイルが増えつつある。ワントレイで一度にサービスされるエコノミークラスとの差は明らかだ。加えて、ヴァージンアトランティック航空のように、好きなものを、好きなときに、好きな組み合わせで注文できる、レストラン方式のサービススタイルを採用するところもある。
ユニークなのはオーストリア航空やトルコ航空で、本物のシェフ(フライングシェフ)がビジネスクラスに搭乗し、さじ加減の難しい再加熱や料理の盛り付けなどを機内の厨房で行っている。まさに空飛ぶレストランである。
最近の特徴の一つは、コース料理以外のアラカルトメニューにもバリエーションがあること。特に日系エアラインはアラカルト料理の充実に力を入れており、例えばJALの欧米路線では、和洋から麺類、デザートなど計16種類の単品メニューを取り揃えている。
有名シェフや名門レストランなどとのコラボレーションメニューが多いことも、ビジネスクラスのセールスポイント。スイスインターナショナルエアラインズは、四谷「オテル・ドゥ・ミクニ」の三國清三氏プロデュースの本格フレンチ(日本発便)、エバー航空は小籠包の名店「鼎泰豊(ディンタイフォン)」の小籠包コースなどが日本路線の一部でチョイスできる。
ドリンクサービスではワインのセレクションが充実。多くの航空会社が、有名なソムリエやワインアナリストの協力を得て、食事のメニューにあわせてプレミアムワインを厳選している。
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