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エコノミークラスはシート幅の広さは変わらないけど設備が多機能に

1.スペース的な変化がないエコノミークラス
多くの旅行者が利用するエコノミークラス。ビジネスクラス専用機のようなごく例外的な便を除くと、日本発着のすべての便に設定がある。また最近急速に日本路線を拡大しているLCC (格安航空会社)は、基本的にエコノミークラスのみのモノクラスで運航される。

ただし、既存の大手でもLCCでも、乗客一人あたりのスペース(座席と足元の広さ)は、新幹線などに比べても非常に狭いといわざるを得ない。ビジネスクラスやファーストクラスでは、シートピッチが広がり、シート自体も総じて大型化が進んでいるが、エコノミークラスに関してはそのような動きはほとんどない。逆に、長距離路線の主要機材であるボーイング777シリーズでは、以前は横3‐3‐3席の座席配列が主流だったが、最近は横3-4-3席の配列が増えているなど、過密化の傾向さえ一部では見られるほどだ。

とはいえ、エアバスA380やボーイング777などの新しい機材では、シートやその付帯設備(特に機内エンターテインメント=IFE)がグレードアツプされ、パーソナルスペースの広さにはほとんど変化がないものの、機内の居住性や機能性は改善されつつある。

ソフト面での最近の傾向の一つは、既存の大手エアラインでも、一部でサービス有料化の動きがあること。例えば最前列(バルクヘッド)や非常口前(エグジットロー)などの足元の広い席(列)は追加料金が必要になったり、機内食の一部やアルコール類を希望者が購入したりする例が増えつつある。既存の大手、LCCを問わず、乗客がニーズに合わせてサービスを選ぶ時代ともいえそうだ。


2.シェルタイプのシートも登場
シートまわりの設備も多機能化へ

シートピッチやシートの幅など乗客一人あたりのスペースはほとんど変わらなくても、シート自体は進化を続けている。最新のエコノミークラスのシートを代表するのが、バックシェル型のシート。最近のビジネスクラスのシートのように、座席の背面がシェル(パーティション)で覆われ、シートを倒すのではなく前方へずらすことで体のポジションを変え、リクライニングするのと同じ快適さを得るというものだ。ANAの777-300ERの新造機(成田発着の欧米線に順次導入中)やキャセイパシフィック航空の747-400、777‐300ERなどに採用されている。前のシートが倒れてくる圧迫感がないのは、座席間隔の狭いエコノミークラスでは十分アドバンテージになるはずだ。

さらにユニークなプロダクトは、ニュージーランド航空が777-300ER(日本路線は未就航)に導入を始めた「エコノミー・スカイカウチ」。37列から46列の窓側3席(座席番号はABCおよびHJK)が対象で、各3席の座面が前のシートの背もたれ部分まで伸びる形で水平になり、ベッドとして使用できるというもの。エコノミーのフルフラットシートである。小さな子供と親、カップルなどの利用に適している。こうした新機軸の登場が、エコノミークラスのシートを劇的に変えるきっかけになるかもしれない。

ちなみに既存のシートでも新しいタイプでは、仮眠のときに頭を支えてくれる可動式のヘッドレストや足の位置を調節できるフットレストが増えてきた。加えて、シートまわりも多機能になりつつある。パソコン用電源やUSBポート、iPodコネクター装備の機材が少しずつ増えているし、ドリンクホルダーやコートフック、折りたたみ式のテーブルなどを設けるケースも珍しくない。エティハド航空は、長時間のフライトでも無理のない姿勢が保てる「ゆりかごリクライニング」機能を採用した。狭いスペースでも、より快適に過ごす工夫がさまざまに凝らされているのである。



3.ワントレイのセットメニューが基本
一部では有料でのサービスも

コース料理が基本の上級クラスに対して、エコノミークラスの食事は一つのトレイに入れて一度にサービスされるのがスタンダードだ。また一部の短距離路線では、ボックスに入ったプチ弁当(コールドミール)だったり、航空会社や便によっては茶菓やスナックだけで食事がサービスされなかったりすることもある。ただし、その他の路線では、温かいメインディッシュをはじめ、前菜(サラダなど)やデザート、パンやミニチーズなどで構成されるセットメニューが提供される。

メインディッシュは2種類から選べることが多く、和風と洋風、アジア風とインターナショナル風など、サイクルによってさまざまなメニューが登場する。最近は、カレーや丼物などのカジュアルなメニューもよく出ているようだ。タイ国際航空のタイ風カレー、大韓航空やアシアナ航空のビビンバ(エコノミークラスでは基本的にソウル発の中長距離便で提供)など、母国の名物料理を選択肢に加えるところもある。

航空会社や路線によっては料理のチョイスが増えることがある。ヴァージンアトランティック航空は松花堂弁当(お椀に入った味噌汁付き)やベジタリアンなど4種類のメニューをラインナップ。エミレーツ航空は、和食を含む全3種類のメニューを用意している。
ただ、以前に比べると全体的に軽めのメニューが増えているような印象を受ける。これには、利用者のヘルシー志向の高まりに加えて、航空会社のサービスコスト削減の傾向も影響しているようだ。

このほか一部の米系エアラインなどがアルコール類を有料で提供したり、ANAが有料サービス「ANA My Choice」(ビジネスクラスの食事やシャンバン、ワインなどを希望に応じて購入できるサービス)を開始したり、といった有料化の動きも最近の特徴である。



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