よほど旅なれた人でも、アフリカには行ったことがない、というひとは多いだろう。特にサハラ砂漠以南の「ブラック・アフリカ」へは、日本から直行便が飛んでいないこともあって、遥か彼方といった印象の地だ。
もっとも、先入観とは裏腹にアジアを経由すれば、路線や便数は少なくなく、極端に不便というわけではない。
今回は、エチオピア航空で香港からバンコクを経由し、エチオピアの首都アジスアベバに向かった。
大自然が残るアフリカは、先進国や有名観光地の旅行では飽き足らない、というツワモノにもおススメである。
アフリカをリードするエチオピア航空
アフリカ大陸とひと口にいってもエジプト、モロッコ、チュニジア、アルジェリアといったアフリカ北部は人口の多くがアラブ系の人々であるため、文化的には同じイスラム圏の中近東や地理的に近いヨーロッパの影響が強く、サハラ砂漠以南のいわゆる「ブラック・アフリカ」とは別世界といっていい。
その「ブラック・アフリカ」。南アフリカのヨハネスブルグやケニアのナイロビといった大都市は航空便の面からも比較的行きやすい。そこで、できることならばアフリカ縦断飛行機の旅をしてみたかったのだが、よく調べてみると、各国のビザ取得、決して安いとはいえない航空券、伝染病の予防注射の必要性など、かかる手間と金が少なくない。その上、かつて同じ宗主国の植民地だった国どうしの便はあるものの、それ以外の組み合わせになるとフライト自体がほとんどない。欧米のように手軽に航空旅行をできる環境ではないのだ。
そんな事情もあって、今回はエチオピアの首都アジスアベバに行くことにした。エチオピアは「ブラック・アフリカ」を代表する国家のひとつであるし、アフリカらしさを堪能できるに違いない。また、エチオピアはアフリカの中では発展上位国といっていいので、ホテルやレストランがあるはずなのも旅行者には心強く、何よりも治安が良さそうなのが安心だ。
エチオピアヘの旅はもちろん同国のフラッグキャリア、エチオピア航空を利用する。同社は今年で設立60周年を迎える歴史ある航空会社だ。アフリカで初めて自社のパイロット訓練施設を設け、整備施設がFAA(アメリカ連邦航空局)の認定整備工場となるなど堅実な発展を続けている。さらには全日空や日本航空が導入予定の次世代機、ボーイング787ドリームライナーも発注しており、まさにアフリカの航空業界をリードするエアラインといっていいだろう。
エチオピア航空は現在、香港からバンコク経由アジスアベバ行きの路線を週3便運航している。
香港出発の2時間前、空港のチェックインカウンターに行くと、すでにここはアフリカなのではないか、と思ってしまうような雰囲気になっている。乗客の9割はアフリカ人で、これから引越しでもするかのように、みんな大きなダンボール箱や袋をかかえている。彼らは西アフリカから来た商人で、ラゴス、アクラ、アビジャンなどへ乗り継ぐ乗客だという。
前述したように、アフリカ大陸はその広大さにもかかわらず路線網が充実しているエアラインが少ない。それどころか航空会社さえ持たない国も多く、たとえエアラインがあってもナミビアやアンゴラのように欧州~自国間の輸送が中心である。その点、エチオピア航空はワシントンとヨーロッパ6都市へ就航する一方、中央アフリカ路線が充実しているので他国人の利用が多いのである
2.しっかりとした機内サービス
インド洋を越えてアフリカ大陸へ
乗務員に案内されて機内へと進む。609便の使用機材は767‐300ERだ。同社は737‐700、757、767‐300ERと、フリートはボーイング機が主力で、平均機齢も若い。搭乗機の登録記号はET‐ALH、2000年製造でスイスのバルエアで運航され、2002年からエチオピア航空で飛んでいる。カラーリングはホワイトボディにビルボードタイトルの新塗装である。
機内はビジネス、エコノミーの2クラス制。今回はエチオピア航空の厚意でビジネスクラスはシートは2-2-2の6アブレストの標準的な仕様で長距離フライトならリクライエングさせて十分眠っていける。
この香港便は往復ともにバンコクを経由する。香港からバンコクまでの飛行時間は2時間半、その後アジスアベバまで8時間半というスケジュールだ。食事は香港を出発してからとバンコクを出発してからの2回、しっかりとしたサービスが行われるが、香港を出てすぐ食事をした客室乗務員は男女ともに日本人と変わらない体格だ。
聞けばエチオピア人は小柄な人も少なくなく、また女性はアフリカの中でも美人が多いという。アフリカの政府高官などはエチオピア人を奥さんにする人も珍しくないそうで、どうやらエチオピア人女性はモテモテのようである。そんな客室乗務員たちが民族衣装を着てミールサービスをしてくれる姿は、繊細で美しい。食事はクッキーサービスに始まり、サラダ、メインディッシュ、フルーツ、チーズと進んでいき、ワインは南アフリカ産のものが搭載されていた。
食事が終わりバンコクにアプローチを始めるころ、乗客は眠りにつき始める。バンコクで乗務員交代の後に再び出発、インド上空を通ってシップは一路アフリカ大陸を目指して大圏航路を進んでゆく。
翌朝、客室乗務員に肩をたたかれて目が覚めた。寝ぼけ眼で窓のシェードを開けると西へ飛んでいるため太陽が飛行機の後ろから昇ってくる。すでにシップはアフリカ大陸のジブチ上空に入るところだ。朝食を食べながら窓外を見ていると茶色いアフリカの大地、それもかなり高低差のある台地が見えてきた。アフリカ大陸へようやく到達したことを実感する。眼下に広がる絶景の中にはアフリカらしい野生動物たちも生息していることだろう。
やがて609便は降下を開始し、いったんアジスアベバ市内と空港上空を通過した後にランディングした。アジスアベバの標高は2300~2500メートルもあり、富士山の五合目よりも高い。首都としては世界で3番目に標高が高いという。
到着したアジスアベバ空港の国際線ターミナルはまだ真新しく、5機ほどの757と767がずらりと並んでいる。
エチオピア航空はハブ&スポーク方式で朝と夜には機体をアジスアベバに集中させ、乗り継ぎの便を良くしている。したがって今日の前に並んでいる機体も2~3時間以内には次々と飛び立ってゆき、日中はガランとした空港になる。アジスアベバから客の約半数はそのまま乗り継ぎ便で西アフリカや南部アフリカヘと再び旅立っていく。
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