何回飛行機に乗っても、機内から目的地の空港が見えたらホッとするもの。だが、安心するのはまだ早い。航空事故の約7割は離
着陸前後に起こっているのだ。被害が大きいのは墜落事故だが、事故数の多さでは、圧倒的に離着陸前後が多いのである。そのためか航空事故ではしばしば魔11分間(クリティカル・イレブン・ミニッツ)という言葉が用いられる。
これは、
旅客機の飛行において離陸の滑走開始後の3分間と着陸前の8分間に事故の発生率が高いことから、この両方を足した11分間が危険な時間帯だとされている。
航空機は飛行する際、離陸、上昇、巡航、進入、着陸という流れをとる。離陸とは航空機が、滑走路を離れてから上昇をはじめるまでの段階で、着陸とは、空港に近づき、接地して完全に停止するまでをいう。この離陸と着陸の操作をおこなっているときが、事故の発生する確率が高いということだ。
これは統計を見ても明らかなのだが、ではなぜ空中を飛んでいるときより離着陸時に事故が多いのか。
じつはこれにはれっきとした理由がある。そもそも航空機は、いかにして飛ぶかを考えてつくり出された乗り物だ。そのため巡航中がもっとも安定するようにつくられている。
対して離陸と着陸は、飛行の開始と終了という、いわば飛行中とは逆の操作をおこなう。空気の流れに逆らうため、ちょっとした判断ミスや気象条件などが運航に大きく影響してしまうのだ。パイロットも離陸と着陸をいかにスムーズにおこなうかということが難しいという。
それゆえに離着陸は、気象条件が悪い場合、離陸停止、または着陸のやり直しなど、慎重におこなわれているのである。
2.墜落時に助かる可能性がもっとも高い座席はどこだ
何度飛行機に乗っても、乱気流などで機体が揺れると、つい堕ちたりしないだろうかと心配になってしまう。
旅客機に乗って事故に遭遇する確率は、自動車事故に遭遇する確率よりもはるかに低いといわれている。
とはいえ、可能性はゼロではないし、いったん飛行機事故が起これば、死者が出る可能性は高い。万が一、墜落事故に遭遇してしまった場合のことを考えると、墜落時に助かる可能性が高い座席があれば、誰もが座りたいと思うだろう。
アメリカのポピュラー・メカニックス誌では、過去弱年間、合計別件の旅客機事故を調査し、座席の位置による生存率を割り出した。
それによると、
機体前にあるファーストクラスの生存率は49%、中間のビジネスクラスは56%、後部のエコノミークラスは69%だという。つまり、旅客機の座席は、機体前方にあるファーストクラスよりも、後方にあるエコノミーのほうが安全だということになる。
もちろんボーイング社や米連邦航空局などでは、座席の位置によって生存率に差が出ることはないと説明している。
だが、1985年、日航ジャンボ-23便が群馬県の高天原山二般に御巣庶山といわれているが、厳密にはその南方の高天原山とされている)に墜落し、死者520人という過去最大の大惨事となった事故では、奇跡的に救出された女性4人は、みな後部座席に座っていた。そのため、後部座席のほうが助かる可能性が高いという説が世界中に広まった。
また、先述したように、ボイスレコーダーやフライトレコーダーを収めたブラシクボックスは、事故のときに衝撃が小さい客室後方に設置されている。
たしかに、機首から墜落した場合は、後方のほうが衝撃が小さいといえる。とはいえ、実際に起きている事故は、尾翼から墜落したり、空中で爆発したり、海中に墜落したりとさまざまなケースが考えられる。
3.墜落しても壊れないブラックボックスいったいどのくらい頑丈なのか?
航空機事故が起こると、必ずといっていいほどニュースで「ブラックボックス」という言葉を耳にする。2001年にアメリカで9.11同時多発テロが起きたとき、世界貿易センタービルに激突した2機のブラックボックスが回収されたのかどうかが大変話題になったが、真実はいまも謎のままである。
このブラックボックスは、航空機事故の原因究明のために必ず搭載される装置で、中には「コックピット・ボイスレコーダー(CVR)」と「飛行データ記録装置
(FDR)」の2種類が入っている。
CVRは、詳細は後述するが、コックピット内のクルーたちの会話や管制機関との交信内容などをすべて、鋤分のエンドレステープで録音したもの。古い録音を消去しながら録音していくので、航空機が停止する直前のコックピット内の音声が記録され、事故当時の状況を知ることができる。
FDRは一般に「フライトレコーダー」と呼ばれ、高度、速度、機首方位、垂直加速度、経過時間などのデータが磁器テープにダイヤモンド針で刻み込まれる。
これらのデータが、事故前の飛行状況を解明するための必要不可欠なデータなのだ。
ただし近年は、これだけのデータでは原因解明には不十分だとされ、飛行機の姿勢やエンジンの状況など、新たな四種のデータの記録が義務づけられており、さらに詳細なデータがデジタルで記録されている。これはお時間のエンドレステープで、「デジタル飛行データ記録装置(DFDR)」と呼ばれている。
このCVRとDFDRが入っているブラックボックスは、どんな事故が起きても破壊されないように、耐熱・耐衝撃構造になっており、1100度の高温に熱せられても、1トンの衝撃にも耐えることができるというから驚異的だ。おもに衝撃が小さい客室後方の天井裏や後方貨物室付近に装着されている。
また、発見しやすいように目立つオレンジ色で、強い衝撃を受けたり海水につかると位置を知らせる信号音を発する。そのため、事故の際は比較的早く回収されるのだ。
シートベルトは命の綱
確率的にいうと飛行機は、安全な乗り物といえ、自家用車で移動するよりも格段に安全性が高いといえる。なにしろ全世界で一年のうちに、自動車の交通事放で命を失う人は100万人もいるのだ。
それでも、いったん事故がおこると多くの犠牲者を出してしまう飛行機。そのため、飛行機には多重の安全対策がとられている。
大前提として、飛行中にはシートベルトを必ず着用する。ベルトの着用が生死をわける場合があるのだ。1989年におこった飛行機事故の例をあげると、飛行中に突然荷物室のドアが開き、与圧された客室が破裂するように崩壊した。そのさい9名の乗客が外に吸い出されてしまったのだが、シートベルトを締めていた乗客は無事生還することができた。
この事故から教訓を導きだそうとするならば、シートベルト着用のサインが出ていなくても、常にベルトを締めていたほうが安全であるといえる。
不時着前後に使用する装置
①緊急脱出装置
現在の大型機では、旅客の搭乗口がそのまま非常口となる。パイロットが乗客脱出信号を発し、キャビンアテンダントがドアを開けると、同時に高圧ガスで脱出用スライドがふくらみ、約10秒で膨張・展開して滑り台となる。法規では90秒以内に全員が脱出できるように決められており、乗客は互いにぶつからないよう注意しながら脱出する。
②救命装備品
救命チョッキ、ライフ・ベストと呼ばれ、不時着水したとき、乗客と乗員がそれぞれ着用する救命具である。通常は座席の下に収納されている。脱出してからひもを引くと、小さな炭酸ガスボトルからガスが注入されて膨らむ(口で吹いてもよい)。夜間の場合は、海水電池で点灯する標識灯をつける。
③救命いかだ
緊急不時着水した場合を考慮して備えられている。雨や直射日光を避ける天蓋もあり、42人乗りと25人乗りがある(機種により異なる)。最近では、脱出スライドが救命いかだに早変わりするものが使われている。
漂流に備えて食料や無線標識、医療品なども搭載している。乗員乗客がすべていかだに乗り移ったら、いかだといかだをつなぎ合わせ、単独での漂流を防ぐとともに、上空からの発見を容易にする。
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