目次

LCCの生い立ちと徹底する7つのビジネスモデルが特徴

1.LCCの生い立ち(米国の規制緩和)
航空自由化の中でLCC(Low Cost Carrier) の雛形ともいえるサービスを実施し一世を風靡したのは今はなきピープルエクスプレスであった。ピープルエクスプレスは1978年の航空企業規制廃止法後に、最初に州際定期を申請した会社であったが、現在のLCCの雛形のサービスを実施し、一世を風靡した、すなわちニューヨークのニューアーク空港のターミナルピル空きスペースを利用し、ルフトハンザから中古のB737を安く借り、低運賃、ノーフリル(最低限の)サービス(機内でのコーヒーは有料で50セント)で、ニューアークをハブに運航を開始した。

規制緩和下の米国では、このようなビジネスモデルのLCCの誕生が繰り返され、大手航空会社との競争激化が続く中で今日に至っている。約30年の歴史の中で、新興LCCを含むエアラインが数多く生まれては消えていった。またそんな新興LCCの中でもサウスウエスト航空は次第に規模を拡大し現在では全米最大級の国内旅客数を運ぶ規模にまで躍進した。

米国で新規参入会社が低価格戦略に出てきた背景には国土の大きさがある。
米国の人口は2005年現在2億9641万人、人口では日本の2.4倍程度だが、国土面積は963万km2、日本は38万km2なので、実に日本の25倍の面積である。日本の2.4倍の人口が25倍の面積の国土に住んでいる形だが日本は森林・農地・道路・河川が国土面積の86%を占め居住面積は国土の一握りであり、日米の都市間の平均距離(都市の広がり方)は日米の国土面積の差異以上に差があるものと思われる。また人口10万人以上の都市数は米国が280以上、日本が180となっている。
このように広大な面積がある米国ゆえに、国内線航空の旅客数は2006年度で米国が6億5948万人、日本が9177万人であり、米国は日本の約7.2倍にもなる。

米国の国内線航空旅客数が日本に比べてきわめて大きいのは、人口が多く都市が広範に広がっていること。日本の新幹線に比して長距離移動モード(鉄道、バス、自家用車)の対航空競争力が弱いこと、堅調な経済成長が続いていることなどがあげられ、これらがLCC興隆の背景となった。

航空企業規制廃止法は、参入と運賃設定を自由化することで、新規企業の参入が起き、市場で一般大衆が望む運賃とサービスを提供する競争圧力が働くことを意図したものだが、米国内航空市場での競争激化やLCCの台頭による影響はその考えが正しかったことを証明しているといえるであろう。

また米国のこのような規制緩和の流れは、日本をはじめとする世界各国の規制緩和にも影響を与えた。すなわち世界経済のグローバル化による人と物の流動性拡大という環境の中で、LCCを含む新規航空企業の参入拡大が起こり、航空市場の競争促進による輸送力の拡大と運賃の相対的な低下という今日の世界的潮流を呼び起こした。


2.LCCのビジネスモデル
LCCのオリジナルのビジネスモデルとは、どのように定義できるであろうか。
会社の規模やネットワークの違いなどあるがおおむね以下のように考えることができる。

①中小型機中心に使用機種を統一
使用する機種をボーイングB737やエアパスA320などの中小型機にし、また使用機種も原則1機種に統一している。使用機種の統一と一括購入で機材購入コストの抑制が可能になるほか、機材の整備コストや予備部品の購入・保管コスト、乗員の訓練コストを抑えることができる。

②中短距離中心の多頻度運航
多くのLCCは、欧州、米国、アジアの域内で数時間、長くても4時間程度の中短距離路線を中心に多頻度運航を行い、機材と乗員の高稼働を維持している。
多頻度運航をノーフリルサーピスで行うためには中短距離路線が望ましいから
とされている。またサウスウエスト航空やエアアジアが短距離路線に進出した理由の1つには自家用車やパスの旅客や海上フェリーの旅客など他の交通モードからの旅客の獲得を狙ったことがあるといわれている。

その運航スタイルは、いわゆるハブ&スポークの運航でなく、ポイント・トゥ・ポイントの2地点間運航が基本になっている。
またLCCによっては座席指定を行わず自由席とすることで、チェックイン時の旅客、係員双方の手聞を減らし、ゲートでの旅客待機を促進し搭乗時間を短縮させている会社もある。

③2次的空港の使用またはLCC専用の安いターミナル使用
大手航空会社が乗り入れている混雑した大都市のメイン空港をできるだけ使用せず、大都市周辺の混雑していない2次的空港(セカンダリーエアポート)に乗り入れることで、定時性を確保し多頻度運航を維持し空港使用料も安く抑える。また利用が少ない2次的空港への乗り入れで空港使用料の割引や補助金を得るケースもある。またクアラルンプール空港やシンガポールのチャンギ空港では簡素な代わりに使用料も安いLCC専用ターミナルがあり、LCC各社が利用している。

④1クラス制(エコノミークラスに統一)で機内食や飲料の省略・簡略化あるいは有料販売化
安い運賃を旨とするため、エコノミークラスに統一し、機内食や飲料の省略、簡略化あるいは有料販売化することでギャレー(調理室)スペースを縮小し座席を最大数配置しエコノミークラスとしての収入最大化を図ることができる。またエコノミークラスに統一し機内食を廃止することで、上級クラス担当やギャレー業務担当の追加客室乗務員を乗せる必要がなくなり、客室乗務員の配置・編成数も最小で済む(米国連邦航空局(FederalAviationAdministration. FAA)の規定上、保安業務から客席50席に対して1名の客室乗務員を配置している)
さらには機内食や飲料の調達、搭載、配布のコストを下げることができるほか、機内食や飲料の搭載、取り降ろしも廃止または削減でき、到着空港での折り返し時間の短縮に寄与することができる。

⑤ラウンジ、FFP (Frequent Flyer Program. マイレージ)、機内誌や新聞などの付帯サービスの省略
ラウンジ、FFP (Frequent Flyer Program. マイレージ)、機内誌や新聞、機内エンターテインメントなどの付帯サービスを省略することでサービスそのもののコストやサービスを立案、準備、実施する部署や人手が不要になり、その分の人的コストも下がる。それを安い運賃で消費者に還元することがオリジナルのビジネスモデルになっている。ただしLCCによっては、独自のFFP(マイレージ)を実施し機内誌や新聞を搭載しさらには機内エンターテインメントを装備するLCCも出てきている。

⑥旅行代理店を通さない直接予約販売
旅行代理店を通さず、利用旅客とインターネットや電話を通じての直接予約販売を行うことで、旅行代理店への販売手数料を削減し代理店セールスの人的コストも削減できる。また航空券も多くのLCCがペーパーレスのEチケット化を行っており、発券コストを下げている。

⑦競争力ある賃金水準と高い生産性(簡素な間接部門)
乗員やCA、地上職員の給与を安く、競争力のある賃金水準に置くほか、間接部門をできるだけスリム化させたり、乗員、CAの高稼働を維持することに加え、地上折り返し時間を短縮させるため乗員、CAが機内清掃に加わる会社もあるなど、大手航空会社に比べて人的競争力は高い。欧米のLCCでは人的生産性を高めるため、利益発生時には従業員に一部をボーナスとして成果配分する企業やストックオプション制度を採用している企業もある。


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