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LCCは日本の各都市で就航して一番変わったこととは?

1.日本資本のLCCが次々に運航開始
着陸料の高さや成田空港の発着枠不足などから、日本はアジアのなかではLCCの就航が遅れ気味だったが、2007年にオーストラリアのジェットスター航空が初就航する。その後は、セブパシフィック航空、済州(チェジュ)航空、エアブサン、ジェットスター・アジア航空、春秋航空(中国)、エアアジアXなど、アジアのLCCが続々と日本路線を開設。乗り入れ空港も、成田、関西、中部、新千歳、茨城、北九州、高松など日本各地に広がった。

さらに、外資系LCCの攻勢を受けて、日本資本のLCCが相次いで就航を開始した。ANAはピーチ・アビエーションを設立。ブランド名を「ピーチ」として、関西空港を拠点に12年から運航を開始した。さらにANAは、マレーシアのLCCであるエアアジアと共同で、第二のLCCとなるエアアジア・ジャパンを設立し、運航を開始した。

日本航空は、カンタス航空系列のLCC大手のジェットスターなどと共同で、11年にジェットスター・ジャパンを設立。
しかし、エアアジア・ジャパンは搭乗率が伸び悩んだことなどから13年に運航を停止、ANAとエアアジアの提携は解消した。そして、ANAが全額出資したLCCとしてバニラエアが運航を開始した。


2.LCCが国内旅行シーンを活性化する
国内初の格安航空会社(LCC)、ピーチ・アビエーションの就航が2012年。12年は日本の空に本格的なLCC時代が到来したといわれている。

では、LCCは日本の国内旅行シーンにどんな影響を与えたのか。
大手航空会社に比べて半分以下の運賃で提供する移動サービスは、消費者のライフスタイルを大きく変えはじめたとして、手軽にアジアや北海道の日帰り旅行を楽しむ若者が増え、沖縄県に移住して都内に通勤する人も出てきた。

消費者の国内旅行のスタイルを変えたいちばんの理由は長距離移動のコストが下がったことにある。LCCによる長距離移動と既存の交通手段による近距離移動の運賃格差が消滅している以下の事例を挙げている。

・東京-札幌往復4960円(エアアジア・ジャパンセール運賃の最安値)
・東京-松山往復3980円(ジェットスター・ジャパンキャンペーン運賃)
・大阪-ソウル日帰り往復7400円(ピーチ・アビエーション、平日)
・東京-箱根往復4040円(小田急電鉄特急利用)
・大阪-白浜(和歌山県)往復9240円(JR特急利用)
・神戸-大分往復1万円(フェリーさんふらわあ、週末)

LCCの新たな路線ができることによって宿泊旅行が中心だった北海道や沖縄、近隣のアジア地域も、近所に行く感覚で旅行する日帰りエリアに一変する。
移動コストの安さなら国内の観光地より、距離的に遠いアジアを選ぶ動きがLCCで加速するという新しい動きも出てくるだろう。

旅行者の消費行動も変えている。安い航空運賃で浮いたお金を節約せずに、ホテルの宿泊や買い物の予算を増やすケースなどが少なくないと、大手航空会社を利用した場合との運賃の差額分を現地での消費に使う傾向が出てきたという。
LCCの登場は、他の交通機関にも影響を与えている。大分~神戸を結ぶ大型フェリー「さんふらわあ」の0泊3日往復一万円(週末限定)の人気を紹介している。それはいわば「弾丸フェリー」。LCCと同程度の安さに加え、寝ているうちに目的地まで運んでくれることで、二泊分の宿泊代を浮かすことができるのが人気の理由だという。

その一方、「安さを武器に年間750万人が利用する高速ツアーバスは、LCCの登場で顧客が流出する路線が出てきた」という。確かに、LCCは今後、高速ツアーバスと競合関係になるのかもしれない

国内外のLCCが競合する時代に
日本の国内旅行を活性化しつつある日本のLCCだが、2013年、エアアジアとANAの提携解消が報道されたように、いくつもの問題が指摘されている。
日本経済新聞は「日本の空、ガラパゴス化?LCC時代世界に広がる航空再編」と題して、海外に比べると日本のLCC旅客の伸びがいまひとつであることを指摘し、その理由をこう述べている。

「日本のLCC旅客の伸びに弾みがつかない理由の一つは空港の制約だ。日本はLCCの育成策を打ち出したのが、航空自由化推進を宣言した09年以降。しかも、羽田空港の発着枠がほとんどLCCに与えられないまま政策が進められた。東京から遠い成田や地方空港だけでは経営は難しい」。
海外に目を転じると、今後もアジアやオセアニアのLCCの日本への乗り入れが加速することが予測されている。


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