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LCCの機内サービスや設備で大手と決定的に違うところのまとめ

1.シンプルに徹したサービス
客室乗務員の数も少なめ
使用する運航機材や飛行の所要時間などには、LCCと在来大手との差がない。短距離路線ではLCCも在来大手もボーイング737シリーズやエアバスA320シリーズが主役として活躍しているし、フライト時間については、例えば関西~クアラルンプールではLCCのエアアジアが6時間45分、在来大手のマレーシア航空が7時間05分と、使用する機材によりLCCのほうが短いケースもある。また新造機を大量発注する傾向のある大手のLCCなどでは、機齢が若い(機材の平均使用年数が新しい)ことが多い。

LCCと在来大手との違いがはっきり表れるのは、運賃と並んで機内のプロダクトとサービスである。一般的にLCCは機内のサービスを必要最小限に抑えることでコストを削減し、低運賃を実現する原資のひとつとしている。

したがって、座席の仕様はシンプルだ。シートビッチは狭いし、リクライニング機能のない場合さえある。より多くの乗客を運べるよう、座席数を可能な限り増やすのが本来のLCCのやり方なのである。機内食はほとんどの場合提供されないし、軽食程度のものが用意される場合も有料で購入するのが一般的だ。飲み物も多くの場合、有料のサービスとなる。さらに、日本未就航の一部の海外LCCを除いて、個人用モニターは設置されていない。

日本発着の一部のLCCは機内エンターテインメントとして携帯型のポータブルメディアプレーヤーを用意しているが、原則としてこれも有料のサービスである。在来大手では無料でサービスされるブランケットや枕などのアメニティも、LCCでは基本的に有料のサービスとなる。

エコノミークラスでもすべて無料で提供される在来大手のサービスに慣れていると、最初は戸惑うかもしれない。またヒューマンサービスにおいても、サービスに定評のある一部の在来大手のようなきめ細かい対応はまず期待できないだろう。 

一般的にLCCは手のかかるミールサービスを提供しないことなどから、1機あたりの客室乗務員の数を最小限に抑えることができる。結果として、一人のクルーが担当する乗客の数が多くなり、安全面以外では手が回らないこともある。とはいえ、在来大手とのサービスの違いを理解していれば、LCCでも気分よく旅することは十分に可能である。

2.必要に応じてサービスを購入
事前予約なら割引されるケースも
安全面以外の運航にかかわるコストをできるだけ削って、低運賃を実現するのがLCCのやり方。多くの場合、機内のサービスもミニマムに抑えられている。

海外旅行の機内の楽しみであるミールサービスも例外ではなく、世界的に見るとほとんどの場合は有料でのサービスとなる。新幹線の車内販売のように、必要に応じて希望者だけが食事や飲み物を購入するのである。 

一般的にはシートポケットにメニューカード(機内誌にメニューを掲載している航空会社もある)が入っていて、写真を見ながらアイテムを選ぶ。機内食といっても、在来大手の長距離路線のようにエコノミークラスでもトレイの上に何種類もの皿が並ぶことはまずなく、パック入りのシンプルなお弁当のような料理が一般的だ。飲み物は、日本発着便ではソフトドリンク中心のラインナップである。

一方、欧米のLCCでは、エアベルリンのようにアルコール類の有料サービスが充実しているところもある。
エアアジアの日本路線の機内食は通常4種類から選べる。在庫があれば機内でも購入できるが、数が限られるので、希望者はオンライン予約の際に申し込むほうが無難だろう。

加えて、同社ではオンラインで事前予約すると、最大で約15%の割引が受けられるメリットもある。ちなみにエアアジアのメニューは路線ごとに原則として2か月単位で入れ替わる。

2012年1月時点の羽田発便では、マレーシア料理、多国籍料理(インターナショナル料理)、ベジタリアン料理、お子さま料理、サンドイッチのオプションがオンライン予約の際に表示され、好みのメニューが選べるようになっていた。サンドイッチ以外の各料理は一律900円で、ペットボトル入りのミネラルウォーター1本は無料でサービスされる。

日本発の多国籍料理では、通常は和食のお弁当が用意される。スナック類やソフトドリンクも品揃えが多めで、アルコール類もビールやワインなどが注文できる。

在来大手ではアルコール類を含めて基本的に何でも無料でサービスされるので、初めてLCCを利用するときは、国際線で飲み物を有料で購入するのに違和感を覚えるかもしれない。だが、乗客の中には大の左党もいれば、体質的にアルコールは一滴も飲めないという人もいる。

考えてみると、必要なサービスを必要な人だけが有料で受けるというLCCのシステムは、リーズナブルではないだろうか。機内食にしても同じで、在来大手のエコノミークラスのように、好き嫌いが少なそうな最大公約数的なメニューを一律に食べさせられるよりは、空港で好みの弁当などを買って機内に持ち込むほうが気がきいている、と感じる旅行フアンは意外に多いかもしれない。

毛布などのアメニティや機内エンターテインメントも、LCCでは一般的に有料のサービスとなる。例えばジェットスター航空は、ブランケットなどをセットしたアメニティキットや機内エンターテインメント用のヘッドセットなどを必要に応じて購入するシステムだ。事前に各社のウェブサイトでサービス内容をチェックし、必要なものだけを事前予約すればいいのである。


3.LCCのシートピッチ
あらゆるアイデアを駆使して運航コスト削減を図るLCC(ローコストキャリア)の多くは、運航する機材を1機種だけに絞っている。そうすることで、パイロットの効率よい運用が可能になるからだ。

また、どれだけ運賃を安くできても「安全面」で不安があっては利用者の支持を得ることはできない。日頃の整備には、どうしてもある程度のコストがかかる。その点、運航する旅客機が1機種に統一されていれば、整備の面でも部品のストックが1種類で済むから無駄を排除できる。

世界のLCCで現在、もっとも多く活用されているのがエアバスA320とボーイング737の2機種である。A320と737はともにベストセラー機で、大手でも短距離路線で使用している例が少なくない。しかし機体は同じでも、中身はまったく別。前述したようにキャビンレイアウトは、運航するエアラインが自由に設計できる。設置する座席数を少なくすれば乗客1人ひとりにゆったりとしたスペースを提供できるし、多くすれば当然、きゅうくつなレイアウトになる。

LCCが選択するのは、もちろん後者のほう。大手に比べるとシートピッチは狭い。1回のフライトにたくさんの乗客を詰めこめば、それだけ利益が上がるからだ。 では、LCCのシートはじっさいにどのくらい狭いのか?

日系の3社(ピーチ・アビエーション、ジェットスタージャパン、バニラエア)が使用するA320のキャビンレイアウトを例に見ていくと、シートは中央の通路をはさんで左右に3席ずつ、横1列を6席でレイアウトしている。

エコノミーのみのモノクラスで、全体のシート数は3社とも180席で共通。大手エアラインの多くが同じA320を160席前後でレイアウトしているので、それに比べるとLCCは1割以上増やしている計算だ。

180席仕様のA320の平均シートピッチは73.66cmで、大手の平均(80cm強)より7センチほど狭い。JALが長距離国際線のボーイング777に導入した最新エコノミークラスシートは86cmもあるので、その差は開くいっぽうである。

もっとも、LCCファンはそんなことはすべて納得済みだ。「大手に比べて運賃がずっと安いのだから、そのくらいは我慢しないとね」と意に介さない。


背もたれが倒れないシート
「背もたれが倒れないシートなんであるわけない」
飛行機に乗る人の多くが、かつてはそう思っていた。だから、アイルランドで誕生しヨーロッパ中にネットワークを拡大したLCC、ライアンエアーを最初に利用したときは、みんな心の底から驚いたに違いない。

フランクフルト郊外のハーン空港からライアンエアー便を利用したときのことだ。何人かの乗客のあとについて、ボーイング737-800の機内に乗りこむ。 追加料金を払って優先搭乗の権利を買った人以外は、どこに座るかは早い者勝ち。座席指定もない。

キャビンに入ると、通路をはさんで3席ずつが並ぶ黄色を基調としたカラフルなシートが目に入った。エコノミーだけのモノクラス設定で、全部で189席が設置されている。

背もたれが本当に倒れないのか、さっそく試してみる。なるほど、シートのどこを探しても、背もたれを倒すためのレバーもボタンも見当たらない。周囲を見わたしてみると、みんなもう知っているからか、リクライニングしようなんて考える人は皆無のようだ。

「リクライニング機能を外したことで収益が上がったよ」と話してくれたのは、乗務していた英国人の男性クルーだ。 「シートの故障は、背もたれの可動部分がイカれるケースが多いんだよ。それを空港でいちいち直していたら、次の出発が遅れて、売り上げに響くからね」

空港で到着してから再度出発するまでのターンアラウンド時間を短縮して機材の稼働率を高めることは、LCCにとってコスト削減のための重要な戦略である。リクライニングできないばかりか、前席の背もたれに設置されているテーブルもすべて外されていた。

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