航空会社といえば、自社の旅客機を飛ばしているというイメージがあるが、なかには北海道国際航空のように飛行機を1機ももたない会社もある。
ではどこから飛行機を調達してきているのだろうか。
それは
リースである。飛行機には、購入費はもちろんのこと、維持費や買い替えなど莫大な経費がかかる。その点、リースなら機材の導入など、初期投資が少なくてすみ、新機への切り替えも容易になるなどメリットが大きいのだ。
2.
リースにはファイナンスリースとオペレーションリースがある。
ファイナンスリースは
航空会社の代わりに飛行機を購入し、リースする。その期間にリース会社は航空会社から購入代金や手数料などを回収する。
機材は航空会社の希望する仕様のものだが、そこだけのためにつくられた機材だから途中解約はできない。航空会社は結局、航空機導入と同じ金額を払うことになり、手数料などのぶんだけ割高にもなる。ただし、ローン支払いと同じで、支払い条件などを柔軟にできるメリットがある。
これに対して1980年代から台頭したオペレーションリースは、いわば
リース会社がもつ機材を一定期間だけ借りる方式だ。たとえば、ピークシーズンだけなど、必要なときに利用できるので便利だ。リース会社も旅客機1機を使い回すことができるので効率がいい。ただし受注製造のファイナンスリースと違い、借り手がない場合は、高い機材が眠ったままになってしまう。
さらに他社から機体のみ借りるドライリースや、乗務員もともに借りるウェットリースなどもある。飛行機を乗り物としてではなく、金融商品として扱ったこの航空業界のリースは1980年代以降にはじまるとともに注目を集め、現在も広がりつつある。
一機で数百億円にも達する旅客機を自費で購入するのは、航空会社には大きな負担です。新機材への更新も大変になるため、
多くの航空会社はリースによる旅客機の調達を行っています。
航空材メーカーの意外なお得意様
エアバス社のホームページでは同社の最新受注状況を確認できます。09年時点での累計受注上位を見ると、5位から3位は著名な航空会社ですが、2位のGECASと1位のILFCは、あまり聞きなれない名前です。ボーイング社の09年の納入状況でも、この両社は2位と5位に入っており、二大航空機メーカーのどちらにもお得意様であることがわかります。実はこの両社、
航空機リースの世界的な大手で、納入された航空機は世界中の航空会社に貸し出され、各社のカラーで飛び回っているのです。
リースとは、企業が高額の設備などを導入する際、直接購入する代わりに、リース会社から一定期間借り受け、期間に応じて設定されたリース料を支払う仕組みです。いわゆるレンタルと大きく異なるのは、レンタル物件はレンタル会社がすでに購入済みであるのに対し、リース物件は顧客企業からの要望で購入することと、リースは契約で定めた期間中の解約が原則的にできないことです。リース期間もレンタルより長く、通常3年~10年程度ですが、月額料金はレンタルよりも安くなります。
オペレーティングリースが主流に
一般的なリースは、リース期間満了時に残価が残らないファイナンスリースです。日本では従来、資産計上の必要がありませんでしたが、会計基準の改正で08年以降は資産計上が必要になり、会計上の有益性が薄れました。これに対し、期間満了時に残価が残るオペレーティングリースは、従来通り賃貸借処理となるうえ、リース料を安く、リース期間も短く設定できるので、
航空会社は機材の更新を進めやすいメリットがあり、現在は主流になっています。
リースは現在、旅客機の調達に広く使われており、例えば、09年時点での日本航空の運用機材279機のうち113機が、全日空の同210機のうち71機がリースで、スカイマークやエア・ドゥなどの新興航空会社では全機材がリース調達です。
また、航空業界では、リース会社でなく、ほかの航空会社から機材を賃貸するケースもあります。この場合は、リース会社同様、
機体のみを貸し出す形態をドライリース、機体に加えて運航乗務員、客室乗務員まで貸し出し、相手の便名で運航する形態をウェットリースといいます。日本では、日本航空や全国空のグループ会社の一部で行われている程度ですが、
チャーター運航の多い欧米では、機体、乗務員、整備、保険(ACMI)まで含めたウェットリースを主事業とする航空会社もあります。
エアバス社の累計受注数(2009年9月現在)
1位ILFC 629機
2位GECAS 287
3位ルフトハンザ 275
4位USエアウェイズ 271
5位イージージェット 227
ボーイング社の2009年納入数(10月まで)
1位ライアンエア 46機
2位GECAS 28
3位アメリカン航空 23
4位デルタ航空 19
5位ILFC 16
この記事を見た人は、一緒にこんな記事も読んでいます!