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飛行機が離陸して上昇から下降して着陸するまでの流れを詳しく解説


飛行機が離陸して上昇から下降して着陸するまでの流れを詳しく解説
1.離陸
離陸に必要な滑走離陸に必要な滑走
ヘリコプターや垂直離着陸機以外の航空機は、空中に浮かぶために滑走路上を滑走する必要がある。主翼が揚力を発生するためには、主翼にあたる空気流が必要で、そのためには機体を加速させなければならない。プロペラ機では、プロペラの後流が主翼にあたることにより一部揚力効果が生じるが、ジェット機では、そのような効果はないので、浮揚可能な最低速度以上に機体を加速させる必要がある。

離陸のルール
航空会社で広く使用されているジェット旅客機では、安全性を確保するために離陸の手順に関していろいろなルールが定められている。エンジンが2基以上ある多発機では、離陸時にそのうちの1基が故障して推力がなくなることを前提として離陸性能が設定されている。

まず離陸しようとする機体の重量や外気条件(気温、気圧や風向風速)からV1と呼ばれる離陸中止速度が決められる。滑走路末端からエンジンを離陸出力にセットし、離陸滑走を開始してV1に達する前にエンジンが故障した場合には、直ちにエンジンを切って車輸ブレーキをフルに踏んで離陸滑走を中止する。

また、V1を過ぎてエンジンが故障した場合にはそのまま離陸滑走を継続してVRと呼ばれるローテーション速度で操縦梓を引いて浮揚した後、必要な処置を講ずる手順となっている。もちろん、実際にはエンジンが故障しないケースがほとんどであり、この場合もVRと呼ばれるローテーション速度で操縦梓を引いて主翼の迎え角を大きくすることにより、揚力の急激な増大が発生して機体が地面を離れる。

地面を離れた飛行機は、加速してV2と呼ばれる離陸安全速度に達する。エンジンが1基故障して離陸を継続した場合でも、滑走路の端では最低高度35ft(10.5m) が確保されており、その時の速度もV2以上なので、安全は十分確保されている。 ある重量の旅客機が離陸するために必要な滑走路の長さは、以下の3つの場合の最も長いものになる。

①すべてのエンジンが作動して離陸し、高度が35ftに達する水平距離の115%。
②加速中エンジンが故障してV1で、離陸を中止し、停止するまでの加速停止距離。
③エンジンが故障しでも離陸を継続し、高度35ftに達するまでの水平距離。
通常は②と③が同じになるようV1を選んでいるが、滑走路の条件によっては同じ距離にならない場合もある。

2.上昇
3種類の上昇方法
無事に飛行場を離陸した旅客機は脚を引き込んで、抵抗を減らし、高度をとってぐんぐん上昇していく。通常の運航では飛行場周辺の騒音をできるだけ少なくするために高度が1500ft(450m)に達するとエンジンを離陸出力から上昇出力に減らし、速度もV2プラス10kt(時速18.5km)を維持することにより、できるだけ早く高度をとれるような手順を設定している。

空港の近くに住宅地などがある場合は、その地域の上を通過する場合にエンジン出力をカットするカットバック方式と呼ばれる運航方式をとることもある。 あらかじめ飛行計画で決めた巡航高度まで上昇するが、上昇方式には次の3種類がある。

①上昇率すなわち単位時間に上昇できる高度が最大になるよう上昇する方式。
②上昇勾配すなわち一定水平距離を進む間に上昇できる高度の割合(%であらわす)が最大となるよう上昇する方式。
③一定の指示対気速度で上昇する方式。
上昇勾配は余剰推力(利用可能な推力と機体の抵抗の差)によって変化し、余剰推力が最大の時に最大上昇勾配(角度)が得られる。最大上昇勾配が得られる速度が最大上昇勾配速度で、この速度で上昇すれば、最大上昇勾配(角度)で上昇できる。

上昇限界
上昇率は、余剰推力と飛行速度との積により変化し、余剰推力を生みだす余剰馬力は上昇率と正比例する。余剰馬力は飛行する速度によって変化するが、ある飛行速度で余剰馬力が最大になり、この時に最大の上昇率が得られる。この速度は最良上昇率速度と呼ばれ、効率よく短時間のうちに高度を得たい場合に用いられる。

高度を上げれば上げるほど空気は薄くなる。それにともない空気抵抗も減ってくるから燃費が上昇する。よって旅客機はいち早く上空へと達するように、上昇速度としては前述の最良上昇率速度が選ばれる。

比較的短距離で低高度までしか上昇しない場合には、飛行時間そのものを短縮するために、最良上昇率速度よりもっと速い速度を上昇速度に選ぶことがある。 飛行機が上昇可能な高度の限界を上昇限度と呼ぶ。この高度は理論的には上昇率がゼロとなる高度であるが、運用上は上昇率が毎分100ft (30m) になる高度を実用上昇限度としている。

3.降下
2種類ある降下方式
目的地が近づくと飛行もそろそろ終わりだ。重量が軽くなるにしたがって高度を上げたが、今度は、空港に進入する高度まで降下しなければならない。 降下には高速降下方式と低速降下方式の2種類がある。前者は燃料消費より時間短縮に重点を置く場合に使用されるが、降下する空域に乱気流があると乗客の快適性や機体に負荷がかかる恐れがあるので使用できない。また着陸する空港周辺空域の混雑状態によっては航空交通管制上の理由で許可されないこともある。

後者は時間がかかるが燃料消費は少なく、また乱気流があっても速度が遅いので乗客への影響が少なく、機体にも大きな負荷がかからない。最も燃料消費が少ないのはエンジンをアイドリング状態のまま降下を続けられる場合であるが、空港周辺の他機の交通の関係で、一時的に水平飛行するためにエンジンのパワーを出したり、直線飛行ではなく大きく迂回するようなケースもある。

ジェット機は、低空で大きな出力を出して飛行する時の燃料消費が最も大きくなる。したがって最も効率がよく降下するには、エンジンをアイドリング状態のまま連続的に空港まで降下できるよう、高度と速度を計画する必要がある。

空中待機は空の渋滞
予定どおり空港上空に到着しでも、出発機や到着機が多い場合には順番待ちをしなければならない場合がある。このような時は空港周辺の空域で、ホールディングと呼ばれる空中待機を余儀なくされることがある。

通常ホールディングはレーストラック・パターンと呼ばれる競馬場のトラックのような経路をぐるぐる旋回することになる。同じ空域では、高度を変えて他の航空機が同方向に旋回してホールディングしている。到着寸前の航空機は残り燃料も少ないので、ホールディングでは極力燃料消費が少なくなるような運航が求められる。ジェット機では、あまり低速で飛行すると安定性に影響が出るので、飛行速度は失速速度にマージンを加えた速度を使用している。

高高度を飛行中に与圧装置が故障したり、機体に穴が開いたりした場合はできるだけ短い時間に低高度まで降下しないと乗客の安全が確保できない。このような場合の降下を緊急降下またはエマージェンシー・ディセントと呼ぶ。緊急降下ではエンジンをアイドリング状態にし、スピードブレーキを開いて最大降下率が得られるような操作を行う。


4.進入・着陸
進入
進入とは、最終進入高度から飛行場の滑走路端末の高度50ft (15m) までの飛行段階のこと。 計器飛行方式による進入を計器進入、肉眼による目視に頼って進入するのを目視進入または視認進入と呼ぶ。さらに計器進入は、コースとパスなどの情報を得ながら一定の降下角で、接地点をめざして進入する精密進入と、方位や位置などの水平方向の情報のみを計器から得る非精密進入に分けられる。

精密進入は計器着陸システム(ILS:Instrument Landing System)を使用して、滑走路中心からの左右のズレと降下経路の上下のズレに関する情報を計器で得ながら進入する。

非精密進入では、これに対してVORやDMEなどの航空保安無線施設から方位や位置の情報のみを計器で得ながら進入し、高度の情報はもっぱら気圧高度計から得る点が精密進入と異なる。したがって一定の降下角ではなく、階段状の降下経路にならざるを得ない。

着陸
着陸は機体の脚をおろし、フラップも着陸用のセッティングにした状態で2.5-3度の進入角度で飛行する。滑走路の末端での速度は性能計算上の前提では、着陸形態の失速速度の1.3倍である。 飛行機は着地寸前で機首を引き起こし、降下率を減少させる。この操作をフレアと呼ぶ。このフレア操作により車輪の接地速度は失速速度の1.25倍程度、降下率も1-2ft/sec程度になる。

着陸距離は滑走路末端を通過してから機体が完全に停止するまでの水平距離であるが、計算にエンジンの逆噴射による効果は加味しない。実際には逆噴射装置を使用するので、その分は安全マージンということになる。車輪ブレーキ、スポイラによる減速効果はもちろん計算に入れられる。雨の中の着陸は路面が滑りやすくなり、ブレーキのアンチスキッド装置の効果が大きく影響をおよぼす。

着陸距離と混用しやすいのが着陸滑走路長で、着陸する場合に実際の滑走路の長さは、この着陸滑走路長以上あることが法的に要求される。着陸滑走路長は、乾燥滑走路では着陸距離の1.67倍、湿潤滑走路では1.92倍に相当し、0.67倍または0.92倍は路面状況やパイロットの操作のばらつきなどに対する安全マージンと考えることができる。
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