目次

航空自由化でも日本の航空運賃が世界的に比較して高い理由

1.アメリカから広まった「航空自由化」の波
日本の航空運賃は高い
オープンスカイポリシーとは、国際線の運航に関わる従来のさまざまな規制を取り払って、自由な競争環境を生み出そうとする政策です。国内線とは違い、国際線の場合には、お互いの国の主権の問題が関わってきます。そのため、これまではさまざまなルール・規制が設定されてきました。

たとえば、主権対等の原則に基づいて、「それぞれの国の航空会社は同じだけの輸送を行うこと」「乗り入れ航空会社についても、数が平等になるように指定すること」といった具合です。

こうしたルールは、戦後の国際航空体制のあり方について話し合った1944年のシカゴ会議の内容を受けて成立しました。いわゆるシカゴ協定です。シカゴ協定の背景には、当時の国際線市場の状況があります。圧倒的な競争力を持った米国の航空会社に国際線市場を席巻されることを恐れたヨーロッパ側の航空会社各社が、その圧力を封じようとしたのです。

しかし、1970年代になると、米国がそれまでの「大きな政府」の方針を転換します。大胆に規制を撤廃し、自由化を進め、企業の国際競争力の向上に努めるようになりました。航空分野では、1978年に国内線を自由化、そして1980年には国際線を自由化し、他国に同様の政策をとるよう圧力をかけ始めました。

これに同調したのが、オランダやシンガポールのような国々でした。いずれの国も国土面積が狭く、国際市場でもうけなければ、生き残っていけないため、国際線を積極的に展開していく必要がありました。こうして米国とオランダ、米国とシンガポールの間に、自由化された航空協定がいち早く結ばれました。

いったん突破口が開けると、そこからなし崩し的に自由化の波が広がっていきました。自由化された路線の運賃が急激に下がっていったため、自由化を受け入れざるを得ない状況が世界中にできあがっていったのです。


2.なぜ日本の航空券は高い?世界的に見ても高い日本の航空券
日本の航空会社の運賃は、総体的な物価水準の高さを考慮しても、諸外国に対して割高であると思われます。もちろん理由の1つは航空会社自身にもあります。

また、航空会社と旅行代理店との関係もあります。旅行代理店に販売手数料を支払わなければならないため、航空券の価格が高めに設定されるからです。グローバルに見れば、近年のIT化の進展により、販売手数料はかなり削減、あるいは廃止されてきていますが、日本ではまだまだ思い切った削減段階にまでいっていないのが現実です。

こういった事情があるものの、日本の航空運賃の高さは、むしろ政策的な理由によるところが大きいのが現実です。ここでは2つの政策的観点から、日本の航空運賃の高さについて見ていきましょう。

日本の航空運賃が高い理由① 公租公課
まずは、公租公課、つまり、航空会社が政府に納める税金が、航空券の価格に含まれているため、日本の航空運賃が高くなっているということがあります。
公租公課にあたるのは、主に空港使用料や航空機燃料税などです。このうち、空港使用料に含まれる着陸料は、国際水準の約2~3倍であり、航空会社にとっては大きな負担になっています。そして、これは他の財源とともに、社会資本整備事業特別会計の空港整備勘定に繰り入れられます。全国の空港の建設や維持・整備などに使われる予算です。

日本の航空運賃が高い理由② 公益性の維持負担
次に、公益性が高いものの採算がとれない路線などを維持する責任が、政府自身によって担われるのではなく、民間の航空会社に委ねられていることが挙げられます。
離島路線に対しては離島航空路線運航補助金という制度があって、その運航に対しては一定の援助がなされますが、それでも制約はあります。公益性の高い路線に対しては補助金がきちんと支払われている欧米諸国とは対照的です。


3.割引運賃の種類豊富な国内運賃
運輸省(当時)の規制と保護政策のもと「認可制」の時代が長かった国内線の航空運賃だが、1990年半ばから順次、規制緩和がスタート。2000年2月には航空法改正に伴い、認可制から原則として航空会社が自由に運賃設定や変更のできる「事前届け出制」へ移行。多様な運賃が相次いで登場した。

国内線の運賃を大別すると、「普通運賃」と「割引運賃」の2種類がある。普通運賃は、大人ひとりあたりの片道運賃のこと。当日でも予約可能で、予約変更も自由にできるなど利用上の制約がほとんどなく、ビジネスマンの利用が多い。ただし、自由度が高い分、料金はかなり高めの設定だ。

「割引運賃」は実に多様だが、いくつかのタイプに分けられる。まず、同一区間の往復に利用できるのが「往復割引」。普通運賃と同様にほとんど制約はないが割引率は小さい。料金が割安で比較的使い勝手もいいのは、特定の便を対象にした「特定便割引」。

国内線運賃の制度
運賃制度の変遷
かつてはきわめて一律的な設定がなされていた国内線運賃は、1995年に割引率50%までの営業割引運賃が認可制から届出制へと変わったことに伴い、早期購入型割引運賃が導入された。1996年に上限から25%以内の幅であれば自由に普通運賃の設定ができる幅運賃制度が導入され、2000年の航空法改正に伴い認可制から届出制に移行したことにより運賃は完全自由化され、その後パーゲン型割引運賃などさまざまなタイプの割引運賃が登場した。

運賃の分類
国内線では異なる市場セグメントに対応するプライシングを実現するために、運賃を以下のようにカスタマイズしている。

①事前購入割引型運賃
航空券を搭乗日より早期に購入することを条件として設定する割安な運賃。
価格弾力性の大きい顧客に適しているが、予約変更ができない、搭乗できない期間がある、利用できる座席数が制限されているなど制約のある場合が多い。

②予約便の変更が可能な運賃
予約便の変更が可能であるため旅程の変動が大きい顧客に適している運賃。
搭乗期間や利用座席数などに制限のない場合が多い。

③年齢限定型運賃
満65歳以上、満12歳以上22歳未満、満3歳以上12歳未満など特定の年齢の顧客を対象とした運賃。事前予約ができない、搭乗できない期間があるなど制約のある場合が多い。

④路線限定型運賃
主として特定された地域・路線の利便性維持・向上を目的として設定した路線限定型の運賃である。

⑤特定顧客にのみ適用する運賃
身体障害者や介護者を対象にした運賃、あるいはマイレージ会員の特典航空券使用者に同行する顧客にのみ適用される運賃などである。

⑤旅行代理店や企業に提供する運賃
旅行代理店に対し包括旅行や団体斡旋を目的として設定する却売運賃で、割安な運賃設定となっている場合が多い。また、多頻度で航空便を利用する企業に対しては回数券型航空券などの提供により利便性を高めている。


国内線運賃の特徴
国内線運賃は特定の年齢、特定の地域・路線、特定顧客などに限定した運賃を除くと、事前購入割引型運賃とそうでない運賃とに大別される。前者は包括旅行運賃とともに価格感度の高い顧客に対し低価格を武器に潜在需要の掘り起こし競合機関との比較優位を確保する手段になっているほか、早期の航空券販売による収入確定にも一役買っている。

ただし運賃の制度設計に関しては路線や便の選択に制限を設けたり、搭乗時刻以前の取消手数料を設定したり、本来なら価格弾力性の高くない顧客が割安な運賃を利用するのを防ぐ「フェンス」を設けている。同一路線の往復利用、同一人の複数回利用、事前購入、取消手数料などフェンスの種類は多様である。

特に事前購入型割引運賃は、路線ごとに価格が一律である運賃(路線運賃)と、同一路線でも便ごとに価格が異なる運賃(便運賃)とに分類できる。路線運賃は便ごとの需要の多寡にもっぱら配分座席数の調節で対応するのに対し便運賃は高需要使の価格を高く、低需要便は安く設定して、便ごとの需要の平準化とそれによる座席提供機会の拡大を図ろうとするものである。このように割引運賃は、営業戦略上の大きな武器になっていることから、航空会社が固有の名称をつけることにより商品・サービスを差別化し顧客への訴求力を高めていることが特徴的である。

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