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空港の展望デッキはフェンスで囲われたり眺望スタイルがそれぞれ

1.展望デッキも空港ごとに様々な工夫がされている
最近、日本の空港は、鉄道の「駅ビル」のような発想を取り入れるようになった。従来、空港には、あくまで航空機利用者を対象にした施設しかなかった。

それが変わるきっかけになったのが1993年に完成した羽田空港の新ターミナル「ビッグバード」であった。「空港へ遊びに」「空港へ買い物に」といったことを想定してテナントを充実させ、展望デッキはデートスポットに、結婚式場も備えるなど、それまでの空港のイメージを大きく変えた。1994年開港の関西空港でも、4階建てのターミナルビルのうち、3階は商業施設ばかりのフロアとなっている。

2005年開港のセントレアこと中部国際空港でも、こういった発想は積極的に取り入れられた。商業施設のあるフロアは、左右対称のスタイルを活かし、右半分は和風、左半分は洋風をモチーフにしたテナントが入っている。和風のエリアには飛行機を眺めながら湯に浸かれるという入浴施設もあるほか、ターミナルビルが最も滑走路寄りに突き出した部分には結婚式もできるイベントホールがあるなど、空港のスタイルも大きく変わった。

また中部空港は、伊勢湾側に沈む夕陽が眺められる広い展望デッキも自慢のひとつだが、展望デッキのスタイルにも特徴がある。保安上フェンスが張られているのだが、そのフェンスはいわゆる金網ではなく、横方向のワイヤーのみが、まるでギターか琴の弦のように弱い張力で張られている。

そのためフェンスがあるわりには眺望がいいほか、飛行機撮影をするとき、カメラのレンズをワイヤーの外に出すことができる。もちろん撮影のことを考えるとフェンスなどないにこしたことはないのだが、フェンス越しとしては撮影しやすいスタイルである。しかし中部空港が完成し、開港前に行われた記者公開では、このフェンスはなかった。

ところが警察からの要請があり、保安上の理由でこのフェンスが追加されたのだ。せっかくの眺望を台なしにしないようにと考えられた結果が横方向のワイヤーになったという経緯がある。ちなみにフェンスが設けられているのは全国的傾向で、それまで眺望をさえぎるものが何もなかった展望デッキを、フェンスで覆ってしまうという味気ない空港が増えている。

秋田、福島、羽田、小松、岡山、高知、鹿児島、那覇空港などの展望デッキがフェンスで囲われてしまった。秋田空港では立派な杉林が、鹿児島空港では霧島連峰の山々を、那覇空港では東シナ海をバックに飛行機撮影ができただけに残念である。

このほか成田空港では当初から展望デッキにはフェンスが張られていたが、ところどころフェンスの網目が大きくなっていて、そこからカメラのレンズを出して撮影できるよう便宜が図られた。羽田空港をはじめ、地方空港でもこのようなスタイルにする空港もあるが、カメラのレンズをかろうじて出せるくらいの大きさの穴で、カメラを振ることはできないし、決まったアングルの写真しか撮ることができない。

それに人間が烏籠に入っているようであまり気分のいいものではない。しかしこのような便宜が図られている空港はまだ救われているほうで、秋田空港や高知空港などはその穴すらなく、展望デッキはなきに等しい状態、鹿児島空港もフェンスで覆い、写真撮影用にはガラスの衝立が用意されているが、手前のものが反射してしまい、少なくとも航空ファンには鹿児島空港の展望デッキもなきに等しいものになってしまった。

おそらくレンズを出す穴を考えたり、ガラスの衝立を考案したりした人は、失礼ながら写真を撮る楽しみは持ち合わせていないと思われる。何といってもデリカシーのなさのようなものを感じる。こう考えると、最初に述べた中部空港の施設は、保安と眺望の妥協案のようなスタイルといえ、フェンスはないにこしたことはないのだが、保安上設けなければならないのであれば、この中部方式を採用してほしいものである。

2. それでは海外の空港にある展望デッキはどうなっているだろうか。海外では展望デッキそのものが少ないが、ドイツ、スイス、オランダなどのものが優れている。中でも日本からも直行便があるチューリッヒ・クローテン空港の展望デッキが航空ファンには世界的に有名である。

もちろんフェンスなどはないが、それでは保安面はどうなっているかというと、展望デッキは有料で、入口では、航空機に乗るとき同様の荷物検査や金属探知機を使った身体検査が行われる。検査の係員をおき、人手をかけてまでこういったことを行っているのは立派だと思う。

日本の地方空港では、保安ということから単にフェンスで覆ってしまい、入場時はコインを入れてバーを押して入る。そして不正を行わないよう、監視カメラだけ設置しておく。こういった温かみのようなものを感じない空港のやり方はあまりに安易に思えてならない。

チューリッヒの空港では、空港内を見学するバスツアーも行われていて好評である。途中、滑走路脇でバスを下車、力強いテイクオフを眼前で楽しむことができる。こんな体験ができるのは世界でもここだけといえる。毎年天候の安定する夏になると、飛行機の写真を撮るために、遠く海外から航空ファンが多く訪れる。航空ファンにとっては立派な観光スポットだ。


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