航空機の事故は、離陸後の3分間と着陸前の8分間に集中しており、「魔の11分間」といわれています。
原因としては、ダウンバーストなどの突然の環境変化や人為的ミスにあると考えられています。
離着陸はパイロットにもストレス
「クリティカル・イレブン・ミニッツ」という航空業界の慣例用語の日本語訳が「魔の11分間」です。
この言葉が表すように、
世界中の航空機事故の約7割が、離陸後の3分間と着陸前の8分間に集中していることから、離着陸時の危険度の高さを表現する言葉として用いられています。理由はいろいろと考えられますが、離着陸時は自動操縦ではなくパイロットが手動操縦していることも、その要因といえるでしょう。離着陸時の際、パイロットには、操縦以外にチェックシートに基づいた様々な作業が義務付けられています。また、計器やエンジンチェックとは別に、離着陸の指示を仰ぐために管制官との交信も頻繁に行う必要があり、この作業に忙殺されることで、緊張度が高まるともいわれています。
このようなストレス状態を維持しながらの作業が続くわけですから、人為的なミスの発生率も高くなり、パイロットとしては最も注意が必要な時間です。
では、離陸と着陸ではどちらが難しいのでしょうか。
操縦技術の面では、安全に高度をゼロにする着陸だそうですが、総合的に考えると離陸が難しいといわれます。その大きな要因は、離陸時は航空機が持ち得る最大のパワーを出し切っている状態が続くことにあります。つまり、航空機にとって余裕がない状態であり、トラブルに対しても瞬時の判断が事故の大きさを大きく左右します。
したがって、離陸の取りやめは最大パワーから急激に低下させることになり、オーバーランを引き起こしやすいといわれています。
ダウンバーストの発見者は日本人
離陸時と比べて着陸時は、徐々にパワーダウンさせていくので、航空機にパワーの面で余裕があります。
このため、着陸のやり直しが必要な場合でも、急激なパワーアップに対応できます。
しかし、怖いのは空港近辺で発生するダウンバーストと呼ばれる強力な下降気流です。高度を下げてきた航空機に対してこの下降気流が作用すると、空気のかたまりを押し付けられたようになり、急激な落下に巻き込まれて、墜落の可能性もあります。
現在は、ダウンバーストを観測するため、空港にはドップラー・レーダーが設置されていますので、従来に比べれば危険性は低くなったといえるでしょう。
実はこのダウンバーストをはじめて発見したのは、竜巻研究の第一人者で、竜巻の大きさを表す「Fスケール」でも有名な気象学者の藤田哲也博士です。
現代の航空機は、「電子機器のかたまり」といっても過言ではないほどデジタル化されています。そのため、機内に持ち込まれた機器から発生する電磁波が、航法機器などに影響を与える可能性があります。
過去に実際にあった事例として
・衝突防止装置の回避指示が発生
・自動操縦で上昇中に急に25度傾斜(バンク)
・待機中に400フィートの高度逸脱
・オートパイロットで進入中のコース表示の乱れ
・無線機がノイズで交信不能
・降下中に送信機が機能不全
などのトラブルが航空会社から報告されています。特に、離着陸前後のいわゆる「クリティカル・イレブン・ミニッツ」と呼ばれる時間帯は、パイロットは管制官と頻繁に交信を行いながら操縦に全集中力を注がなければならないので、モニター画面の異常表示や、機体の想定外の挙動、通信機器の機能不全などは重大なトラブルにつながる危険があります。このため、航空機内における電子機器の利用は、厳しく制限されています。
航空機に影響を与える電子機器の代表といえば、携帯電話です。トラブルの原因を厳密に特定するのは困難ですが、上に挙げた実例もすべて携帯電話が原因と推定されています。最近では、「携帯電話を機内で使ってはいけない」というルールも一般常識になってきていますが、日本を含む多くの国では、「駐機中でも携帯電話は禁止」と再認識すべきでしょう。
日本の場合、機内で使用してはいけない電子機器は、航空法によって「常時使用できない機器」と「離着陸時に使用できない機器」に分類されています。常時使用できない機器に分類されているのは、携帯電話やPHSのほか、無線通信機能を持つパソコン/携帯情報端末/ゲーム機、ワイヤレスヘッドホンなどで、デジカメ、ビデオカメラ、無線通信機能を持たないパソコン/携帯情報端末/ゲーム機などは、離着陸時以外は使用することができます。もし、これらの機器を規則に違反して使い続けた場合は、50万円以下の罰金が科せられることがあります。ただし、これはあくまで罰金です。万―、航空機が大幅に遅れたり、引き返したりする原因となってしまったら、航空会社から桁違いの損害賠償請求をされても文句は言えません。
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