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航空会社の仕事を部門別にわかりやすく解説

1.航空業界の仕事は多種多様
航空会社の仕事を詳しく解説
「玄関口」空港での職種
航空会社の仕事というと、まずパイロットやフライトアテンダント(客室乗務員)をイメージする人が多いはずだ。確かにパイロットやフライトアテンダントはある意味で業界の花形だし、学生の人気も依然として高い。だが、航空会社にはほかにもさまざまな部門があり、そこには多種多様な職種が用意されている。
そこで、それぞれの仕事内容を見る前に、航空会社の組織について見ておこう。

一般的に航空会社の組織は、運航部門、整備部門、運送部門、営業部門などの部門に分けることができる。それぞれの部門の下には多数の関連部署が置かれている。
各部門の役割を簡単に見ていこう。

「運航部門」はその名のとおり、飛行機の安全運航を担当する部門。パイロットが所属する乗員部もこの部門に属する。また航空管制官、航空管制通信官、航空管制技術官などの公務員もここに含まれる。

「整備部門」は文字どおり機体の整備、点検などを担当する部署。管理、技術、品質保証などの部署がここに属する。活躍の舞台は空港の機体工場や整備工場などである。ここまでの二部門は航空機運航のハード面に関わる部門である。

「運送部門」は運航のソフト面に関わる部門。旅客輸送、貨物輸送のサービス全般に関する業務を取り扱う。客室乗務員のスケジュール管理や教育訓練などを担当する客室乗員部もこの部門に属する。各空港支店もここに含まれる。

「営業部門」とは、商品として航空券を販売する部門。国内旅客部、同貨物部、国際旅客部、同貨物部などに加えて、管理部、企画部などの本社機能が結集されている。海外や国内各地の支店、営業所の営業部門もここに統括される。

ただし、実際の組織構成は各社ごとに異なり、たとえば全日空では、オペレーション統括本部、営業推進本部、客室本部、運航本部、貨物本部、整備本部の六つの本部がある。また、昨今の経営環境の変化を受けて、他産業と同様に組織のスリム化や子会社化によるコスト削減等が進められており、組織構成は流動的だ。


2.ライン(運航)部門の仕事
次に航空会社の組織のなかでどんな業務が行われているのかをそれぞれの職種別(ライン、技術・専門職、スタッフ、その他)に見ていこう。

まず、運航という航空会社本来の活動を担うのがライン部門だ。ライン部門の仕事には「営業・販売」「予約業務」「カウンター業務」などがある。

営業・販売
「営業・販売」は航空券を旅行会社や企業・団体等へ販売する仕事である。旅行会社に対する営業を担当する部門と、企業に対する営業を担当する部門に分かれているのが一般的だ。旅行会社相手の営業は、パッケージツアー用の航空券の却売価格の交渉などが主な仕事である。企業相手の営業は、主にファーストクラスやビジネスクラスなど上級クラスのチケットを販売する。顧客である旅行会社、企業のニーズの分析、それにきめ細かく対応できるマーケティング能力などが求められる。

予約業務
「予約業務」には航空座席の予約と航空券の発券業務などが含まれる。本社や各支店での電話対応が中心だが、基本的に個人予約と団体予約に大別される。各種サービスの案内やマイレージプログラムの問い合わせなどに対応する場合もある。

カウンター(グランドスタッフ)業務
「カウンター(グランドスタッフ)業務」は、空港内で搭乗手続きから旅客の誘導、デスクワークまで多岐にわたる業務を担当。旅客とじかに接するため、旅客ハンドリング業務とも呼ばれる。主な業務内容は、チェックインカウンターでの旅客の搭乗手続き、搭乗ゲート業務(搭乗券の確認や半券回収、旅客誘導などで到着客・乗り継ぎ客の誘導、空港での発券業務やラウンジサービスなど。コミュニケーション能力や対人適性などが求められる業務だ。ただ、近年は航空会社が設立したカウンター業務専門の関連会社が、カウンター業務を代行するのが一般的である。

空港支店業務
「空港支店業務」は、自社の航空機の発着に関わるさまざまな業務を担当する。機内食を調理するケイタリング会社をはじめ、その支店に出入りする関係会社や業者など、幅広い取引先と接するので、空港業務全般を見る眼が養われる。

海外支店業務
航空機の発着に関するさまざまな業務に加えて、海外支屈を運営するうえでの人事、財務、営業など、現地の業務遂行に必要なすべての仕事が含まれる。


3.スタッフ部門の仕事
経営企画
「経営企画」の業務は、市場の動きを調査・分析し、旅客ニーズに応じた運賃やサービスを提供し、自社の営業戦略を推進すること。販売促進、宣伝といった「営業企画」的な業務が含まれる場合もある。これらの業務を「マーケティング」部門として独立させている航空会社もある。新規就航や増便など路線の問題の調査・検討、航空運賃の問題、航空交渉に関わる問題など、国際的な業務も担当する。

広報
「広報」は自社の施策や路線開設、新サービスの導入といったニュースを、マスコミや一般向けに報道する。航空会社に関するニュースは毎日のようにマスコミに取り上げられているが、これらの多くは広報から発信される。広報は大卒総合職が配属される職場のなかでも人気の高いセクションだ。一見華やかな印象だが、業務は意外と地味で、対外的にも非常に神経を使う仕事である。

宣伝
「宣伝」はテレビや雑誌、新聞などさまざまな媒体を通して、自社のイメージづくりを行い、集客に結び付けるのが役目。人気タレントを起用した宣伝活動が繰り広げられることも多いが、これらを企画し、広告会社のスタッフと共同で進めるのが宣伝の役割だ。周囲からは華やかに見られがちだが、実際は限られた予算と時間のなかで手間のかかる地道な作業が求められる、裏方的な存在でもある。

機材調達
「機材調達」はいわば航空会社の生産設備や生産手段のコーディネーター。ボーイング777シリーズなどの大型機は、1機約200億円するともいわれる。機材調達の担当者が航空機メーカーと交渉を行い、細かな機器の性能まで充分なチェックを行って初めて、機材は自社の所有となる。加えて、商社からリース方式によって機材を調達することも一般的。

ディスパッチャー
「ディスパッチャー」は運航管理者ともいわれ、航空機の安全運航を地上からサポートするのが仕事。具体的な仕事内容は、フライトプランと呼ばれる飛行計画書を各便ごとに作成し、パイロットに提供することである。
ディスパッチャーになるには、総合職として航空会社へ入社することが前提だ。
まず運航業務部門へ配属され、経験を積みながら国家試験に合格し、さらに社内審査に合格すると、晴れてディスパッチャーになれる。


4.技術・専門職部門の仕事
業界のプロフェッショナルの代表といえば技術・専門職。職種はパイロット、客室乗務員、メカニックなどバラエティに富む。

パイロット
航空機を操縦することが仕事だった「パイロット」も、機材のハイテク化により、近頃はシステムオペレーターとしての役割が大きくなっている。航空機の複雑なコンピュータシステムを操作・チェックすることが主な仕事になっているのだ。もっとも、これでパイロットに就きやすくなったわけでは決してない。パイロットにはその高度なコンピュータシステムを理解し、細心の注意を払いながら安全運航を行う能力と適性、そして強い責任感が不可欠だからだ。
一般的に日本で定期航空会社のパイロットになるには、航空大学校を卒業して就職する方法、大学や専門学校卒業後に航空会社が独自に採用する自社養成パイロットに応募する方法、大学で資格を取り航空会社に就職する方法などがある。また、定期航空会社のほかにもコミューター等の不定期航空会社のパイロット、報道機関やビジネスジェット、あるいは官公庁などのパイロットになる手もある。

客室乗務員
正式には「キャビンアテンダント」、「フライトアテンダント」などと呼ばれる「客室乗務員」。男女雇用機会均等法の施行により、かつての「スチュワーデス」という呼び方はなくなったが、女性にとって憧れの職業の一つであることには変わりない。もちろん、男性の客室乗務員も多数活躍しており、外国航空会社のなかには男性クルーのほうが多いところもあるほどだ。ただし、各社の大規模な経営合理化により、全体的に採用人数が減り、採用条件が厳しくなる傾向にある。日本の大手航空会社では正社員の採用を見合わせ、契約社員のみを採用している。

メカニック(整備・メンテナンス)
メカニックとも呼ばれる「整備・メンテナンス」は、航空機の安全運航に不可欠な存在。整備・メンテナンスの業務はライン(運航)整備、工場整備(ドック整備)、各種専門工場整備の三つに大別される。ライン整備は機体の飛行前、到着後、飛行間それぞれの点検が中心。工場整備は定期点検の際に機体をドック(格納庫)に入れて細部まで詳しく行う点検だ。各種専門工場整備はエンジンや計器類、コンピュータなどを機体から取り外して行う、より専門的な点検である。技術・専門職にはほかにも、「情報システム関連」「航空保安」などの部門がある。



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