コンテンツ

アライアンスに加盟する航空会社の意味とは!4つある戦略まとめ

1.アライアンスの誕生と発展
1992年10月14日にオランダはオープンスカイ協定の内容を世界に先取りする形で米国と2国間協定を締結した(米国のオープンスカイ協定が公表されたのは1995年)。この国家間のオープンスカイ協定に基づきKLMオランダ航空(KL)と米国のノースウエスト航空(NW) は1992年9月にコードシェアや資本提携を含む「商業的協力と統合についての協定についてATIを獲得した。その後さらに深化したアライアンスへの道を開きコンチネンタル航空(CO)、イタリアのアリタリア航空(AZ) とアライアンス(Wings) を結成する。

KL、NW両者間の提携による1994年における増収効果はNW、KLでそれぞれ約1.5億ドル、約1億ドルであったと報告されている。
エアーフランス(AF) は1998年4月に米仏航空協定の完全自由化についての合意がなされたことによりアライアンスへの本格参入を始め、2000年6月には米国のデルタ航空(DL)、韓国の大韓航空(KE)、メキシコのアエロメヒコ(AM) との間でグローバル・アライアンス・スカイチーム(SkyTeam) を結成する。2002年に上記Wingsとの連合も整い、ここに米国の5大メガキャリアのうちの実に3社が加盟し、米国独禁法のATIを確保するスカイチームに拡大する。スカイチームの特徴に貨客一体型のアライアンスという点がある。

カーゴについては、このアライアンスの主たるメンバーであるAF、KE、KLはそれぞれ貨物輸送量において7位(2005年IATA実績)、1位(同左)、8位(2004年IATA実績)の規模を持っており、スカイチームにおける貨物アライアンスをリードしている。

ちなみに、他のグローバル・アライアンスでは貨物部門の提携はなされていないが、下述するスターアライアンス(StarAlliance) についてはその発足当初に貨客一体型を目指した形跡がうかがえるルフトハンザ航空(LH) やスカンジナピア航空(SK)、シンガポール航空(SQ) といったスターアライアンスのメンバーが中心になり、JALカーゴを加えて、WOWという貨物のアライアンスができている。

貨物と旅客の事業では、機材やその時間帯など運航の仕方、使用空港、マーケットの違いから業態が異なるがスカイチームのように同じメンバーの間で貨物の分野でもアライアンスが組めればメンバー間における親密性やコンピュータなどに絡む設備投資等においてもより高い効率が図れるのではないだろうか。他のアライアンスでも今後動きが出てくるかもしれない。

LHとユナイテッド航空(UA) との間の大西洋および米独それぞれの国内線における広範なコードシェアを内容とするアライアンス協定(AllianceAgreement) が1994年1月に米国運輸省に認可されたこれは1993年9月24日の米独航空覚書を踏まえてなされたものである。その後、両社の強いイニシアティブによりさらなる提携の拡大に必要なオープンスカイ協定と、その国家間の合意の下で得られるATIの必要性が強く要望され、1996年2月に国家間でのオープンスカイ協定が結ばれた。

この両社間の提携を核として、1997年5月にLH、UA、SK、エアーカナダ(AC)、タイ国際航空(TG) によりスターアライアンスが結成された。この結成メンバーの中では、UA、LH、SK間、およびUA、AC間にはその母国がいずれもオープンスカイ協定を受諾しており、ATIが与えられていることから、より広範な提携が可能となっている(タイは2005年に米国とのオープンスカイ協定を結んだ)。

1998年3月に締結された日米航空協定の暫定合意(2001年の1月1日までに自由化に向けた協議を開始することとなっているが、2007年現在までに自由化協議は行われていない)は、先発企業について便数制限や参入地点、第5の運輸権の自由などの自由化やコードシェアの枠組みの導入など今までの日米航空協定を大幅に自由化するものであったがオープンスカイ協定を受諾していないので日本の航空企業にはATIが与えられていない。この新たな協定の下でコードシェアが可能となり、1999年10月にANAがスターアライアンス9番目のメンバーとして加盟することとなった。

ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)とアメリカン航空(AA)との提携は、英国側がオープンスカイ合意(OpenSkies Accord)をしていないため、米国のATIを得るに至っていないが、両社は香港のキャセイ・パシフィック航空(CX)やオーストラリアのカンタス航空(QF)を加え、ワンワールド(oneworld) というグローバル ・アライアンスを発足し 航空会社間のアライアンス協定として米国運輸省に承認されている(1999年2月)。ここに世界の3大グローバル・アライアンスが誕生するのである。

2007年4月1日に日本航空がこのワンワールドに正式に加盟した。世界のメガキャリアとしてどのアライアンスに加盟するのか注目されていた。アライアンスへの加盟としては遅いのであるが、その理由に日本が長く国際線1社体制を政策としてとってきた中で日本航空が大きなネットワークをすでに有しており、アライアンスの有用性が急務ではなかったと考えられる。また、世界のさまざまな航空会社との2社間提携がすでにあり、いずれかのアライアンスに加盟することで、既存の提携への微妙な影響が考慮されたのではないかと思われる。


2.アライアンスの戦略
サービスの均質化
アライアンス全体として高品質サービスの均質化は重要なテーマである。コードシェア便の拡大で旅客に誤解が生じないように、便名と運航会社の違いなどの周知が図られているので、 日本の航空会社だと思って搭乗したらアメリカの会社だったというようなことがないように注意が払われている。他方、同じアライアンスの航空会社であれば一定レベルのサービスを提供するように均質化が図られ、世界のどこに飛んでも旅客の不安がないようにこと細かくサービス改善が図られている新規にアライアンスに加盟する際に消費者サイドへの高品質サービスが統一されるように、 Minimum Requirement (70以上の項目が存在するといわれている)という基準がクリアされないと加盟できない厳しい仕組みも導入されている。これによりアライアンス全体としてのブランドという、形態の規模による新たな経済効果が目指されている。

対LCC (Low Cost Carrier) 戦略
世界的な規制緩和のうねりの中で生まれたグローバル・アライアンスであるが、同じく規制緩和の中で台頭してきたLCCによるマーケットの侵食に苦慮している。LCCによるマーケットシェアの拡大が低運賃、低品質商品の市場から低運賃を維持しながら高品質のマーケットへ拡大してきていることが大きな競争上のプレッシャーになってきているのである。アライアンス加盟のネットワークキャリア(NWC)その子会社にLCCを作り対抗策を講じたり、いっそうのコスト削減を図っているLCCとNWCはそれぞれマーケットを棲み分けながら、 NWCのほうはネットワーク規模への旅客ニーズを最大の強みに戦略を展開していくことになるであろう。

メンバー拡大戦略(WhiteSpot Strategy)
アライアンスのメンバーによるネットワークが切れ目なく(シームレス)展開されるように、各グローバル・アライアンスではメンバー拡大戦略(WhiteSpot Strategy) の下に新たな市場をカバーするメンバーの獲得に激しい競争を展開している。当面対象となる市場はロシア、中国、インドとされ、躍進する中東市場にも注意が払われている。ロシアのアエロフロート(SU)、中国南方航空(CZ) はスカイチームに加盟し、中国国際航空(CA) や上海航空(FM)はそれぞれスターアライアンスに加盟が完了し(両社とも2007年12月12日)、メンバー拡大戦略が着々と進んでいることがうかがえる。

アライアンスから受ける消費者利益
「行きたいときに 行きたい所へ」という旅客のニーズは、アライアンスの下でのシームレスネットワークやサービスという形で提供されている。世界中のどこにでも同質のサーピス保証の下で往来でき、空港での接続時のラウンジ等施設の確保やどの航空会社に乗っても共通のFFPでのメリットが加算されるなど消費者側の利便の向上につながっている。競争環境の下における航空会社レベルから航空会社の連合間での新たなビジネスモデルが追求されている。航空業界はもともと同じタイプの飛行機や座席などが使用され、あるいはマッチングが早く、差別化が難しい業界であるが、グローバルなネットワークと世界規模での付帯サービス等より規模の大きいシームレスなサービス競争が消費者利益につながっている。


この記事を見た人は、一緒にこんな記事も読んでいます!