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空港バスは多彩な路線で柔軟な運行が飛行機の利用客をしっかりサポートしている

1.空港バス路線が多彩になっている
最近は空港バス路線が多彩になっている。とくに成田や関西空港を発着する空港バスはかなり遠方からも運行されるようになった。

成田空港への空港バス、遠いところでは福島から郡山経由で成田空港へやってくるルートがある。興味深いのはその運行時間帯で、福島発の1便目は0時30分で、これは夜行バスの運行時間帯である。これらのバスは福島から東京へ運行する夜行バスが成田空港に足を伸ばすのではない。行き先は成田空港のみで、れっきとした空港バスである。

関東一円からの成田空港行き路線も、出発時間は早い。前橋発の始発が3時40分、そして4時、4時20分、4時50分と続く。宇都宮発の始発が4時40分、水戸発の始発は5時33分、甲府発の始発は4時5分だ。

朝のラッシュになる前に東京エリアを通り抜けて、需要の多い朝4時台に成田を出発するアジア便に間に合わせる。これら地域から鉄道で成田へ出ると、成田午前発の便には間に合わず、成田でホテル前泊が必要になり、ホテル代がバカにならない。つまり関東甲信越、福島からの空港バスは、旅費の節約に大いに貢献しているのだ。

またこんなルートもある。行き先が成田空港だけではないので空港バスではないが、仙台から千葉への夜行バスが成田空港を終点にしている。
広い範囲から空港バスが集まってくるのは関西空港でも同じで四国の高松や徳島から明石海峡大橋橋経由で関西空港に至る路線がある。これも四国~関西間の都市間バスが空港を発着するのではなく純然たる空港バスだ。

このほか2007年には岡山~関西空港間の空港バスも運行を始めている。これらの空港バスのメリットはなんといっても空港まで乗り換えなしという部分ではないだろうか。鉄道利用の場合は時間が正確といったメリットはあるが、鉄道では乗り換えになるケースが多い。少量の乗客でも経済的に成り立つという高速バスのメリットが活かされている。

空港バスの運賃は福島から5500円、前橋から4500円、宇都宮から4070円、水戸から3000円、甲府から4300円だ。東京空港交通(エアポートリムジン)の東京駅~成田空港間でも3000円することを考えると、これらの長距離空港バスはリーズナブルな運賃だ。

成田空港からのソウル往復航空券など、安い時期は1万円台で往復というのが普通にあるご時勢である。それなのに成田空港までの往復に1万円以上かけたのではあまりにバランスが悪い。空港までの交通機関も多彩になっているので、行き方をよく考える必要がある。

鉄道と比較してバスは航空機の脇役に徹した運行をしている
空港バスが多彩な路線展開になっているのは成田空港や関西空港などの国際空港だけではない。京浜急行電鉄と東京モノレール、時間に正確な交通機関2社を持っているはずの羽田空港でも空港バスが増えている。

京浜急行電鉄のターミナルは品川、東京モノレールに至っては浜松町だ。東京に住んでいても、多くの人は羽田空港に行くまでに、2回は乗り換えが必要だろう。そこで乗り換え不要の空港バスが増えている。都心の道路が混む時間帯を避けて、朝の空港行きと夜の空港発のみを運行するケースもある。たとえば東京空港交通と京王バス東が共同運行する国分寺~羽田空港間は、空港行きは5時台と6時台に計3便、空港発は19時台以降に計7便運行されるが、それ以外の時間帯にはない。

同様に東京空港交通が運行する練馬便も、空港行きは早朝に、空港発は夜に運行される。
早朝6時台などに出発する便の割引率が高く、意外にも早朝の羽田空港は搭乗手続きを行う乗客で混雑している。

しかし東京でも郊外に住んでいると、電車を使ったのではこれら早朝便に間に合わない。航空便の出発が早くなったからといって、鉄道の始発はそう簡単には早くできない。その点、バスの運行は融通が利く。

たとえば、練馬発の初便は5時ちょうどである。こんなことから「我が家は羽田空港から遠いので、羽田早朝発の便を利用するのは無理」などと考えず、バスの時刻をよくチェックしてみる必要がある。羽田空港行きの空港バスは関東の広範なエリアから出ていて、たとえば西武新宿線の終点本川越駅を出発する羽田行き空港バスの始発は4時35分。前橋バスセンター発の初便は早朝ではなく深夜の2時20分だ。成田空港行きの空港バスが、午前発のアジア便に間に合うように運行しているのと同様に、羽田を早朝に出発する便に間に合わせることを目的に運行している。

とかく鉄道が出入りしている空港では「鉄道が便利」と決め付けてしまいがちだが、鉄道アクセスがある空港で、航空便の時間に合わせて鉄道を運行している例はない。鉄道会社は鉄道側の都合のいい時間に運行している。その点、バスのほうが航空機の脇役に徹した運行を行っている。

また国分寺~羽田空港間のバスでは、空港行きと、空港発の便数差にも注目だ。空港へは3便しかないのに、空港発は7便と多い。国分寺~羽田空港間となると、国分寺エリアに住んでいる人の利用者が中心になるが、一般に空港へ行くときは飛行機に乗り遅れては大変なので、時間に正確な鉄道を選ぶ利用者が多い。逆に空港から自宅に戻るときは、乗り換えのないバスを選ぶことが多い。

旅行帰りなどで、荷物が多くなっていればなおさらである。こういった細かな需要に合わせられるのもバスの強みである。

ただしこういった路線の場合、バスは折り返し運行するというわけにはいかないので、片道は回送扱いになり、運航経費はかさむ路線といえる。国分寺~羽田空港間のバス運賃は1400円、もしJRと京浜急行電鉄を品川で乗り継ぐと940円なので、どうしても空港バスのほうが割高にはなってしまう。

2.空港バスの運賃は他の路線に比べて割高
一般に高速バスや都市間バスでいうと、JRや新幹線に比べてバスは格安な交通手段となっている。東京~大阪間でいえば、新幹線が「のぞみ」指定席で約1万4000円に対し、高速バスは昼間の便で6000円、夜行は約7000~9000円、4列座席の夜行便なら5000円と格安だ。

ところが空港バスに限っていうと、こういった法則は成り立たない。たとえば、東京駅~成田空港間の東京空港交通は3000円する。しかし、同じ東京駅から成田空港方面と同じ東関東自動車道を通り、成田空港のずっと先、銚子まで運行する京成バスと千葉交通は2500円だ。とくに成田空港行きのバス車両が豪華なわけでもないし、銚子行きのバスが安いわけでもない。

こう比べると、さらに割高感を感じる。東京駅~成田空港間3000円に対し、千葉交通と関東自動車が共同運行する宇都宮~成田空港間は4070円であるが、この4070円はあまり高く感じないであろう。成田空港から東京と宇都宮では走行距離は倍以上になる。しかし、この4070円でもやはり通常路線からすると実は割高で、宇都宮~東京(新宿)間の高速バスは、その半額以下の1700円なのである。

これは都会の空港、地方の空港を問わずいえることで、空港バスの運賃は他の路線に比べて割高である。またここに挙げた路線や運賃例と比べて路線バスで、現在運賃が安いことで流行の格安バス(ツアーバス)と比較しているわけではない。バス運賃もおおよそその距離などに比例した運賃設定になっているのだが、唯一その法則に当てはまらないのが空港バスなのだ。

空港バスは日常利用する生活路線とは別になっていることが多く航空機を利用する人のための路線といえるが、空港へ行く利用者は財布の紐がゆるくなるといった考えも根底にありそうだ。空港が絡むとレストランなどすべての物価が高くなることと同じ理屈だ。しかし、これだけ航空機が身近な交通機関になっているのだから空港は特別といった風潮はなくしてもらいたいものである。

そういう意味では地方の空港では、空港バスが値下げされている例もある。長崎市内と長崎空港は以前、長崎県営バス(長崎県交通局)だけが空港バスを運行していて運賃は1200円だったが、そこに長崎自動車が参入、運賃は800円までに下がり、さらに往復で購入すると1200円、つまり片道600円で、従来の半額にまで安くなった。現在はこれ以上の競合は両者にとって得策でないと判断したのか、2社の共同運行となったが、バスの世界でも規制緩和が進んでいて、空港バスの値段が安くなった地域があることも事実だ。


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