空港への鉄道の乗り入れ状況、海外ではどうだろう。
やはり
最も進んでいるのはヨーロッパの空港で、主要空港では空港に鉄道が乗り入れるのは当たり前になっている。
アジアでは都心から遠い空港を建設、それを補うために鉄道アクセスを建設する、といった考えがあるが、ヨーロッパでは都心から10キロ以内の空港でも必ず鉄道が乗り入れていて、所要時間が10分、20分というのはごく当たり前にある。
たとえばフランクフルトやチューリヒの空港などは、成田でいえば成田市内と成田空港くらいの距離しか離れていない。さらに環境問題などに対する考え方が進んでいることもあり、フランクフルトやチューリッヒなどは市内~空港間にバスが運行されていないところさえある。
また単に鉄道が空港へのアクセス交通にとどまらない運行になっている。ジュネーブ、チューリヒ、アムステルダムの空港駅には、市内への列車だけでなく長距離列車も乗り入れている。そもそもこれらの空港へは、空港アクセスの専用列車が来るのではなく、そのエリアをごく普通に走っている列車がやってくる。成田空港でいえば、空港駅から東京、千葉、大宮はじめ各方面への列車が走っているような感じである。
しかし一方でロンドン・ヒースロー、ストックホルム、オスロ空港などへの列車は空港アクセス専用列車で、市内側のターミナルも限られている。
車内設備の整った列車で、スピードも速いのだが、物価高と為替レートの関係などで、ほんの20分程度の乗車でも日本円で4000円ほどと高く、お金を払っても乗車時間を短くしたい利用者の乗り物となっている。こういったところでは、倍以上の時間がかかる空港バスなども健在で、交通機関選択の余地がある。
フランクフルトやパリのように駅を複数持つ空港も現れている。フランクフルトではフランクフルト都市圏を運行するSバーン(郊外列車)が空港から市内へ運行するが、それとは別の駅があり、そこには長距離列車が発着、ドイツ版新幹線ともいえるICEも乗り入れてくる。
同様にパリのシャルルドゴール空港でも、市内へ向かうRER(近郊列車)の駅のほかに、フランス版新幹線TGVの駅もある。この駅にはパリを発着しないTGVが発着していて、たとえばマルセイユ、リヨンなどからパリをバイパスしてリールやブリュッセル方面へのTGVが停車する。つまりいくらお金を出しても空港からTGVでパリ市内へ行くことはできない。
一部の列車は航空便としても使われている。たとえば成田からブリュッセルまでエールフランス便を利用すると、パリ~ブリュッセル間は列車を使う。同様に成田からロッテルダムまでKLMオランダ航空便を利用すると、アムステルダム~ロッテルダム間も列車になる。これほどに航空と鉄道が連携している。
変わった空港駅としては、リヨンの空港駅がある。空港に列車が乗り入れるものの、市内への鉄道アクセスはなく、全列車がTGVで、その列車は南フランスなどに直通する。パリ・シャルルドゴール空港でいうところのTGV駅のみがあるという空港だ。市内へはバスを利用する。
ヨーロッパ以外でも空港に鉄道が乗り入れる空港は多くなった。アメリカでもニューヨークのジョンFケネディ、ニューアーク、ワシントンのナショナル、シカゴのオヘアとミッドウェイ両空港、サンフランシスコなどの空港に鉄道が乗り入れている。アメリカは近年、クリーンなエネルギーの鉄道をずいぶん活用するようになったと思える。
ただしヨーロッパなどと違うのは、やはり空港に出入りする利用者の中で鉄道利用者の割合が少ないことで、
アクセスの主役はあくまでバス、乗り合いタクシーで、旅行者のレンタカー利用率も高い。やはり「自動車社会アメリカ」を感じさせる。
アメリカでは、最終的に空港に到着する交通機関が、日本の感覚でいうような大量に人を乗せた列車では不都合な面もある。ターミナルが航空会社ごとに分散しているので、駅をどこに建設するかという問題がある。ニューヨークのジョンFケネディ空港のように、鉄道駅は空港から離れたところにあり、そこで小回りの利く小さめの列車(エアートレイン)に乗り換えて、各ターミナルに向かうという例もある。
ボストンでも地下鉄駅は空港から少し離れていて、そこから無料バスで各ターミナルを循環するようになっている。このほうが現実的なのである。アメリカでは、空港へ鉄道で行くということは、格安で時間が正確な手段にはなるが、速く行くための手段にはならないことが多い。
アジアでも新しい空港を中心に空港アクセス鉄道が完備されつつある。1998年開港の香港・チェクラプコク空港は、香港中心街から25キロ離れているが、エアポート・エクスプレスが最高時速140キロ、10分間隔、所要23分で結ぶ。
同じく1998年開港のクアラルンプール・セパン空港は、都心から50キロ以上も離れているが、空港アクセス鉄道は最高時速160キロ、28分で結んでいる。いずれの空港も新空港を建設した結果、都心から遠くなったが、その遠さを高速鉄道のスピードが帳消しにしている。
香港では啓徳空港時代、市内から近い空港として人気があり、タクシーに乗ってもたいした出費にはならなかった。しかし時間に正確な空港アクセスもなかったので、かえって便利になったという人もいるくらいだ。さらに究極の空港アクセス交通を建設したのが1999年開港の上海・浦東空港で、30キロの距離をリニアモーターカーがたった7分で結んでいる。見た感じは幅の広いモノレールといったスタイルだが、発車すると今までに体験したことのない加速で、あっという間に車内にある速度計は時速430キロを表示した。高速道路が並行しているが、同じ方向に進んでいる車も、対向車線の車もすべて止まって見える速さだ。中国ではこのほかにも北京、広州、天津など主要都市で空港~市内間の鉄道アクセスが計画されている。
アジアではヨーロッパのロンドンやストックホルム同様に特別な空港アクセス専用列車が多いが、物価は比べものにならず、上海のリニアモーターカーも日本円換算1000円以下の運賃だ。2006年開港のバンコク・スワンナプーム空港でもアクセス鉄道が計画されていて、都心から30分以内の到達時間を予定している。ソウル・仁川空港でも、アクセス鉄道が最初の区間として金浦空港まで開通している。
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