目次

副操縦士は機長をしっかり補佐するパイロット

1.副操縦士の仕事ってどんなことをするの
パイロットの仕事の流れは、オペンへの出頭から始まり、運航管理者とCAとのブリーフィングを経て自分たちの作業へと移ってゆく。
シップ(機材)に着くと、機長は機体の外部点検を行うため、ウォーク・アラウンド(歩行見廻り)を開始するが、副操縦士はコックピットに直行し、FMS(フライト・マネージメント・システム)の操作を開始する。その内容は、離陸から上昇、そして巡航に至る全てのデータ(重量、燃料の量、出発方式、航路、巡航高度、速度等)を入力する作業だ。それが終わると、外から戻ってきた機長と再度一つ一つ漏れや間違いがないかを確認することになっている。

そして出発準備が整うと、副操縦士の主な業務は、機長の指示に従って、フライトの各フェーズでチェックリストを読み上げるとともにフラップやギア(車輪)の上げ下げをはじめとする操縦の分担、そして管制との交信等がある。これら一連の業務を行うことをPM-DUTYと呼んでいる。Pはパイロット、Mはモニタリングの略で、計器類をチェックするという意味である。

これに対し、実際に操縦する業務のことをPF・DUTY、Fとはフライングの略である。
PMとPFという2人のパイロット。民間ジェット旅客機は2人で操縦するものなので、その分担を飛行マニュアルに沿って定めている。これは機長と副操縦士の身分とは関係なく、当日どちらが操縦梓を握るPF・DUTYで、どちらがPM・DUTYをとるかが機長の判断で決められる。しかし、副操縦士の重要な業務はこれ以外にもある。
それは、機長の補佐である。一般に副操縦士の役割について「機長を補佐する」と言われてきたが、そのことは業務の役割分担のことを意味しており、正確には補佐ではない。

もともと現代のジェット旅客機は2人のパイロットで操作する仕様になっているからだ。物理的には、仮に1人のパイロットが意識を失ったとしても、他のパイロットは全てをカバーして、一応の対応はできて、無事に着陸を果たすことも十分あり得るだろう。
操縦はオートバイロットに任せればよいし、フラップ、ギアの操作、FMS、交信、CAや会社とのコミュニケーション等、1人でやろうとしてもできなくはない。しかし、機内火災のような緊急事態が発生したら、とても1人で乗り切ることは不可能であろう。その意味で安全運航のためには2人のパイロットの乗務が義務付けられ、その職務分担がOMに定められている。そして航空当局からもそれが条件で運航が認可される仕組みとなっている。

少々回り道をしたが、ここでいう機長の補佐業務というのは、機長の判断や行動に対し適宜アドバイスや意見を出して良い結果に導くことである。ただし、判断力にスポットを当てて考えても、機長の持っている判断力と副操縦士のそれとは大きな差があることはいうまでもない。

経験、技量などでは、とても機長にはかなわないのは当然である。そこで、機長の補佐業務として期待されるのは何か。最も求められているのは、マニュアルから外れた機長のオペレーションに対して、はっきりとそれを指摘する行動である。
つまり、おかしいと思ったら、すぐに声を大にして注意したり意見を出してほしいのである。

しかし、機長の言動に対し、「変だ、おかしい、明らかに規程違反だ」と思っても、なかなか声に出して、しかもすぐには言えないのが機長と副操縦士との関係だ。多くの場合、副操縦士から見ると、経験も技量も豊富な機長のことだからそのうち機を正常に立て直すことだろう、あるいはミスにも気が付いて規程違反もなくなるだろうと、しばらく様子を見るという行動に出てしまうものだ。しかし、いよいよという状況になって、何か言おうとしても、すでに事態はさらに深刻になって、回復操作も手遅れになってしまうことが問題なのである。


2.副操縦士と副機長はどこが違うのか
日本のメディアでは、よく副操縦士のことを「副機長」と呼ぶ奇妙な習慣がある。正しい呼称は副操縦士である。日本の航空会社のマニュアルでは「副機長」という表現はないはずである。英語で言うと、機長はキャプテン、副操縦士はコー・パイロット(業界では略してコーパイ)あるいはファースト・オフィサーと呼ぶことはあるが、副機長と表現する英語はない。

機長の定義を
・乗務する航空機の型式についての限定を受けた定期運送用操縦士技能証明書(ATR)を有すること
・有効な第一種航空身体検査証明書を有すること
・総飛行時間が3000時間以上であること
・所定の資格審査に合格し、かつ、発令を受けていること
等、となっており、副操縦士については
・乗務する航空機の型式についての認定を受けた事業用操縦士技能証明書(コマーシャル)を有し、かつ計器飛行証を受けていること
等、とある。

機長を補佐する副操縦士
つまり、明らかに資格要件が異なっているため、機長と副操縦士とははっきり区別し、副機長などという表現は避けているのである。そして長距離路線のように、機長2人と副操縦士1人という交代要員を乗せた乗務編成(マルチ・クルー) の場合でも、正式な機長は1人だけで、それをPIC(パイロット・イン・コマンド)と呼んでいる。もう1人の機長はSIC(セカンド・イン・コマンド)と呼ばれ、指揮権の順位では機長の次に位置づけられている。

なお、機長と副操縦士との2名編成の乗務でも、機長のことをPICと呼ぶことはあるが、副操縦士のことはSICとは呼ばず、あくまでも副操縦士という言葉を使っている。加えて、ATRなどの所定の資格を持って、かつ飛行時間が3000時間を超えていて、OJTと呼ばれている機長昇格訓練中のパイロットも、左席に座り機長の業務を行っているが、教官業務を行う機長が右席にいるので、職務上は副操縦士となっている。


3.機長と副操縦士がどのくらいの割合で操縦梓を握る?
パイロットがオペンにショーアップしてからの仕事の流れと同じ便に乗務するパイロット同士で自己紹介をする。特にこれから機長を目指す副操縦士は、機長に対し飛行経歴や入社前の訓練ソース(航大や自社養成など)を申告して、これからのフライトで機会があれば離着陸の操作を行いたい旨を申し出るのが習慣となっている。
しかし、副操縦士の離着陸操作についてはいくつもの条件が課せられている。まずATRと呼ばれる機長の国家資格をすでに持っている者は、コックピットの左側の機長席に座り、出発から到着までの機長業務を全て行うことがある。これをOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)と呼んでいる。

つまり機長の見習い業務である。この際、機長にもそれを許可できるL/S(レフト・シート・アプルード)機長の社内認定資格が必要になってくる。こうした場合、当該L/S機長は副操縦士業務と当該副操縦士のOJT訓練を教育するという2つの仕事を乗客を乗せた実際のラインフライトで実施することになる。その際、フライト全般を通して少しでも安全に疑問が生じれば、すぐ操縦をとって代わるタイミングが重要となってくる。

なお、ATRを持っていない副操縦士は、通常通り右席に座り、離着陸操作をはじめ機長が許可する範囲で操縦梓を握ることになる。ただし、目的地などの天候次第では、機長自ら全ての操作を行うことは安全第一の考え方から当然の原則だ。それは実際には、これから臨むディスパッチャーとのブリーフィングでの天候解析の結果によって最終的に決められることになる。

さて、一般的に機長と副操縦士がどのくらいの割合で操縦梓を握るかということは乗客にとっても関心のあることであろう。答えは、副操縦士に任せてはならない条件は規程には明確に書かれているが、その逆は決められていない。仮に2人の勤務で1日に4レグ(便数)のフライトがあるとして、その4回全てを副操縦士が操縦することも、1回もさせないことも機長の裁量に任されている。その意味では、後輩の指導に熱心な機長との組み合わせに当たるかどうかは、副操縦士にとって最大の関心事となる。

もっともそれ以前に、副操縦士にとって当日同乗する機長は誰かということは、フライト全体に影響を与えることになるので、評判が極端に悪い機長と分かると、中には病気を理由にキャンセルするような者もいた。現在の実態は分からないが、過去にはそのようにキャンセルされる常連の機長がいて、そのたびに急遽スタンバイの副操縦士を捜すスケジューラーの悲鳴も脳裏に残っている。ともあれパイロットはこのようにして、ディスパッチャーの待つプリーフィングルームへと向かうことになる。

ブリーフィングルームに入ってからまず最初の仕事は、壁に吊るされた多くの天気図(気圧ごとの上層天気図や地上天気図、それに風や雨に関するもの)に目を通し、ブリーフィングを効率良く受けるための予備知識を吸収しておくことである。そして、いよいよフライト別に指定されたカウンターへ。そこでは、まず担当のディスパッチャー(運航管理者か運航支援者)との顔合わせを行い、次にパイロット自身の健康チェックへと進む。お互いにこれからの乗務に就けるかどうかの相互確認とアルコールテストを行うのである。カウンター横にはアルコール検知器が備え付けられており、各自が交代で息を吹きかけ、反応がないのを確認するのだ。こうしてパイロットはお互いの「健康チェック」を終了し、様々な情報と予定の飛行計画書(案)に目を通していく。


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