客室乗務員は一般に客室乗務員(キャビン・アテンダント)と呼ばれ、女性の仕事と思われがちであるが、実は男女それぞれが特色を活かして活躍できる職業だ。
男性乗務員は現在JALでは、客室系地上職員として採用されて何年かを限って空の仕事をするケースや、パイロット訓練生などが研修として数年間女性の客室乗務員と一緒に仕事をするケースなど様々だが、かつてのように役職上スチュワードとして採用され、後にチーフ・パーサーに昇格して、定年まで専門職として働くことはなくなった。
外国のエアラインでは、今でも専門職として男性客室乗務員が活躍する姿をよく目にするが、ここに客室乗務員に対する社会の評価の差が表れているようだ。つまり、日本では専門職として男性客室乗務員を必要としない風潮が定着しつつある。裏返せば、多くの女性の客室乗務員を統率し、機の中でリーダーとなるべき先任と呼ばれる客室乗務員も女性で十分務まるとの評価だ。
実際、日本で国際線を長く運航しているJALでも、客室乗務員の平均勤続年数は約10年、ANAでは約6年と、諸外国と比べても極端に短い。ある社では30歳を超えると退職へ向けての圧力が始まるといわれているが、その会社が客室乗務員に求めるものはズパリ若きであり、それを売りにしているとしか思われない。その結果、大型機でさえ経験の浅い客室乗務員が先任の職に当たることも当然のことのようである。
この背景には、緊急時でも女性だけで十分対応できるという航空会社トップの考え方がある。
しかし、何のトラブルもない日常運航ならともかく、緊急時には物理的に力のある男性乗務員が必要となる場合があることを忘れてはならない。暴力的行為に走る乗客やハイジャック・テロといった不測の事態においても、女性だけでは対応が難しい局面がある。
客室乗務員は女性ばかりでもよいとする背景の2つ目には、機内サービスのマニュアル化がある。現在の客室乗務員の主な仕事の流れをまとめると、巡航に入り、シートベルトサインが消灯すると、食事を出し、次に免税品の販売、続いて機内を暗くして映画を上映する。それが終わればおやすみタイムだ。これが以前なら、映画の上映もなく、乗客は機窓からの風景を楽しんだり、初めて行く国の文化や作法、それにチップの金額などを乗務員に尋ねるといったコミュニケーションの場があった。
エコノミークラスで海外へ向かうロングフライトでは、座席の選び方によって快適度がまったく違ってくるもの。最近は予約時に座席を指定できるので、予約とともに、希望する座席を選んでいる人も少なくない。
団体旅行やパックツアーでは無理だが、個人で予約する場合は、ネットでも事前座席指定ができる。 どの席がベストかは人それぞれ違うが、まずは窓側の席か通路側の席かで好みが分かれるところだ。
もっとも
人気が高いのは、各客室のセクションの最後部、非常口の横の座席で、「エグジット・ロウ」という。すぐ前に座席がないため、エコノミーでもゆったりと足を伸ばすことができる。
人気のわけはそれだけではない。というのも、この席は離
着陸時に
客室乗務員が座るジャンプシートの向かい側になるのだ。 乗務員も離着陸時には、ギャレー横やドアの横などにある折りたたみのジャンプ
シートに座る。
各客室のセクションの最後部にもジャンプシートがあり、ここではスペースの関係で乗務員は後ろ向きに座る。そのため乗客と対面することになる。
離着陸時だけだが、乗務員と言葉を交わすチャンスもあるので、もしかしたら、乗務員とお近づきになれるかもしれない。
ただし残念なことに、どの航空会社でも、この席は事前予約ができないのだ。当日、空港のカウンターで、空いていれば取ることができる。この席は非常口の横にあるので、緊急脱出時には脱出シュートを支える役などの協力を求められる。
そのため、子どもや高齢者は不可で、英語が多少できるといった条件が求められるからだという。 ワイドボディ機(通路が2つある大型機)では映画などのスクリーン前も足もとが広いので人気だが、この席はバシネットというベビーベッドをセットする場所なので、乳幼児を連れた乗客が優先される。たとえ座れても、ベビーベッドがセットされる可能性もある。
さて、どの席を選ぶか、よく考えてみよう。
3.覚えておくとおもしろい!客室乗務員が機内で使うCA用語
どの職種にも、業界内でのみ使われる専門用語がある。もちろん航空業界も同じで、注意深くきいていると客室乗務員同士が「ダイバートします」「今日は3レグよ」などと話しているのを耳にすることができるだろう。
「ダイバート」とは代替空港に着陸することであり、「レグ」とはフライトの数え方。たとえば1日に関西空港~伊丹空港、伊丹空港~羽田空港を乗務すると2レグという具合だ。
この専門用語には船に関係する言葉も多く、航空業界では飛行機を「シップ」、機長を「キャプテン」と呼んでいる。 なかにはわりと知られている言葉もあり、乗客の搭乗開始を「ボーディング」、離陸を「テイクオフ」、着陸を「ランディング」という。
またおもしろいことに航空業界ではアルファベットは特殊な読み方をする。というのも、世界各国を相手にする航空業界では、アルファベットを使うことが多い。
しかしBとDや、LとMでは聞き間違いも発生しやすい。指示などを間違えたら大変だ。
そのため、アルファベットを単語に置き換えたコードをつくっているのだ。これには航空会社やパイロットと客室乗務員用の2種類があるという。 客室乗務員用では、たとえば、Aはアルファ、Bはブラボー、Dはデルタなどという具合である。
だから客室乗務員は機内の座席番号でもこのコードを使う。客室乗務員同士が「チャーリーに紅茶運んでくれない?」と話していても、決して知り合いのチャーリーさんのことではないのだ。これはC席の乗客のことである。
こんど飛行機に乗ったら、いろいろ耳を澄まして楽しんでみよう。
日本では大手2社だけでも2000人を超えるソムリエ資格を取得した客室乗務員やOBがいるが、これは外国の航空会社ではあり得ない特殊な現象といえる。JALだけでも1000人を超えるソムリエが航空機に乗務して、お客様の食事に合ったワインを提供していることは、世界の航空会社のみならず、飲食業界からも特別な目で見られていたものだ。
ソムリエがこれだけ増えたのは、バブル期前後から起こった空前のワインブームがきっかけである。JALではそもそも外国でワインに接する機会が多く、個人的に資格を取る男性や女性の客室乗務員がいた。その中には、後輩達のために勉強会や塾のようなものを立ち上げた人達もいて、それが多くの客室乗務員が資格を取る動機にもつながったのである。ただし、動機に関していえば、それだけでない客室乗務員も少なからず存在する。
JALの客室乗務員の戦場では、AT(フライトアテンダント)から、CD(キャビンコーディネーター)、そしてSU(キャビンスーパーバイザー) へと昇格していく制度があり、その評価として日常の勤務実績だけでなく、そのほかに何か特別な技能なり資格を取ると昇格にプラスになるという面がある。そのため客室乗務員達は、オフの日を使って英検やTOEICなどのレベルを上げることや、手話の勉強に行ったり、救急蘇生法に基づく講習を受けたりと、涙ぐましい努力をしているのである。ソムリエの資格を取るのもその一つというわけだ。これらはいずれも乗客の安全やサービス面で役に立つもので、昇進での評価対象になるというものだ。
ソムリエといっても、ワインからチーズ、最近では日本酒と広がりを見せ、その複数の資格を持つ客室乗務員も少なくない。しかし、ソムリエの資格を取るのは容易ではない。ソムリエは業界では最高峰の資格だ。その下位にはワインアドバイザーなど、いくつかの資格があるが、それだけでも簡単ではない世界なのである。
しかし、客室乗務員はもともと英語など語学が得意であり、海外でワインを飲む機会も多い。そして何よりも持ち前の記憶力など優秀な頭脳の持ち主が多いため、集中レッスンによって、筆記、テイスティング、それに詩学という関門をいとも簡単に突破していくのである。元来、ソムリエになるには飲食業界での5年以上の経験が必要であるが、機内でのサービス業務もそれに準じて受験資格として認められている点も大きい。このような状況に、飲食業界で何十年も仕事を続け、ソムリエ試験を何度となく受けても合格しない方からは、複雑な思いが寄せられているのも無理はない。
次に、ソムリエ試験に合格し晴れて金色のソムリエパッチを胸につけた客室乗務員が、サービス面で一体どれだけ大きな役割を持つのかを考えていきたい。機内には
ファーストクラスといえども一流のワインはあまり揃っていないのが現実だ。JALでも1970年代くらいまでは、今では数十万円もする超一流の銘柄を搭載していたが、世界的な流れに合わせ、仕入価格を抑えたそこそこの銘柄が中心だ。ワインの本場フランスのエールフランス航空でさえもカリフォルニアなど新世界のワインが中心となっているくらい、現在はコストパフォーマンス重視のワインセレクションが行われているのである。
こうした現状の中で、果たして機内にソムリエは必要かという議論が起こるのも当然であろう。
もちろんソムリエがいた方が、ワインの詳しい内容や当日の食事に何が合うか等をワイン好きのお客様に説明するため良いに決まっているが、搭載されているワイン群が一流レストランのような品揃えになっていないことを考えれば、少し知識のある客室乗務員なら十分対応できると思っている。お客様のほとんどは白か赤か、あるいは辛口(ドライ)か甘口かといった点に関心があり、それに対応するワイン銘柄も限られているので、極端にいえば誰でも選べるのが現状だ。
そしてこれが問題なのであるが、以前は客室乗務員がサービスする前にワインを数滴試飲して品質を確かめていたものだが、機内で酒を飲むとは何事だという風潮の中で、一滴も口にできなくなったのである。これでは、本当に良いワインをサービスできるわけがない。少しでもワインのことをかじった方なら分かるように、ワインは生き物同然で、時間や移動、それに温度や湿度によって変質するので、ラベル通りの味が保証されているものではない。そのために、ソムリエが必ずテイスティングして品質に間違いのないことを確かめているのである。
このように、国交省の指導はいかにも日本的で、ワイン文化の差は大き過ぎると感じざるを得ない。フランスの航空会社では、以前はパイロットでも食事の時に少しのワインを飲んでいたと聞いたことがある。その妥当性についてはともかく、客室乗務員についてはテイスティングを認めたからといって安全運航に影響があるとは到底思えないのである。このような現状を見ると、ソムリエの出番は実際なくなっているのではないか。
最後に、ソムリエの資格を取るのに酒に強くならなくてはならないという必要はまったくない。
グラス半分、いや、それ以下でもワインの味さえ分かれば試験に合格できるのである。
なみに、パイロットは客室で飲食のサービスを行っていないので、ソムリエの受験資格はない。
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