1.ターミナル設計に迫る!上階が出発、下階が到着は常識?
国際空港では、国際線ターミナルと国内線ターミナルがきっぱり分かれているところと同じターミナルでこなしていることがあり、関西、中部といった大空港が同じターミナルを共用していて、意外にも富山、鹿児島などといった規模の小さい空港で別棟のターミナルがあったりする。
しかし地方空港では国際線が1日1便、あるいは週に何便といったこともあり、たとえば鹿児島空港では、国際線が発着するボーディングブリッジは、パーティションでの仕切り方によって、国内線でも使える構造になっている。ターミナルビルは国内線と国際線が別棟でも、搭乗待合室側ではつながっていて、仕切りが移動できるのだ。
国際空港で、出国手続き後のエリアを「保税エリア」と呼ぶが、保税エリアの考え方も空港によって異なる。成田をはじめ日本の空港では、出発客と到着客は階で分けるなどして、別の通路を進むことになり、相互に交ざらないようにしている。
乗り継ぎ客は専用の通路があり、到着階から出発階へ移動する。しかし世界で最も充実した設備といわれるシンガポール・チャンギ空港では、出発客、到着客、乗り継ぎ客のエリアは分けられていない。一見ごちゃまぜのようにも思うが、保税エリア内にはレストラン、シャワールーム、ホテルなどさまざまな施設があるが、それら施設を出発客、到着客、通過客の誰でも使うことができ、大変便利といえる。
日本の空港の場合、出発客と到着客を分けていて、整然としているようだが、利用者の自由を奪っているともいえ、チャンギ空港の場合、到着後、入国する前に食事をしたり、買い物を楽しんだりすることができる。
日本の国際空港は、飛行機を降りた乗客は、すぐに空港を立ち去って市内へ向かう、という発想でしか設計されていない。チャンギ空港の場合は乗り継ぎ客の割合が多く、このような構造になっていると思われるが、このことがこの空港が人気を維持している大きな理由に思える。
しかし近年では機内に液体類が持ち込めないことなどから、荷物の量にかかわらず、チェックインバゲージにせざるを得ないといった事情があり、到着時は空港内施設を使いたくても早く入国手続きを行って、荷物を受け取らねばならないといった問題もある。
いっぽう保税エリア以外の部分、つまり空港正面玄関側は、ある程度の規模になると出発階と到着階で分けるのが普通である。成田空港や関西空港では4階が出発、1階が到着、関西空港ではさらに2階が国内線という分け方だ。両空港とも空港正面玄関の道路はそれぞれの階に横付けされるようになっているので、空港に到着したバスは出発階に、空港を出発するバスは到着階から出発する。日本では羽田と那覇の国内線ターミナル、福岡の国際線ターミナルでも同じ構造になっている。
ところでこの
出発階と到着階、世界中どこへ行っても上階が出発階で下階が到着階というのが暗黙の了解のようで、誰が決めたというわけではないが世界各国共通だ。ところが世界の趨勢に反して上階が到着、下階が出発という空港がある。
2.
それがパリのシャルルドゴール空港のターミナル1で、ここは先進的なデザインで開港当初は未来の空港を思わせたものだが、現在となってはすこぶる使いにくい。旅慣れた人ほど、上階が出発階というのに身体が慣れているので、「あれ?」と思ってしまうのだ。この空港は機能性より個性重視といった感じだが、同じシャルルドゴール空港でも、後にできたターミナル2からはさすがに世界と同じ方式に改められている。
もうひとつ、変わったスタイルをしているのが、日本人にも馴染みのある台北・桃園空港だ。最初に造られたターミナル1は、正面玄関から入ると出発階になっているが、到着階は下階でも上階でもなく、はて?いったいどこにあるのかと思うと、ターミナルビルの反対側、いわば裏側が到着エリアになっているのだ。
空港というと、空港ターミナルビルがあり、正面から入ると、裏側はいわば
エプロンと呼ばれる航空機が駐機している側になることが多いので、空港ターミナルに裏側があると思う人は少ない。ところがこの空港は2本の滑走路に挟まれた部分に、ターミナルビルがエプロンに対して直角に配置されている。
そのため、正面玄関と裏側と記したが、正確にはこのターミナルビルはどちらから見ても正面玄関に見え、ほぼ同じ形になっている。少し方向感覚がなくなってしまうミステリー・ゾーンといったところか。パリとともに個性的な空港建築であったことは確かだ。しかし、やはりというか、後に建設されたターミナル2では、上階が出発階、下階が到着階といったオーソドックスなスタイルが採用された。
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