世界規模で取り組む地球温暖化対策に航空業界も無縁ではいられません。IATAがCO2半減の将来目標を掲げ、日本航空や全日空も独自の取り組みを進めています。
JALのバイオフライト実験
2009年10月、世界の航空会社が加盟するIATA(国際航空運送協会)は、20年まで毎年1.5%ずつ燃料効率を改善すると共に、50年のCO2排出量を05年の排出量の半分にするという目標を発表しました。国際航空はCO2の国別算出が難しいこともあり、これまで排出量削減の枠組みから除外されていました。しかし、欧州連合(EU)が域内に乗り入れる航空会社への規制を決めたことを受け今後、国際航空も京都議定書に代わる新しい枠組みに組み込まれていく見込みです。
ただ、航空業界にとって、燃料費の削減は喫緊の課題であり、航空各社はIATAの方針決定以前から、CO2削減の取り組みを進めています。日本航空が09年1月、アジアの航空会社ではじめて実施した「バイオフライト」はその一例です。同フライトでは、ボーイング747型のエンジン一基に、植物由来のバイオ燃料と通常燃料を50%ずつ混合して使用し、飛行中にエンジン停止、再点火などの実験を行い、無事飛行できることを証明しました。バイオ燃料に使用したカメリナなど三種類の植物は非食用で安定供給が見込める「第二世代バイオ燃料」なので、食糧問題に影響を与えることなくCO2削減につながり、実用化が期待されています。
このほか日本航空は、駐機中に客室窓の日除けを下ろして室温を抑え、空調使用時間を短縮する試みをはじめ、貨物コンテナや機内搭載品、乗務員手荷物などの軽量化、駐機中の補助動力の地上施設からの供給などの負荷軽減策に、UPR、CDAなどの経済的な運航方式を組み合わせた「究極のエコフライト」の実施など、「空のエコ」に積極的に取り組んでいます。
環境対策に積極的なANA
全日空も、世界の航空会社で始めてCO2総排出量の削減目標を競ってしたり、パイロット向けに飛行の工夫をまとめた小冊子を配布するなど、燃料節減への取り組みに熱心です。08年11月には、環境省が創設したエコファースト企業に航空業界で初めて認定され国内排出量取引制度にも業界で初めて参加するなど、国のエコ対策にも積極的です。
また、同社では、06年から4年続けて、乗客参加型のエコ推進プログラム「eフライト」を実施しています。
09年度の対象フライトでは、紙コップとペットボトルのリサイクルをはじめ、茶殻利用のペーパーナプキン、バイオマスプラスチックのカップ、国産間伐材の箸、エコ包装の化粧品サンプルなどを提供し、乗客に同社の燃料節減への取り組みを紹介しています。
航空機の運航コストを下げる工夫として、主翼端が跳ね上がった「ウイングレット」を装備する機体が増えています。見た目は小さな改良ですが、5%程度燃費を改善できます。
航空機の主翼は、翼の上面と下面で空気の流速を変え、機体を浮揚させる揚力を発生させています。しかし、翼端部分では抗力と呼ばれる、揚力を打ち消す力が発生してしまいます。この影響を小さくする働きを持つのが、
翼端部に付けられたウイングレットで、おおむね5%程度の燃費改善効果があります。
ボーイングでは、初期のウイングレットは、垂直尾翼を小型化したような翼端から立ち上がった形状でしたが、その後は、翼端が滑らかに斜め上に跳ね上がったブレンデッド・ウイングレットに進化しています。さらに、最近は、翼端が後方に先細るように伸びつつ反り上がった独特なレイクド・ウイングチップとなり、最新の787や747-8でも踏襲されています。また、767や757を対象にウイングレットを追加装備するサービスもあり、全日空、アメリカン航空、デルタ航空などが実施しています。エアバスでは、A300や320、最新の380などにはウイングチップ(ウイングフェンス)と呼ばれる、楔状の小さな板が翼端上下に取り付けられていますが、A320や240は一般的なウイングレットです。
このほか、リージョナルジェットやビジネスジェットでも、多くの機種がウイングレットを装着するようになっています。
四発機から双発機へ
1980年代までボーイング747の独壇場だった長距離国際線でも、近年は同777やエアバス320などのエンジンを二個備えた双発機の進出が目立ち、787や250XWBの登場でこの傾向はさらに高まっていくでしょう。この理由の一つは、エンジンの高出力化や機体の軽量化技術の進歩で、従来は四発機しか飛べなかった長距離を双発機が飛べるようになったことです。双発機は、四発機と比べて燃料消費はもちろん、エンジン数が少ない分メンテナンスコストも抑えられます。また、同じ双発機でも、最新のボーイング787のエンジンは、767と比べて機体の軽量化などと合わせて燃費が約20%改善し、しかもCO2を約20%、NOXを約15%削減するなど、環境に優しい仕様に進化しています。
もう一つの理由はエンジンの信頼性の向上です。双発機はエンジンが一基故障すれば即、緊急事態ですから、以前は60分以内に緊急着陸できる飛行場がある範囲しか飛行が許可されませんでした。しかし、現在では、多くの機種が「3時間以内に緊急着陸できればいい」というICAOのETOPSI-180ルールを満たしており、長時間の洋上飛行も可能になっています。
航空会社の温暖化対策の具体的取り組みの手法は、大別して3つの側面に分類できる。
①飛行時の対策
エンジンをスタートしてから、地上走行、離陸、巡航高度を飛行して、着陸してゲートに入るまでの一連の作業はすべて燃料を消費するために、飛行計画の段階からさまざまな工夫を行っている。最適な高度と速度を選択することは燃料消費に大きく影響するほか、着陸時にエンジンの一部を停止することも広く行われている。飛行時における対策は一般的に削減効果が非常に大きいものの、天候や管制、空域の問題など、航空会社独力で解決できない問題も多く抱えている
②地上時の対策
航空機が地上滞在中に実施する対策で代表的なものとしてはエンジンのコンプレッサー部分の水洗があるエンジンは使用するにつれて、コンプレッサー(圧縮器)部分に微小なほこりが付着し、燃費効率が悪化するため、定期的にコンプレッサー洗浄を行うことによりその性能を回復させている。また、駐機中に機体の補助動力装置 (AuxiliaryPower Unit,APU)よりもエネルギー効率が高い地上電源装置(GroundPower Unit,GPU) を優先利用することも省エネルギー化に寄与している。
③ 搭載時の対策
航空機の消費燃料は運搬する重量に依存するため、搭載物品をいかに軽量化するかが重要である。航空会社はシート、貨物コンテナ、カートなどの仕様を軽量化しているほか、機内食に使うお皿などの軽量化にも取り組んでいる。また、一部の機体を無塗装にする試みもこの軽量化対策の一環である。
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