航空整備士といえば、かつては大学の理工科系の学生に人気の職業であった。残念ながら現在ではIT産業など他分野での躍進もあり、少々地味な存在になった感はあるが、航空の安全を裏方で支える重要な仕事であることは変わりがない。
一口に整備士といっても、航空運航整備士から一等航空整備士まで資格や業務内容も様々である。特に、新興航空会社やLCCなど航空界にどんどん新しい会社が誕生するようになって、航空機の整備のあり方も多様化してきたことが注目される。その最も大きな出来事が整備士の現場に新たな制度が導入されたことである。それは、1999年に航空法が改定され、整備士資格制度の見直しによって「運航整備士」と呼ばれる新しい資格と業務内容を伴う整備士が誕生したことであった。
この新制度は2000年9月から始まった。その特徴は、航空機の保守および軽微な修理はそれまでの航空整備士でなくてもよくなった点だ。これは、航空分野での規制緩和の結果生まれたものである。
一等航空整備士は整備の最終確認を行う重責を担うもので、国家試験は年度によっては合格率「ひとケタ」という超難関となっている。試験科目は筆記と実技。筆記では航空力学、エンジン、電気部品それに航空法などの知識が問われ、これに合格すると実際に航空機を使った口頭試験と実地試験が待っている。その内容は、点検や検査に関する事項や作業、機器の取り扱い方法などの知識と経験がチェックされるものだ。ちなみに一等航空整備士の資格は、パイロット同様型式限定となっていて、試験に合格した機種だけの最終整備確認を行うことができる性格を持つ。他の機種をも担当するとなると、それぞれの機種の試験を受けなければならないのである。
航空機の整備は、M整備からT整備まで段階的に分かれており、基本的に「航空整備士」という国が発行する資格を持った者が整備に当たってきた。JALでは4年ほど実務経験を積んで、だいたい20代後半には一等航空整備士の免許を取得するのが慣習になっている。そして、さらに約10年、知識と経験を積み重ねて社内試験に合格すると、「ライン確認主任者」に任命されて空港のゲートなどの現場で整備の指揮をとり、便を出発させてよいかどうかのサインを出す重責を担うことになる。
JALでは、航空機の近くで帽子に月桂樹のマークがついている者が発見できれば、それがこのライン確認主任者だ。このように整備の現場では、熟練のベテラン整備士になるまでは長い年月と費用もかかり、一等航空整備士の数も機材や便数の増加に追いつかないといった危機感から、運航整備士制度が導入されたのである。大学などを卒業して整備の現場に配属されると、まずこの運航整備士を目指して資格を取り、次に上位職の一等航空整備士へと向けて、働きながら技術と知識を積み重ねていくわけである。
航空会社か整備関連会社に就職するのが近道
メカニックとして働くには、ふたつの方法がある。航空会社に就職する方法と、航空会社の関連企業である整備専門会社に就職する方法である。どちらの場合も理工系の学生を対象として募集が発表される。学歴で見てみると、航空会社は4年制大学卒業以上、整備関連会社は整備専門学校を卒業した人を中心に採用することが多い。ただし、近年は整備専門会社でも、高等専門学校や4年制大学を卒業した人を採用するケースが増えてきている。
航空整備士の道を志す人は、大卒の場合、機械、電気、電子関連、とりわけ電子工学、コンピュータ関連の学部・学科を専攻していると有利である。これは、航空機が年々ハイテク化しているため。ただし、大卒の場合は当初、整備の現場を担当するものの、後に技術開発業務や管理業務へ配属されるのが一般的だ。
メカニックのもうひとつの大きな需要は、整備を専門とする航空会社関連の子会社にある。このような企業には、特定の航空機の整備や部品の整備。点検のみを行っているところが多い。中には、航空機の内部ではなく、航空機に積み込んでいるオーデイオ・ビジュアル関連を専門にする整備会社などもある。
このように、
航空会社関連の整備会社では、企業の整備内容に則してより専門的な知識を持った人材を必要とする。
航空会社や整備を専門とする会社では、公募も行っているが、学校推薦による採用も少なくない。もし、高校卒業を控えて航空整備士を志し、進学する学校の選択をするならば、学校選択の段階でどのような企業に推薦実績があるのかをあらかじめ知っておくと将来の就職が有利になる。
第三の整備士の道として、外資系航空会社の整備がある。多くの外資系航空会社は、日本航空などに整備を委託しているが、中には独自に整備を行っているところもある。こちらは時々新間の求人欄に募集が掲載されている。しかし、外資系になると整備士としての資格や経験が求められ、また相当の英語力を求められることが多い。
整備作業に従事しながら勉強しさらに資格を取得する
航空会社や整備会社に入社し、実際に整備の仕事に就いたからといって一人前の整備士になったということにはならない。整備作業に従事しながら勉強し、資格を取得する必要がある。資格には、一等航空整備士、二等航空整備士、三等航空整備士の三種類があり、二等と三等の各整備士は、整備・確認できる航空機の重量に制限が設けられているが、一等航空整備士には重量制限がなく、航空機の型式ことに資格が与えられる。つまり、航空会社や関連会社の整備士として一人前に活躍するためには、一等航空整備士を志し、しかも整備できる航空機の型式を増やしていく必要があるということだ。これは、航空機がそれぞれの独自の開発を進めているために、航空機の整備を十把ひとからげに処理できないためである。
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