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こうした航空無線機の不備は、戦闘機の実戦的運用においても大きな影を落とし、不利な結果をもたらした。具体的には日本の戦闘機では空中において長機と列機の間で無線でのコミュニケーションがほぼ不可能だったことから、指示は手信号や小型の黒板を使ったスタイルを取るしかなかったため、一度乱戦に巻き込まれてしまうと後は個々のパイロットの能力のみが頼りとなった。
対してアメリカ機は無線機を有効に活用することで、危機に陥った機が無線で救援を求めると、瞬く間に味方機が集まって来たと言われており、それによって戦況が逆転することも少なくなかった。
とはいえ日本側がこうした状況に甘んじていたわけではなく、太平洋戦争後期には陸軍の場合は四式飛三号無線機、海軍の場合は三式空一号無線機といった新型機が導入され、調整さえ上手くいけば共にそれまでの機器とは比較にならない使い勝手の良さを見せたとも言われている。
ただしこの時点においても周波数はHFであり、より航空無線機に適した小型のVHF無線機を実用化することは叶わなかった。
現代、どのような航空機であれ、実用的な無線機を装備しないということはない。これが戦闘ともなればなおさらのことである。そうしたことを鑑みると、実用となる無線機を持たずに太平洋戦争初期において素晴らしい成績を記録した、わが国の戦闘機パイロットの技量の高さには驚かざるをえない。
仮に開戦の時点でアメリカ並の高性能VHF無線機が完備されていれば、戦闘はさらに有利になったはずである。