目次

飛行機という金属の塊が空を飛ぶわけ

1.飛行機はなぜ飛ぶのか《揚力と抗力》
『どうしてあんなに重い物が飛べるのか』『鉄の塊が飛べるのはなぜか」「飛行の原理は』
と形は変わっても質問の内容は同じ。特に『鉄の塊』という表現は大人でも使うし、冗談まじりに同じ質問をする大人も少なくない。
なぜ飛行機が飛べるのかを説明する前に訂正をひとつ。飛行機は鉄の塊ではありません

さて空中を飛ぶ飛行機にも、もちろん地球の重力は働く。でも飛行できる、つまり落ちないのは、揚力というものが働いているからだ。どこに働いているかというとそれは主翼だ。主翼に働く上向きの力、それが揚力。

でもその揚力は、前進に対抗する力(これを抗力という)に逆らって機体を推進させ、常に翼に空気流を作り続けなければ発生しない。抗力に逆らって機体を前進させるのは、プロペラやジェット噴射(つまりエンジン)の役目だ。

つまり抗力に逆らって機体を前進させる力と、主翼に働く浮揚する力がバランスされなければ、飛行機は飛べないということになる。逆に言うと、翼とエンジン(プロペラまたはジェット)がなければ飛行機は飛べない。

でもヘリコプタには大きな翼がないじゃないかとお考えだろう。でもヘリではあの回転するローターが、翼と推進力の両方を担当しているのだ。翼が空気中を進むと、周囲の空気は翼の上下面に沿って流れることになる。翼の断面は上面のほうが下面よりも膨らみを大きく作ってあるのが普通だ。これは上の翼面を流れる空気の速度を、より大きく加速するためだ。これは翼の迎え角を増すほど大きくなる。

空気の圧力は、流れる速度が速くなるほど小さくなり、遅くなるほど大きくなる。従って翼が受ける圧力は、下面でわずかな正圧、上面では大きな負圧となる。こうして翼全体としては上向きの空気力を受けることになるのだ。

正確には、飛行方向に垂直な方向に働く空気力の成分を揚力という。これに対して飛行方向に平行な空気力の成分を抗力(抵抗)という。抗力は機体の進行に対してマイナス方向に働くから、飛行を続けるためには常にこれに打ち勝って前進する力(推進力)を得ていなければならない。その推進力をエンジンで得るわけだ。

簡単にいえば、機体の重量に等しい揚力を翼で発生させ、重力と上下方向の力のバランスを保つことによって、飛行機が空中を飛行できるわけで、それを継続するためには抗力に打ち勝つ推進力が必要ということになる。これが飛行機が飛べる原理だ。

2.金属の塊が浮かぶわけ
迎え角により異なる揚力
ジェット旅客機を大きな金属の塊とみる人がいてもおかしくない。B747-400は、国内線の場合は400人以上の乗客を収容し、東京と大阪を約1時間で結 んでいる。これも推力20tの強力なエンジン4基と、幅64.44mの巨大な翼のおかげといえよう。

飛行機の主翼を断ち切ってみる。このような断面形を翼型という。翼型に適当な迎え角をつけて前方から空気流をあてると、流れは前線で上下に分かれるが、後縁で再びいっしょになる。そのとき翼上面の空気流の速度は、翼にあたる前より速くなる。そのとき翼上面の圧力は大気圧よりも低くなるので、マイナスの圧力(負圧)が生じ、翼上面を吸い上げようと働く。

翼の下面では、空気流がせき止められようとするので、流れる速度が遅くなる。 すると翼下面の圧力が大気圧より高くなるので、プラスの圧力(正庄)を生じ、翼下面を押し上げようとする。翼弦のいくつかの点で、そこに働く圧カの 大きさを示す。負と正の圧力を合わせ計算するとこのように作用する。

上記の迎え角とは、飛行機の飛ぶ方向(つまり空気流の方向)と翼弦(翼型の 基準線)との角度をいう。迎え角を変えると、揚力を大きくしたり、小さくしたりすることができる。

揚力を抑える
高度は上げずに速度を上げる方法
飛行機が着陸しようとする場合は、飛行速度を減らし、定められた方法で降下しなければならない。そのためエンジン出力をしぼり、揚力を抑えて抗力を増すことが必要である。また、高度を上げずに速度を増す場合にも、揚力を抑える必要がある。

着陸時にはスポイラで揚力を減らす
着陸の場合はどうするのであろうか。 揚力を減らすのにはエンジンのスロットルをしぼってスピードを落とすのが一番簡単な方法なのだが、着陸失敗を考慮してエンジンの推力はある程度残しておく。

機長が着陸失敗と判断したのなら、エンジンを全開にして再び飛び立たなければならない。普通、接地速度は失速速度の1.25倍程度とされている。つまりは、接地した段階では、まだ失速速度に達していないことになる。ゆえに、速度はある程度保ったまま揚力を抑える必要が生じるが、あまり機首を下げると滑走路に機首がぶつかってしまう恐れがある。

そこで使われるのがスポイラという装置だ。着陸の最終進入コースで、パイロットが高度50フィート(約15m) を規定速度(失速速度の1.3倍)で通過した後、接地点標識をねらって接地する。接地直前にエンジンをしぼり、主車輸を接地させてから前車輪をつけ、逆推力、車輪ブレーキ、スポイラ(阻害板)を含む減速操作を行う。


3.航法士を失業させた装置《INSとIRS》
航空機を出発地から目的地まで、安全にまた効率的に航行させる方法を航法(ナビゲーション)という。かつては航法士という専門の運航乗員がコクピットに乗り込んで、機上で計算を繰り返しながら飛行した。この航法士を失業させたのがINS(イナーシャル・ナビゲーション・システム)だ。「慣性航法装置」と訳されている。

B747ジャンボで初めて実用化した、自動航法装置である。つまり地上の航行援助施設をまったく利用しない航法システムで、これと自動操縦装置とを組み合わせることによって、ジャンボはあらかじめ決められた目的地まで、自動的に飛行することができる

慣性航法の慣性というのは、ニュートンの第一および第二法則に述べられている慣性のことで、その原理を応用した精度の高い航法装置がINSである。機上に加速度計を備えて加速度を測り、これを時間的に積分して速度を求め、もう一度積分して移動した距離を求めるのが原理だ。

INSでは、飛行機の上にジャイロを利用して空間に対して一定の平面を作り、この面に前後、上下、左右の三軸に対する加速度計を積み込んでいる。出発に当たって条件を内蔵のコンピュータに記憶させておくと、加速度の値を自動的に積分しながら、位置(緯度・経度で示す)および速度を飛行中連続して指示することができる。

INSの機構は、専門家でも首をひねるような複雑さだが、操作はいたって簡単だ。出発前にINS操作・指示器のキーボードによって、出発空港、飛行ルートの通過点(ウエイ・ポイント)、目的地の空港の位置を、緯度と経度でコンピュータに記憶させるだけである。

このINSからさらに進んだのが、B767に初めて搭載されたIRS(イナーシャル・リファレンスーシステム、慣性基準装置)だ。
IRSでは、従来の機械式ジャイロに代わって、レーザー光線の特性を利用したレーザー・ジャイロを備えている。レーザー・ジャイロは機械的な作動部分がないため、信頼性と精度が大幅に向上した。

B767ではIRSを3組装備し、それぞれ3台のレーザー・ジャイロと3台の加速度計が、三軸方向にセットされている。3台のレーザー・ジャイロからのデータを組み合わせることで、機体位置、進路、機速、風向、風速などをコンピュータで算出、その情報をFMCS、FADI、EHSIなどに伝達している。

B767以降のIRS搭載ハイテク機では、膨大な情報量のデータベースを誇るFMCを備えているから、パイロットの作業はCDUに出発地と目的地の空港コード、使用ルートを入力するだけで済んでしまう。IRSではINSよりも操作はさらに簡単になっているのである。
この記事を見た人は、一緒にこんな記事も読んでいます!

ページのトップへ戻る