目次

日本や米国などの打ち上げられたロケットの歴史や今後の宇宙開発のまとめ

1.宇宙産業のこれまで
1969年にアポロ11号が人類初の月面着陸を成し遂げてから40年余り。宇宙開発はかつての国威発揚や軍事目的から、学術、商業利用へと裾野を広げてきました。

米ソの争いから実用衛星へ
初期の宇宙開発は、冷戦を背景にした米国と旧ソ連の威信をかけたものであり、同時に大陸間弾道弾や偵察衛星など軍事利用の研究や実用を兼ねていました。ソ連は1957年にスプートニク1号で世界初の人工衛星を打ち上げ、61年にはヴォストーク1号に搭乗したユーリイ・ガガーリンが世界初の有人宇宙飛行を実現します。これに刺激を受けた米国は、当時のケネディ大統領が「10年以内に月に人類を送り込む」と宣言し、その宣言通り、69年、アポロ11号の船長、ニール・アームストロングが「一人の人間には小さな一歩だが人類には大きな飛躍」となる足跡を月面に残しました。

81年、米国は初のスペースシャトルであるコロンビアを打ち上げました。再利用型とすることで打ち上げコストの削減が期待されましたが、帰還後の再整備コストが予想外にかかるうえ、86年に乗員全員が死亡する爆発事故を起こしてしまいます。人貨積載能力の高さや、宇宙実験室としての利用など、スペースシャトルの存在意義は残りましたが、商業利用の拡大という点では米国の目論見は外れました。この頃までにはフランス、日本、中国、英国、インドなども人工衛星の打ち上げに成功し、宇宙は既に米ソだけの競争の場ではなくなっていたのです。


2.日本の宇宙産業
70年に打ち上げられた人工衛星おおすみで、日本は独力で人工衛星を打ち上げた4番目の国となりました。2006年の統計では、日本の累計人工衛星打ち上げ数はCIS(旧ソ連)、米国に次ぐ世界第2位です。目的が商用および学術に限られ、純軍事利用の衛星を持たないことを考えれば、宇宙開発をリードする国の一つといっても間違いではないでしょう。

社団法人日本航空宇宙工業会の統計によれば、日本の宇宙産業の規模は、08年度の売上高(予測値)が2444億円で、うち1886億円がロケットや人工衛星などの「飛翔体」となっています。主要な国内メーカーとしては、ロケットでは三菱重工業やIHI、エアロスペース、人工衛星では三菱電機やNEC東芝スペースシステムなどが挙げられます。

現在主力の衛星打ち上げ用ロケットであるH-ⅡAは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の開発によるものですが、07年から打ち上げ業務はロケット開発元の三菱重工業に移管されています。同社は09年、韓国から人工衛星の打ち上げを受託しました。11年には、日本のロケットによる初の商用衛星の打ち上げが実現する見込みです。


日本の宇宙開発
日本が取り組む今後の宇自開発

日本では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)を中心に、様々な宇自開発利用に取り組んでいます。これまでに、100を超える衛星を打ち上げており、その実力が注目されています。


H-ⅡBロケット、HTVの活躍
日本の注目される宇宙開発技術として、JAXAと三菱重工業が開発した大型ロケット「H-ⅡB」があります。H-ⅡBは全長56.6m、従来の「H-ⅡA」より一回り大きく、静止軌道への衛星投入能力はH-ⅡAの5.8tから8tへ強化された、日本で最大の能力を持つクラスターロケットとして活躍が期待されています。試験一号機は2009年に鹿児島県の宇宙機構種子島宇宙センターから打ち上げられ、国産初の無人宇宙輸送機「HTV」の軌道投入に無事成功しました。

HTVは、全長約10m、直径約4mの円筒型で、国際宇宙ステーションに結合し、食料品や日用品、実験機材など、6tまでの貨物を輸送が可能です。15年までに毎年1機ずつ打ち上げられる計画で、09年の初飛行では、海洋およびオゾン層観測用の日米実験装置など、4.5tを輸送しています。「ポスト・シャトル」の中核になる無人輸送機として注目されています。

JAXAと文部科学省は10年度から共同で、惑星探査や災害監視を目的とする中/小型衛星打ち上げ用の新型ロケットの開発に着手します。これは、長さ24m、最大直径2.5mの三段式ロケットで、打ち上げ費用は国産ロケットの主力である「H-ⅡA」や「H-ⅡB」と比べて3分の1以下の30億円に抑えることができ、機動性のあるロケットとして、宇宙産業活性化の呼び水になることが期待されています。12年の打ち上げをめざしています。

このほかにも、人工衛星の打ち上げに数多く取り組んでいます。09年には情報収集衛星「光学三号機」を搭載したH-ⅡAロケットが、種子島宇宙センターから打ち上げられました。光学三号機は、宇宙からでも地上数十cmのものを見分ける能力を持つ優れた衛星で、10年からの本格運用を予定しています。
将来的には、光学衛星とレーダー衛星をそれぞれ2基ずつの4基体制をめざしており、11年度には光学とレーダーの衛星を順次打ち上げる予定です。
また、10年には、燃料を燃やす代わりに太陽が放つ光の粒子の力を帆に受けて飛行する省エネ衛星の実験機を打ち上げる予定です。帆の部分には膜のように薄い太陽電池を貼り付け、自家発電も可能な衛星で、積み込み燃料の少なさを利点に木星探査などへの利用が期待されています。


3.各国の宇宙開発の今後
人類が宇宙空間へ進出する宇宙開発は人類共通の課題で、米国やロシア・中国など、様々な国で開発が進められています。今後成果が期待される各国の宇宙開発技術を紹介します。

米国の動向
米国では、宇宙開発に関わる計画を担当する連邦機関のNASA(米国航空宇宙局)を中心とした活動が行われています。2004年には、新宇宙政策(VSE)として、有人月探査や火星探査の実施に向けた計画を発表しています(2010年、オバマ大統領が中止を表明)が、その第一歩として09年に「エルクロス」と「ルナー・リコネサンス・オービタ2」の打ち上げに成功しました。

「エルクロス」と「ルナー・リコネサンス・オービタ1」は、将来の長期間有人月探査を見据えた月探査機で、月に水が存在するかどうかや、宇宙の放射線が人体にどのような影響を与えるのか、などの調査に取り組んでいました。その調査の結果、月面の太陽光が当たらないクレーターの底に、水が存在していることを確認しています。
さらに月の水を解析することで、将来の有人月探査において、飲料水の確保やロケット燃料として利用される水素の供給などが可能になると期待されています。

ロシアや中国など、アジアの動向
ロシアでは、衛星軌道上へ大重量の貨物を投入するために、アンガラロケットの開発を行っています。モスクワのクルニチェフ国家宇宙科学製造センターのもとで開発が進められ、ソビエト連邦時代に活躍していたプロトンロケツトに並ぶ能力を有すると期待されています。米国のEELVと同様に規格化された設計が為されており、必要に応じて1000から2万4500kgの貨物投入を実現します。回収可能を特徴としたバイカル・ブースターを用いているため、大幅なコスト削減も可能です。

最初の打ち上げは、ロシアのアルハングリスク州にあるプレセツク宇宙基地からアンガラA三バージョンで行われる予定で、打ち上げは12年以降になると見られています。重量級のアンガラA五ロケットはプレセックとバイコヌールの両方で打ち上げを予定しており、注目されています。

中国でも国産月周回衛星「婦蛾二量による二回目の月探査を予定しています。さらに、探査車両を月面に着陸させる婦蛾三量の打ち上げ計画にも着手しています。
また、韓国でもロシアからロケットを導入し、09年に初の人工衛星搭載ロケット「羅老」の打ち上げに挑戦するなど、今後の活動が注目されています。


4.スペースシャトルのその後
1981年のコロンビア号打ち上げ以降、長年利用され続けていたスペースシャトルは、2010年に退役する予定となっています。代替される宇宙船としては様々なものが想定されています。

ロシアのソユーズを利用
スペースシャトルの退役後は、現在も活躍しているロシアの宇宙船ソユーズが「宇宙の足」として利用されます。シンプル・イズ・ベストと評されるほどの、「ローテク」「安全」「低価格」をセールスポイントとした活躍に期待が集まります。

ソユーズは旧ソ連が開発した全長約7m、重量約7tの二人乗り宇宙船です。二段式のソユーズUロケットの先端に付けて打ち上げる方式を取っており、これまでに3回のモデルチェンジを行っていますが、基幹技術は開発当時のものを引き継いでいます。設計は古いものの、過去105回におよぶ打ち上げを行ってきたなかで、1971年以降40年近く死亡事故が起きていないという安全性を持っています。2009年にも、日本人宇宙飛行士の野口聡一氏を乗せ、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から国際宇宙ステーション(ISS)へ向かいました。

打ち上げ費用の低コスト化にも一役買っています。
スペースシャトルでは、一回の打ち上げに約800億円もかかりますが、ソユーズは200億円以下で人員の輸送が可能なのです。また、資材運搬用にはソユーズとほぼ同型の無人宇宙船プログレスが、年に数回、打ち上げられています。


オリオン宇宙船計画
米国NASAでもスペースシャトルに代わる新たな宇宙船開発事業として、「コンステレーション計画」を立ち上げ、そのなかでカプセル型宇宙船「オリオン」を計画しましたが、10年、オバマ米大統領は財政難を理由に計画を中止すると表明しました。

「オリオン」はソユーズ型のカプセル型字宙船です。以前はCEVと呼ばれ、底面直径5mと、重量約25t、かつて月面探査に使われたアポロ宇宙船と比べて2.5倍の居住空間を持ち、6名のクルーが生活できる広さを有しています。その運搬能力でISSへの人員の輸送手段や、有人月着陸計画、有人火星探査への利用が期待されています。
オリオンの打ち上げ機(CLV)には、専用のロケット「アレス1」が利用される予定で、固体ロケットブースターや、液体酸素と液体水素を用いるJ12Xエンジン一基を搭載し、スペースシャトルと同様に字宙船を地球低軌道へ打ち上げる能力を有しています。

コンステレーション計画の今後は、オバマ大統領の表明により不透明なものになっていますが、確かなことは、スペースシャトル退役後の米国の有人宇宙船計画が大きく遅れ、ISSへの足は当面ソユーズに限られるということでしょう。

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