1.自動操縦装置《オートマチック・フライト・コントロール・システム》
現代の旅客機を特徴づけているコントロールの自動化装置は、AFCS(オートマチック・フライト・コントロール・システム、自動飛行制御装置)と総称されている。
これは自動操縦装置、航法装置(INSやIRS)、自動推力調整装置、計器
着陸装置を結合させたシステムだ。
自動操縦装置(APS、オートマチック・パイロット・システム)は、飛行状態を計器類で把握し、機体の姿勢変化に応じてコンピュータで操縦装置を操作し、航法装置(INSやIRS)を結合させて、あらかじめプログラムされたコースを目的地まで自動的に飛行させるシステム。
自動推力調整装置(ATS、オート・スロットル・システム)は、自動的にパワー(スラスト)レバーを動かして、エンジンの推力を適切に調節する装置だ。スピード・セレクターでセットした速度(指示対気速度)を保持するよう、推力調節を自動的に行なう、自動着陸の際に電波高度計が約50フィートになると推力を自動的に絞る、さらに飛行状況に応じてコンピュータが計算した最大許容圧力比を保つという機能を備える。
自動着陸もこのシステムを備えることで初めて可能になる。また推力調節が不要だから、パイロットのワークロードも大幅に減少した。自動着陸装置(ALS、オートマチック・ランディング・システム)は、進入から接地の操作までを自動化した装置。
従来から視界が悪くても滑走路への進入は、計器着陸装置(ILS、空港に設置された装置)によって可能だったが、最後の接地操作だけは、パイロットが外部の視界を頼りにマニュアルで行なわねばならなかった。
自動着陸は、計器着陸装置、自動操縦装置、自動推力調整装置、電波高度計などが密接に連動することで、可能になっている。
ICAOでは全天候自動着陸装置の開発を目標に、着陸に5つのカテゴリーを設定している。
・カテゴリーI(CATI)着陸するか否かを決定するデシジョン・ハイト200フィート、滑走路視程2600フィート以上における着陸
・カテゴリーⅡ(CATⅡ)デシジョン・ハイト100フィート、滑走路視程1200フィート以上における着陸
・カテゴリーⅢa(CATⅢa)滑走路視程700フィート以上で、着陸最終段階で外界を見ながら着陸する
・カテゴリーⅢb(CATⅢb)滑走路視程150フィート以上で、外部視界に頼ることなく着陸し、外界を見ながら引き続き地上滑走する
・カテゴリーⅢc(CATⅢc)滑走路視程がゼロの状態で、外部視界に頼らず着陸および地上滑走を行う
旅客機にはオート・フライト・コントロール・システム(AFCS)と呼ばれる自動操縦装置がついている。これは操縦士の負荷を減らし、運航をより安全なものとするために開発された。
国際線のフライトでは10時間を超える路線もある。いくら副操縦士が控えているとはいえ、この長時間を休みなしに飛ばすのには危険性がともなう。
飛行機は3次元の動きをするので自動操縦を導入するのに障害が少なかったといえる。
自家用車の世界では、ようやく自動操縦装置の実験が始まった段階であるが、これは自動車は2次元の動きをするので、各自動車間の動線が重なりがちである。
しかし飛行機には「高度」という軸があるので、比較的安全に自動操縦を導入できた。つまり、飛行機は高度さえ気にしていれば、他の飛行機と交錯することは避けられるのだ。
また、細かい曲線をつないで目的地まで達することは無く、航路は直線と直線を組み合わせたもの。このような事情から自動操縦装置は早くから研究が進められ、実用化も早かった。
自動操縦装置の原理は、1914年にエルマー・アンブローズ・スペリーが発表している。自動操縦装置も戦争の力を借りて発展し、第二次世界大戦中の大型爆撃機にはすでに装備されていた。
当初の自動操縦装置はジャイロに信号を取りつけ、機体の傾きを信号が感じ、それを修正するための操作を機械が自動的にするというもの。
おもに飛行機を自動的に安定させるために使われた。
現在の自動操縦装置はもっと進化していて、理論的には自動的に離陸し、自動的に目的地まで飛び、自動的に着陸までをこなす。これはジャイロと信号によるコントロールに、コンピュータを組み合わせたからできる芸当である。コンピュータに進路などの情報を打ち込むだけで、あとは勝手にコンピュータが操縦を肩代わりしてくれる。
しかし離陸だけはパイロットが行う。コンピュータにはとっさの判断ができないからだといわれている。
着陸に関してはパイロットの選択にまかされるが、コンピュータはかなりうまく着陸させるようである。現在では視界のきかない空港では、自動操縦で降りたほうが安全とまでいわれるようになった。
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