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日本の空港の赤字がひどい!負担しているのは私たちの税金

1.国管理空港と地方管理空港の違い
日本の空港の赤字がひどい!
規模の小さい離島空港は別としても、比較的大きな空港、たとえば羽田空港や伊丹空港は、会計検査院や『日経グローカル』の調査からは対象外となっていた。なぜだろうか。

会計検査院や『日経グローカル』は地方管理空港を調査していた。日本には、地方管理空港とは別に、他の組織が管理する空港がある。

日本の空港は、空港法という法律によって区分されている。空港の設置管理によって、大きく分けて6つの区分がある。区分によって空港の管理者が異なり、その管理者が空港の管理・運営費を負担している。

第一は「会社管理空港」である。成田、関西、中部の3空港は、自身の会社が空港を管理している。いずれも株式会社であるが、株式市場への上場はなされていない。今のところ、成田空港のみ上場が検討されている。成田空港の株式はすべて政府が保有しているが、関西空港と中部空港は、政府と地元の地方自治体と民間企業が株式を保有している。

第二は「国管理空港」である。たとえば、羽田、新千歳、伊丹、福岡空港など、比較的規模の大きな空港が、国管理空港に分類されている。国管理空港の管理・運営について、地方自治体の関与の程度は小さく、資金はすべて国によって賄われている。大規模空港が多いが、八尾空港のように定期便が就航していない国管理空港も存在する。

地方自治体は、会社管理空港と国管理空港を管理していない。そのため、会計検査院や『日経グローカル』の調査で、対象から外されていたのである。

第三は「特定地方管理空港」である。旭川空港や秋田空港などが該当する。特定地方管理空港は、国が建設するものの、その運営は地方自治体に委託されている空港である。

第四は、「地方管理空港」である。地方管理空港は、地方自治体が空港を建設し、管理・運営も地方自治体が行う空港である。能登、福井、静岡神戸空港のように、新聞記事で収支が話題となる空港は、ほとんどが地方管理空港である。

それ以外の空港としては、ほとんどが規模の小さい「その他の空港」、さらには自衛隊や米軍との「共用空港」がある。その他の空港も地方自治体が設置して管理するために、地方管理空港に該当する。

以上の区分は管理・運営費を負担する管理者による区分であったが、この区分によって空港を建設する際の整備費の負担割合が異なる。会社管理空港は空港会社が整備費を100%負担、国管理空港のうち羽田空港はやや特殊で国が100%負担、他の国管理空港では国が3分の2で地方が3分の1の負担、地方管理空港では国と地方が折半、などとなっている。

ここで、空港の整備費の負担と、管理・運営による負担が異なることに注意したい。空港が建設された後、管理・運営に国と地方自治体のどちらが主に関わっているかによって、国管理空港と地方管理空港に分かれるのである。


2.空港の赤字をどう思うか
「福島空港は3億円の赤字」「大館能代空港は3億円の赤字」「佐賀空港は1億7000万円の赤字」。このように聞いて、みなさんはどのように思うだろうか。
おそらく、みなさんの反応は次の3つに分かれるだろう。

①空港が赤字だなんて、許すことができない。そんな空港は廃港だ。
②ある程度の赤字は仕方ないが巨額の赤字は問題だ。
③空港は赤字になって当然なので、問題ではない。

これらのなかで、ほとんどの人の反応は①に近いのではないか。
企業で言えば、赤字が累積し、債務超過に陥った場合、債権者に対して財産を処分する。
すなわち、清算が行われる。

しかし日本では、赤字を垂れ流し続け、累積赤字が巨額となった空港でも、廃港になることはまずない。空港の赤字は、国や地方自治体が補填してくれる。地方自治体や地域が切望し、国から補助金を受けて建設した空港だから、そう易々と廃港にはできないのである。

だが、「打ち出の小槌」からカネが出てくるわけではない。そのカネは納税者が負担している税金や、航空機の利用者が負担しているチケット代金の一部なのである。あなたの住んでいる地方自治体に、その地方自治体が管理・運営する空港があるとする。それが赤字空港ならば、あなたが負担している税金(地方税)が、赤字空港の維持に使われている可能性は高い。その空港を全く使ったことがない人でも、いくらかの負担金を支払っていると思ってよい。

しかも、あなたが行ったことがない県外の赤字空港に対しても、あなたが負担している税金(国税)が、赤字の補填に使われている可能性すらある。また、あなたがドル箱路線の羽田=伊丹線や羽田=新千歳線の利用者なら、あなたのチケット代金の一部が、遠方の赤字空港に使われている。

こういったカネの流れが、赤字空港と関係のない人々の負担が、赤字空港に費やされていることをどう考えるべきだろうか。空港の赤字が永続的に続くならば、負担も永遠に続くかもしれない。少しの負担なら許せるかもしれないが、極端な赤字の場合は、国や地方自治体の財政を圧迫する。このとき、廃港という選択肢も視野に入ってくる恐れもある。

日本列島には100近くの空港が乱立している。これだけの空港がひしめくなか、赤字に悩む空港は、地方部(首都圏・都市部以外)を中心に多く存在するのである。


3.「着陸料」「航行援助施設利用料」ほか空港の使用にかかる料金とは
値下げしても世界最高レベル
航空会社のベースとなる空港。だが、その整備には膨大な資金が必要だ。そのため日本では一般会計に加え、「着陸料」や「航行援助施設利用料」などを財源とする空港整備特別会計が導入されている。その中心が着陸料等の空港使用料収入で、航空会社が着陸ごとに空港(運営する法人など)へ支払う。

着陸料は各空港とIATA(国際航空運送協会)との協議によって決まるが、成田では2005年10月より、航空機の騒音レベルに応じて設定した料金率に機材の最大離陸重量を乗じた額を国際線着陸料として設定。

ジャンボ機(ボーイング747―400、重量395t)では73万0750円、これより騒音レベルが低い同777―200(276t)では45万5400円となった。それ以前は、ジャンボが94万8000円、777が66万2400円だったので、着陸料は大幅に値下げされたことになる。これを旅客1人あたりにすると、ジャンボ機では2559円(座席数430席、搭乗率70%=301人等が前提条件)。関西空港では同2743円、中部空港では同2178円となる。

ところが、世界の主要空港では、ニューヨークのJFK空港が同1815円、パリのシャルル・ド・ゴール空港が1284円、ロンドンのヒースロー空港にいたっては365円(成田の約7分の1)と、いずれも日本の空港を大きく下回る。

一部値下げされたとはいえ、依然として日本の空港の着陸料の高さは世界の主要空港のなかでも突出しているのだ。これには、空港建設の債務の償還などが影響しておりこれ以上の値下げは難しいとされるが、着陸料の高さは日本の航空会社の経営にも大きな負担となる。

加えて、近隣のソウル・仁川空港や香港国際空港などが、利便性と着陸料の割安さを売りに、アジアのハブ空港としての地位を着々と固めつつあり、成田や関空の地盤沈下を危惧する声は少なくない。


その他の空港使用料金
一方、「航行援助施設利用料」は、無線施設、通信施設、管制施設など、航空機の航行を援助するための空港施設の整備、運営に必要な費用を賄うため、1971年に設定された。日本発着の航空会社および日本の飛行情報区(領空と公海上空を含む空域)を通過する航空会社から徴収される。

料金は最大離陸重量、飛行距離などによっても異なるが、たとえば東京/大阪線のジャンボ機(ボーイング747―400、最大離陸重量272.2t)では1フライト32万2140円、東京/福岡では同45万5910円。

着陸料や航行援助施設利用料のほかにも、たとえば成田空港では、国際線停留料、国際線搭乗橋利用料などを各社から徴収している。

加えて旅客も、旅客サービス施設使用料、空港税、航空保安料などを空港側へ支払う(その有無や料金、徴収方法等はそれぞれ異なる)。これら旅客が支払う料金を加えると、空港を利用するために旅客1人あたりが負担する料金の総額は、また異なってくる。


4.日本の空港を生かすには
EUの格安航空会社の雄であるイージージェットやライアンエアのウェブサイトを見ると、信じられないほどの価格でヨーロッパ中を旅行できることが分かる。EUが特殊なのではない。ASEANでも、エア・アジアを筆頭にして、EUと同様のことが起きつつある。

なぜ、EUやASEANにできて、日本はできないのか。それは、EUは経済統合が実現し、ASEANも統合を進めており、そうした経済統合が、空に劇的な変化をもたらしているからである。

日本の場合の経済統合と言えば、東アジア共同体であるが、まだ構想段階で具体的には何も進んでいない。東アジア共同体が誕生すれば、多くの航空機が日本の空港を飛び交うのかもしれない。しかし、いつになったら東アジア共同体は実現するのだろうか。そんなに悠長に構えている時間はない。その間に、日本は衰退してゆくかもしれない。

確かに多くの空港をもってしまった日本ではあるが、多くの航空会社が飛び交う状況を作り出すことができれば、無駄と椰楡される空港を有効に利用できるのではないか。日本の空を変革させる可能性を秘めた世界の航空自由化の波に乗り、日本の空港を生かすべきである。

世界の空港は、民営化や地方分権化に大きく舵を切る一方で、国家戦略のレベルで空港をとらえている。日本の空港を取り巻く状況は、明らかに中途半端ではないか。いつまでも変わることのできない日本の空港は、いったい何にしがみついているのか。

赤字空港が単に無駄だと断じるのではなく、住民が赤字空港をガバナンスできる仕組みを創ってゆくことが重要である。財務情報を開示し、地方分権化と民営化によって財源と責任を譲渡してゆく。意識を空港「運営」から空港「経営」へと変え、地域の活性化につなげねばならない。

結局は、東アジアの経済成長にいかに対応していくかが、人口減少が進む日本の空港政策の課題であり、国際空港の戦略はこの視点から考えねばならない。日本の空に立ちこめる暗雲を取り払い、いわば空の鎖国から日本を解放すべきなのである。

日本の空港の活路とは、市場の力を生かしつつ、住民による適切なガバナンスを機能させるための仕組みづくりである。激変する世界の航空業界が日本の空港を呑み込んでしまう前に、「空港経営」の時代に求められる改革を躊躇すべきではない。

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