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飛行機の機内食は調理されてから約3時間で乗客の口に入る

1.空飛ぶレストランのメニュー
機内食は窮屈で長い空の旅の楽しみのひとつではないでしょうか。
でも国内線(特に日本の)では、時間的な制約もあって茶菓中心のサービスのみで、スーパー シートや特定の長距離路線、早朝・最終便で、軽食が提供される程度だから、楽しみというにはほど遠いです。

ルフトハンザ・ドイツ航空がずっと以前から実施しているような、必要な乗客がゲートで軽食のバッグを勝手にピッ クアップする方法もあります。ルフトハンザのパッケージの場合、飲み物、果物、サンドイッチ、チョコレートなどが入っていて、機内で食べるのも、降りてから食べるのも自由。客室乗務員のサービスも不要で、きわめて合理的で便利です。

さてお楽しみは国際線。ここでやっと機内食に対面できます。現在の機内食はIATA(国際航空運送協会)の協定によって、エコノミークラスでは、ひとつのトレイに盛り付けたものしかサービスできず、また原則的にはアルコール類は有料となっています。

ファーストクラスには制限がなく、酒類ももちろん無料で、各航空会社はお国自慢の料理を含めた豪華な内容を提供しています。最近人気のビジネスクラス(Cクラス)がその中間にあたりますが、今や航空会社のショーウ ィンドウと言われるだけあって、限りなくファーストに近付いており、各社の競争がもっとも激しいのがこのビジネスの機内食のようです。

かつて日本航空が開発して評判となったざるそばや寿司は、今や世界の常識になり、最近ではうどん、たこやき、お茶漬けから、カツ丼、うなぎの蒲焼き、本格的日本料理までが登場しています。IATAの協定もかつてほどには厳密でなくなり、各社ともメニューに工夫をこらすと共に、サービスの宣伝材料としても力を入れています。

ただしエコノミーの機内食には、ドラスティックな変革は訪れておらず、ファースト、ビジネスと差別化は、シートと共に機内食にますます顕著なようです。最近ではパック旅行でもビジネスクラスを希望する乗客が増えている背景には、この現実もあるでしょう。

さて機内食を提供する業務をケータリングといいます。一般的に各航空会社はケータリング専門会社に、仕入れ、調理、 機内への搭載までを委託しています。

搭載する機内食数は、出発の24~36時間前に確定し、天災などで欠航した場合には、航空会社からの通告時間によってそれぞれ賠償されることになります。

機内食は調理されてから約3時間で乗客の口に入るというのがひとつの基準なので、納入は出発の2時間前に 完了する。そのため材料の鮮度、味付け、火加減などに、機内食シェフのなみなみならぬ努力が払われているのです。

●機内サービスで開封され、飲み残した酒類の行方について。飛行中の酒類は免税扱いになっているので、着陸後に残量を税関係官立合いのもとに計量し、廃棄処分にされます。


2.フライト中の飲酒は地上の1.5倍酔う
国際線では機内でワインなどのアルコールを無料で飲める場合があります。このサービスが楽しみだという人もいますが、だからといって飲みすぎは禁物です。

機内の気圧は地上よりも低くなっているため、脳に対するアルコールの効果を増大させます。そのため、地上よりもずっと酔いが速く回ってしまうのです。少ししか飲んでいないはずなのに、なぜか悪酔いしちゃったという経験のある人もいると思います。

機内では地上の1.5倍の量を飲んでいると思って、いつもより飲む量をセーブしたほうがいいでしょう。無料だからといって、ついいつもよりたくさん飲んでしまうという人は注意が必要です。

また、ありがちなのは、飛行機に乗る前日まで準備に追われて睡眠不足、当日はあわてて家を飛び出したため朝食もとっていないというパターンです。こんなときには、酔いやすいだけでなく、フライト中の機内は気圧が低いため、気分が 悪くなったり脳貧血を起こしやすくなります。

飲みすぎは脱水症状をも起こしやすく、いわゆるエコノミークラス症候群を招きかねないので要注意です。 なかには、飛行機が苦手な人が恐怖を紛らわそうと、飛び立ってすぐにアルコールを飲み出すことがありますが、これは逆効果です。必要以上にアドレナリンの分泌を促して、かえって怖くなってしまう場合もあるのです。

飲むなら、機内で落ち着いた頃に、リラックスできる程度が好ましいです。 ちなみに客室乗務員 は、アルコールがらみのトラブルに備えて、各乗客がどれくらいのアルコールを飲んだか把握しています。たとえば、気分が悪くなった乗客がいた場合は、「このお客様は、ワインを3杯召し上がりました」などと、たちどころに答えられます。客室乗務員は、そんな細かなところまで乗客をケアしているのです。

3.機内の台所ギャレーなんとその3割は日本製
国際線の旅客機で機内食が配られたとき、ふと、こんな疑問を抱いたことはないでしょうか。メインディッシュの肉や魚は温められているのに、サラダやデザートはちゃんと冷たく調理されています。いったい狭い機内のどこで調理しているのでしょうか。

食事や飲み物は「ギャレー」と呼ばれる機内の調理室で準備されます。ここには調理台、スチームオーブン、電子レンジ、コーヒーメーカー、湯沸かし器、貯蔵庫などが設置されています。

国際線の場合、各種飲み物と1.5~2食ほどの機内食が必要で、約300人乗りの大型旅客機では、ギャレーは6か所に、国内線では機内食がないためギャレーも小型で4か所ほどに設置されています。

ここに、食事や飲み物を配るための車輪付きカートも収納されています。機内食のメインディッシュだけが温められていて、サラダやデザートが冷たいのはなぜか、という疑問ですが、ギャレーは調理室とはいえ、機内で火を使うわけにいかないのです。

そこで、カートにセットしたメインディッシュだけを加熱し、ほかの部分は冷えたままで調理できるという機能がカートには備えられています。カート内には加熱板があり、温めたい食材をそこにあたる場所に配置するようになっているのです。

さらにギャレーは、コンパクトで機能性に優れていることが求められます。機内の狭いスペースで乗務員が効率よく使える機能、デザイン、耐久性を備え、しかも軽量であることが絶対条件です。

この難題を抱えたギャレーは専門のメーカーによって製造されていますが、じつは日本のメーカーが世界を席巻しているのです。日本のジャムコという会社が、旅客機用ギャレーの世界シェアを占め、絶大な評価を得ています。 2003年には、ボーイング社から優れた搭載機器製作会社に贈られる「ボーイング・サプライヤー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。日本の技術が世界の空を制覇しているのです。


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