ギャレーは機内の調理室
ギャレーとは、乗客に食事や飲み物を提供するため、機内に設置された施設である。国内線の場合は乗客に提供するのは飲物とスナック程度なので、ギャレーも小型ですみ、約500人乗りのB747SRでも4か所である。しかし、国際線のB747ERの場合は、ギャレーは8か所に設置される。
乗客の人数よりも、乗客が機内に滞在する時間によってその数は増える。
ギャレーはユニットとしてつくられ、航空機メーカーに納品される。この分野も日本が得意とするところで、シェアが30%を超える企業もある。
ギャレーには肉類を再加熱するスチームオーブン、電子レンジ、コーヒーメーカー、湯沸かし器、冷蔵庫、飲料水タンク、機内食を格納するコンテナなどが備え付けられている。このコンテナにはキャスターがついており、ギャレーで温められたあと、そのまま乗客のところまでサービスにいけるようになっている。
機内食は、空港のそばにあるケータリンク会社と呼ばれる機内食を専門につくる会社で作られる。日本の空港から飛び立つ飛行機は、ここで用意された機内食を積み込む。
火を使わずに加熱
出発直前にケータリング会社から届いた機内食は、すぐさまコンテナに積み込まれる。機内に積み込まれたあとは冷蔵状態で保存され、機内食を提供する時間が近づくと、キャビンアテンダントはコンテナを温めるスイッチを押す。
ファーストクラスやビジネスクラスの食事は、ひとつひとつの料理をキャビンアテンダントが加熱する場合が多い。これは、サラダなどのように加熱に注意を払わなければならない食材を提供することが多いからだ。この場合はカートによる加熱ではなく、スチームオーブンや電子レンジを使う。したがって、ファーストクラスやビジネスクラスの設定がない飛行機には、これらの調理器具は省略されることがある。
スチームオーブンとは、お湯を沸かしたときに発生する水蒸気をさらに加熱してできた、過熱水蒸気をエネルギー源とするオーブン。通常の解凍や加熱ばかりではなく、食材に焦げ目までつけることができる。蒸気を使うので蒸し器としても使える。
また、ギャレーにはゴミ箱も設置されており、機内で発生したゴミはギャレーに集められる。機内で燃えるゴミと燃えないゴミに分別される。
2.「機内食」は機材の大型化でバラエティ豊かに
旅行者にとって、機内での最大のお楽しみといえば食事の時間だ。旅慣れた人が増えたとはいえ、高度約1万mのレストランは、飛行機でしか味わえない醍醐味だろう。
その中身は航空会社や利用クラス、路線(飛行時間)などによりさまざまだが、エコノミークラスでも多くの場合、メインディッシュの選択ができるなどそれなりのバラエティがある。ジャンボ機(ボーイング747)などの大型機の登場で、機内に広めのギャレー(調理配膳室)を設置できるようになったことなどが、機内食の多様化に貢献した。
世界的に見ても機内食の中心となるのは洋食だ。
加えて、日本発着便で和食(または和風のアレンジ)が定番になっているように、発着国のローカル食が選択肢に加わることが多い。
シートと同様、機内食も利用クラスによる格差が大きい。一般的に、料理の点数とクオリティ、食材、食器、サービスの方法に至るまでその差は歴然としており、一部の短距離路線を除き、ファーストとビジネスでは前菜からメイン、フルーツとチーズ、デザートまでのフルコースが楽しめる。ビジネスクラスのメインのチョイスの数は、和食を含む3種類程度が主流。現地発でも本格的な和食をサービスする航空会社が増えている。
またファーストでは、好きなメニューを好きなだけ、好きなときに頼めるケースも少なくない。
最近の特徴のひとつは、有名シェフのレシピによる料理が定着してきたことだ。
エアライン各社は最近、有名レストランや一流ホテルとのコラボレーションによる豪華メニューを機内で提供するようになった。著名なシェフたちの秘伝の味が、高度1万メートルの上空で楽しめるのだ。
その走りとなったのが、創作フレンチの巨匠として知られる東京・四谷の「オテル・ドゥ・ミクニ」のオーナーシェフ、三国清三氏である。三国氏は2001年春に当時のスイス航空(現在のスイスインターナショナルエアラインズ)と契約し、成田発チューリッヒ行きの便のファーストクラスとビジネスクラスで自身のプロデュースによる機内食メニューづくりに着手。
閉店した「雲の上支店」は多くの利用者のハートを射止め、ファンを広げてきた。
その三国氏が「機内食づくりは本当に難しい」と話す。人の味覚が変わる高度1万メートルの上空では、使える食材も味付け方法も地上とは大きく違うというのだ。
ドイツの研究機関「ブラウンホーファー協会」は以前、次のような調査・研究結果を発表した。「上空では気圧や湿度、振動、照明などの変化の影響を受け、味らいの感度が地上の3分の1程度に低下する」と。気圧が低下すると味らい細胞のはたらきが鈍り、甘いとかしょっぱいといった感覚が大きく失われる。風邪をひいたときのような感度になるらしい。
また空気が乾燥する機内は、食材のみずみずしさを奪うほか、味の重大要素である。香りを感じにくくさせる。フライト中のエンジン音や振動も味らいに少なからず影響をおよぼすそうだ。
三国氏をはじめエアライン各社とタイアップしたシェフたちは、そうした制約のなかでどこよりもおいしい食事をとチャレンジをつづけている。
現在、たとえば日本航空では、一流ホテルやレストランの著名なシェフで構成される「日本エスコフィエ協会」監修の洋食を
ファーストクラスで提供。
また、エールフランス航空では、フレンチの天才として世界に知られるギィ・マルタン氏監修のフランス料理をファーストクラスでサービスしている。
このほか、ビジネスマンの健康志向の高まりなどを受け、カロリー低めのメニューや消化のよいメニューの開発も進んでいる。
3.機内ゆえのハンデも
空飛ぶレストランを自負する各社の上級クラスに対して、トレイに載せて一度にサービスされるのがエコノミークラスの食事だ。それでも、一般的に前菜からメイン、デザートなどのアイテムがコンパクトに並び、主莱にはビーフやチキン料理などに加えて、カレーや井物などのカジュアルなメニューも用意される。
宗教や健康上の理由から通常の機内食が食べられない人のためには、各社とも事前予約制の各種特別食を取りそろえている。
街のレストランとは異なり、機内食はケータリング(機内食調製)会社が作った料理をいったん冷蔵、専用のトラックで機内へ運び、クルーがオーブンや電子レンジなどでこれを再加熱して初めて乗客にサービスされる。
また、衛生上の観点からも制約が多く、上級クラスの和食の刺身なども生ではなくスモークしたり、酢でしめたうえで提供される。加えて、格安航空会社の台頭などで競争が一段と激化するなか、機内食にかける予算は総じて削減される傾向にあるようだ。
数々のハンデを負いながらも、多くの航空会社は乗客のニーズにかなった、オリジナリティの高い機内食を開発すべく、尽力しているのである。
地球温暖化の原因であるCO2の排出をいかに少なくするかは、エアライン各社に共通する重要なテーマです。CO2排出量は使用する燃料の消費量にほぼ比例するため、zjalでも、
ボーイングクラスで1機500キロ程度のダイエットを目標に消費燃料の削減を進めてきました。そのダイエットのターゲットは、機内食で使用する食器類にまで及んでいます。
そこで登場するのが、もう一つの課題「有田焼」です。
JALでは機体のダイエットを推進するため、たとえば機内食用のナイフとフォークには、従来のものに比べて厚さが0.2ミリ薄いものを導入。またファーストクラスやビジネスクラスの食事で使用している磁器も、数年前から新開発の「軽量磁器」に変えました。
その軽量磁器を開発したのが、日本の磁器発祥地である有田周辺の企業グループなのです。磁器は薄くして軽量化すると、そのぶん割れやすくなります。
それを補強するには通常、アルミ酸化物の結晶を加えますが、そうするとこんどは重量が増してしまう。そこで素地中のアルミの一部をリン酸アルミニウムに置き換えたことで、一般の磁器よりも3割ほど軽い軽量磁器が誕生しました。
単に食器を軽くすればいいという発想なら、わざわざ磁器を使用しなくても、プラスチック製の容器に替えればそれですむわけですね。しかしJALは、
あくまで磁器にこだわった。そこには「食事のメニューだけでなく、器の質感も楽しんでほしい」というサービスマインドがあるように思います。
環境問題の取り組みは、大前提としてまず必要なことです。その上で、上級クラスにはそれに相応しいもてなしをというJALの姿勢には、好感が持てますね。
融通が利かないと思っていた機内食に特別メニューがあるってホント? 国際線の長時間のフライトでは、機内食が2、3回は出る。
エコノミーでは味は期待できないし、肉料理などは脂っぽかったり味付けが濃かったりするので、座りっぱなしの胃には少々重い、という人もなかにはいるだろう。
そんな人には、特別メニューがおすすめだ。どの航空会社も特別メニューを何種類か用意しているので、そこから選ぶことができる。 特別メニューを頼むには、出発までに
航空券の予約受付に申し込めばいい。旅行会社で予約した場合や、パックツアーの場合は、旅行会社に申し込む。
特別メニューの種類はエアラインによって異なるので、予約をするときに聞いておくといいだろう。 各社とも、用意している特別メニューは、宗教上の問題、健康上の理由、菜食主義者、赤ちゃん、子どもなどを配慮したものだ。
空の旅の楽しみの1つが機内食ですが、宗教上や健康上の理由から、通常の機内食を食べられない人がいます。そういう人のために、航空会社では、多いところでは数十種類のスペシャルミール(特別機内食)を用意しています。ただ、すべての種類の料理を積み込むわけにはいかないので、出発の24時間前(コーシャミールやアレルギー対応食など手間のかかるものは48~96時間前)までに申し込む必要があります。
スペシャルミールで最も知られているのは特定の宗教向けのものです。
・イスラム教食(ムスリムミール):豚肉、アルコール類は一切使用せず、そのほかの肉は、イスラムの手順「ハラール」に従って調理されています。イスラム系国家の航空会社では、特に指定しなくてもこれが出てきます。
・ユダヤ教食(コーシャミール):ユダヤ教の戒律に則って調理され、祈祷、封印された状態で提供されます。
・ヒンドゥー教食:牛肉、豚肉は一切使用しません。アルコール、魚介類を使用しない場合もあります。
・ジャイナ教食:殺生を徹底的に禁じた厳格な菜食主義(収穫するとその植物が死んでしまうため根菜類を使わないなど)のルールに基づく、インド風の味付けです。
・ベジタリアン食:宗教その他の理由で肉食しない人向けですが、乳製品や卵などは使われているものと、動物性食品を全く使わないものが選べる場合が多いです。
健康上の理由で食事制限をしている人向けのスペシャルミールには、糖類を抑えた「糖尿病食」、砂糖、クリーム、マヨネーズなど油脂類を控えた「低力ロリー食」、高血圧、心臓病、腎臓病の人向けの「減塩食」、バンやパスタなどグルテンを含まない「無グルテン食」、繊維質の多い食材やフルーツ、野菜などを多用した「低コレステロール食」、乳製品を一切使わない「無乳糖食」などがあるほか、固形物が食べられないときなどは個別の事情に応えてくれる場合もあります。このほか、子ども向け、乳児向けの食事も用意されています。
健康上の理由を配慮したメニューには、糖尿病食、低コレステロール・低脂肪食、低カロリー食、低塩食、アレルギー対応食などがあり、じつに細やかな心配りがされている。
赤ちゃんには粉ミルクや離乳食のベビーミール、子どもにはハンバーガー、コロッケ、パスタ、フライドチキンなどのチャイルドミールが用意されている。
まさに至れり尽くせりのメニュー。ほかの機内食が配られる前にサービスされるので、待たされることもないし、味もいいと評判だ。一度注文してみてはいかがだろう
長時間のフライトでは、コックピットのパイロットたちも食事をとるが、このパイロットの食事には細かい規則がある。
まず、
機長と副操縦士が同じメニューを食べることはない。といっても、機長のメニューが副操縦士のメニューより豪華だというわけではない。 長距離の国際線で、何度か食事をとらなければならないときは、食中毒が心配になる。
同じ料理を食べて機長と副操縦士が同時に食中毒になったら、操縦桿を握る者がいなくなってしまうからだ。 さらに、食事は同じコックがつくることも禁じられているし、まな板や包丁などの調理器具もすべて別のものが使われる。
パイロットの乗員食は、乗客のメニューとは少し異なる。乗客の食事は、彩りや味が楽しめるように工夫されているが、乗員食は、短時間に食べられてエネルギー源になることが優先されているため、いたってシンプルなものだという。
国際線でフライト時間が長いときは、パイロットの食事にも余裕があるが、東京~大阪間の短時間飛行のときでも、時間帯によっては、コックピットで食事をとる場合がある。このように時間に余裕がないときは、弁当が用意され、急いで食べなければならない。
コックピットには客室のように食事用のテーブルなどないので、操縦席を少しうしろにずらして、ひざの上に食事をのせて食べる。そのため食事は乗客のようなトレイにのっているのではなく、深さのある箱に入っている。
また、機長と副操縦士が同時に食事をとることも禁じられている。これはトラブルや緊急事態が発生したときに、必ずどちらかひとりは即座に対応できるように、通常ポジションでいる必要があるからだ。
このようにコックピット内のパイロットの食事にも、安全運航のための細かい配盧がなされているのである。
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