旅客機にも戸籍がある。そしてそれを明示しなければならない。自動車と同じように登録ナンバーを付けなければ、飛行できないのだ。
ただし車とは違ってナンバー・プレートを付けるわけにはいかないから、
主翼と胴体後部(たいていは垂直尾翼の付け根の下あたり)にこのナンバー(記号)を書き込んでいる。
便宜上ナンバーと呼んだけれど、これは数字とは限らない。普通はアルファベットと数字の組み合わせで構成されており、国によってはアルファベットだけのものもある。シビル・エアクラフト・マーキングという。これは国際的に割当てが決まっており(ICAOが認める)、それぞれの国の監督官庁が交付する。
日本では旧運輸省、現・国土交通省だ。ジャンボ・ジェットから小型の単発軽飛行機、ヘリコプタ、グライダー、飛行船に至るまで、旅客機だけではなく民間機すべてに付けられる記号で、表示が義務づけられているものだ。
この国際民間機登録記号では、まず頭に国籍を表わす記号がくる。アルファベットのみ、あるいはアルファベットと数字の組み合わせだ。アルファベット一文字か二文字が普通だが、遅れて国際航空界に加わった国では、数字とアルファベットの組み合わせになっている。
日本の国籍記号はJAだ。JAPANのJAだから分かりやすいが、戦前はJだけだった。1文字のほうが航空先進国というイメージがあるため、戦後JAになったことを嘆く人も少なくない。
わが国は戦後に航空の空白期があったことと、Jはヨルダン(Jordan)とまぎらわしいので、日本にJA、ヨルダンにJYが割り当てられたのだ。
アメリカはNだ。なぜかAではなくN。ちなみにAを使っている国はない。英国はG、フランスはF、ドイツはD、イタリアはI、カナダはCと国籍記号一文字の国はいずれも航空先進国だし、国名の頭文字でもある。なお中国と台湾は共にBを使っており、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)がPだ。一文字の国は世界中でこれだけ。
韓国は二文字でHLである。
この国籍記号の次にくるのが登録記号で、数字のみ、数字とアルファベットの組み合わせで構成される。これは各国で独自に決めるわけだが、日本のようにきちんと分類され、ある法則にのっとって順序正しく交付される例もあれば、アメリカのように原則の範囲内で航空会社が好きな記号を使える国もある。
数字の桁数やアルファベットの数、その組み合わせ方などは各国まちまちだ。なお主翼と胴体後部の他、首脚扉に数字・記号の末尾2桁(あるいは3桁)だけが書いてあるので注意して見てみよう。
わが国では、JAの後に付く登録記号は4桁の数字で統一され、番号は機種別にきちんと次のように区分されている。
0001~0999第三種滑空機(グライダー)
1001~1999特殊の航空機(飛行船など)
2001~2999第一種、第二種滑空機および動力滑空機
(モーターグライダー)
3001~4999レシプロ単発飛行機
5001~5999レシプロ双発飛行機
6001~6999双発を除くレシプロ多発飛行機
7001~7999レシプロ回転翼航空機(ヘリコプタ)
8001~8999ジェットおよびターボプロップ飛行機
9001~9999タービン回転翼航空機(ヘリコプタ)
かつては小型・中型・大型という旅客機分類法が一般的だったのだけれど、ジェット機時代になってエンジンの推力が増大し、それにともなって機体の最大離陸重量が決定されるようになると、その概念も変わってきて、単純に機体の大きさだけでは分類しきれない面もでてきた。
いまでは大・中・小というのは、外観の大きさだけを基準にしたおおよその分類にとどまっている。そこで胴体キャビン(客室)のサイズを目安にする方法が、新しい分類法として定着してきた。ワイドポディ、ナロウボディという用語が、すでに一般的になっている。
ワイドボディ(広胴型)は、その名の通り幅の広い胴体を持っている機種だ。超大型機のB747ジャンボに始まり、一般に大型機と分類されているマクダネルダグラスDC-10、ロッキードL-1011トライスター、エアバスA300が登場して確立した。
A310、A330、A340、マクダネルダグラスMD-11、イリューシンI-86、I-96、そして最新鋭のB777につながる系譜だ。いずれも6メートル内外の太い胴体幅だ。その胴体のキャビンに、8~10列の座席を配置し通路を二本設けているのが、ワイドボディ機に共通した特徴だ。現在では長距離路線(国際、国内線とも)は、完全にワイドボディの時代になったと言えるだろう。
これに対して、従来型のスタンダードな幅の胴体を持つのが、ナロウボディ(狭胴型)だ。DC-9、MD-80/90シリーズ、B737、B757、A320シリーズなどが代表的な機種。胴体の内径が3.5メートル以下で、キャビン中央に通路を一本だけ設け、その両側に座席を配置している。
1980年代になって登場してきたのが、胴体幅がワイドとナロウの中間で通路は二本という、セミワイドポディ機だ。ボーイング767が代表選手である。B767の胴体幅は5メートル。
エンジンによる分類
航空エンジンは、タービン・エンジンとピストン・エンジンに大別される。ピストン(レシプロ)・エンジンの旅客機は、超ベテランの旧型機か、軽飛行機を輸送用に転用しているものだけだから、
旅客機のエンジンはほとんどがタービン・エンジン機と考えていい。
でもYS-11をはじめプロペラの旅客機が、ずいぶんあるじゃないかと思われるだろうが、あれはターボ・プロップ・エンジンという、タービン・エンジンの1種類を使っているのだ。
タービン・エンジンには、ターボジェット、ターボファン、ターボプロップ、ターポシャフトの4種類があり、さらに発達型ターボファン、高速ターボプロップATP・エンジンなども実用化されている。このうちターボジェットとターボファンを、ジェット・エンジンと通称している。
ターボプロップ・エンジンは、エンジンの排気ガスを高速で噴出し、その反作用を利用して推進力(推力)を得るのはジェット・エンジンと同じだが、排気エネルギーを軸馬力として取り出し、大型のプロペラを回転させて推力を得る点が異なっている。
さてもうひとつのエンジンによる分類法は、エンジンの数と取付け方(マウント方法)だ。数のほうは、レシプロの単発に始まって、双発、三発、四発とある。エンジンの数と取付け方が、飛行機のシルエットを決めるといっても過言ではないほどだ。したがってこれを知っておくと、空港にアプローチしてくる機影や、上空高く飛んでいる小さな機影を見て、即座に機種が判別できるようになる。やってみるとけっこう楽しいものだ。
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