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旅客機の機内食は調理されてから約3時間で乗客の口に入る

1.旅客機のトイレ事情
食べたり飲んだりしたあとは、どうしても生理的欲求に襲われることになる。入れるのも大切だが出すことも重要。旅客機のトイレットは、生理現象を処理することと、化粧用の2つの機能を備えている。専門的にはラバトリー・モジュールと呼ばれている。

これもギャレーと同様に、限られた空間に多機能をコンパクトに凝縮する技術が要求されるもので、日本の技術が世界をリードしている。

ラバトリーには便器のほかに、鏡、洗面台(温水・冷水用蛇口付き)、化粧品、石けん、ペーパータオル、シェーバー用電源などが装備されている。女性用生理用品も必ず備えてあるのでご安心を。

最近のモジュールでは、折り畳み式のおむつ交換台も装備され、お母さんたちに喜ばれている。トイレット・システムが水洗式なのは現在では常識だが、実はこれはジェット旅客機になってからのこと。

初期の旅客機からDC-4の頃までは、汚物タンクに溜め込む方式で、着陸後にタンクごと外して内容物を捨てていたのだ。レシプロ旅客機の最後の頃(DC6B、DC-7)には旅客数も増えたので、タンクは機内に固定し、内容物だけを抜き取る方法に変わった。

そして水洗式になったのがDC-8、B707などのジェット時代だ。旅客機の水洗トイレは、通常の水洗式とは違って下水道に流すわけにはいかないので循環式だ。つまり汚物タンクに溜まった汚水を濾過して水洗用の水に再生、再使用する方式。殺菌、脱臭、着色の働きをする処理剤(デリサンWなど)を入れてあるので、再生された水洗用の水には色がついている。

通常は青だが、最近では着色されていないものもある。循環式のメリットは、タンクが小型ですむ点だが、濾過用のフィルターに異物や紙が詰まると大問題。便器にはくれぐれも変なものを捨てないように。煙草なんてもってのほか。

ティッシュペーパーや紙タオルもダメ。捨てて流せるのは、トイレットペーパーと便座のシートカバーだけだ。なお 機内の手洗い水や飲料水も循環式と誤解している人もいるようだが、これは間違い。これらの水は使い捨てになっている。

また最近のトイレの進歩にお気付きだろうか。ブラッシング・ボタンを押すと、汚物が勢いよく吸い込まれるように なっている。B767で使われ始めた新設計のバキューム式だ。これだと使用する水の量が少なくて済むし、完全に流 せる。トイレットの科学も見えないところで進歩を続けている。スペースシャトルで採用されているような、汚物を乾燥し殺菌消毒する方法もすでに実用化しているとのことだ。

さて機内のトイレの数が問題になったのは、400人も500人も乗れるワイドボディ・ジェットが誕生したときだ った。トイレの数、大きさ(容量)というのは、科学的に乗客の排泄量と使用頻度の研究から割り出している。統計によると、乗客1人当りの排泄量というのは1時間当り0.1リットルだということだ。また使用頻度は、当然ながら長距離路線になるほど高いとされている。

これらのデータを勘案して、トイレ1か所当たりの乗客数は、長距離路線では30~40人、中距離路線で40~50人、短距離路線では50~60人となるように、座席数に対応するトイレ数を決めている。ただし航空会社によって数や配置の希望がまちまちなので、機種ごとに明確に決まっているわけではない。数も配置も航空会 社の希望で変えられるわけだ。B747では、最大19か所までトイレを設置することができる。



2.なぜ旅客機のトイレはあんなに勢いよく吸い込むの?
長時間のフライトの際にお世話になるのがトイレだ。たとえ空の上であろうとも、トイレはできるだけ快適な空間であってほしいもの。

旅客機のトイレのシステムには現在、おもに2種類ある。ひとつは、ボーイング747やDC型機の「循環式」で、もうひとつはボーイング767などの新型機に使われている「バキューム式」だ。

現在では、いずれも水洗式だが、じつは水洗式になったのはジェット旅客機になってからのこと。かつては、汚物タンクに溜め込んで着陸後にタンクごとはずして清掃する汲み取り式だったというから驚く。機内に悪臭が漂うということもあったようだ。

その後、タンクは機内に固定し、汚物だけ抜き取る方法になった。そしてボーイング707やDC8型機などのジェット時代になって、水洗式になった。

新鋭機にはこのバキューム式が使われるが、少し前の型では循環式トイレが用いられる。これは、新幹線などでもおなじみの青い液体で汚物を洗い流す方式。

汚物タンクはトイレごとにあり、汚物タンクにためられた汚物のうち水分だけを抽出し、その液体を殺菌して再び汚物を流すための液体として使う。あの青い液体の「青味」は洗浄剤の色である。ただしなんども循環させているとさすがにアンモニア臭が機内に漂うことがある。 循環式ではトイレごとに汚物タンクがあるので、抜き取り作業は大変で、ある。

また、化粧室の設置にも制限があり、容易に場所を動かすことができない。その点、バキューム式は、汚物タンクが1か所にまとめられているので抜き取り作業は簡単。また、化粧室のレイアウトも自由だ。

近年では「バキューム式」が主流になってきている。これは、機内と機外の気圧の差を利用したもの。前述したように、高度1万mでは、機内は0.8気圧で、機外は0.2気圧である。トイレと汚物タンクを結ぶパイプは機外に通じていて、この気圧差を利用する。

空気は気圧が低いほうに流れるので、トイレと汚物タンクをつなぐパイプの気圧を下げておき、洗浄スイッチを押すとパイプが開いて汚物が気圧の低いタンクのほうへまっしぐらに流れていくしくみだ。掃除機でゴミを吸い込むようなイメージである。これなら汚物タンクは後方に1か所だけでいいので、抜き取り作業も簡単。
汚物と一緒に周囲の空気を吸い込むので臭いもなく、より快適空間になる。
トイレにも、飛行機ならではの工夫が隠されているのである。

ボーイング社がつくる旅客機のほとんどが日本製の化粧室を採用している。日本の技術はこんなところにも生かされている。 短距離を飛ぶ飛行機にはトイレがないことがある。ただし非常用のトイレは用意されている場合があるので、もし火急の用件ができてしまった場合は、キャビンアテンダントにその旨を伝えよう。

3.トイレを流すための水はどれくらい必要
これは、想像以上に少ない。旅客機のトイレは少量の水で汚物などを勢いよく流すしくみが完成している。

旅客機のトイレには、大きく分けてふたつのタイプがある。ひとつは「循環式」という、ちょっと古いタイプのもの。トイレのすぐ下に汚物をためるタンクがあり、タンク内の水を循環させてトイレを洗浄することからこの名前がついた。

しかし循環式は限られた水をくり返し利用するので、そのつど水は殺菌・浄化されるものの、使用頻度が高くなれば水も汚れていくという欠点があった。そこで考えられたのが、機内と機外の気圧差を利用する「バキューム式」と呼ばれるタイプだった。

地上では機内も機外も同じ1気圧だが、高度1万mの上空では、機外の気圧は機内に比べてぐっと低下する。

ここでポイントになるのが、「空気は気圧が高いほうから低いほうへ流れる」という性質だ。バキューム式トイレでは、トイレとタンクをつないでいるパイプが機外に通じている。フライト中、トイレを使用したあとで「洗浄」のボタンを押すと、流れてくる水は少量でもかなりの勢いで汚物が吸いこまれていくのを不思議に思った人も多いだろう。

これはパイプを遮断しているバルブが機外に向かって開き、パイプ内の気圧が一気に低下するためで、機体に穴があいたのと同じ状態になることで汚物がタンク方向に吸い出されていく。このとき、空気は機外に逃がされ、汚物だけがタンクに集められる。 バキューム式はタンクが後方の1か所にあればいいので、循環式に比べて機内レイアウトの自由度が増すというメリットもある。フライト後の清掃時の処理も簡単になった。


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