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空港のバードストライク対策は飛行機に近づかせない工夫がされている

1.実は怖いバードストライク
空港を離発着する航空機にとって、バードストライクも厄介な問題である。これはエンジンが鳥を吸い込んでしまうことで、吸い込んだ鳥が大型だった場合は、最悪エンジン停止となってしまう。日本でも着陸機がバードストライクし、エンジン修理のため折り返し便が欠航になるなどの被害があるほか、米軍機では、バードストライクが原因で墜落、乗員全員が死亡するという事故さえ起きている。


空港の近くには鳥がいっぱい
2009年、ニューヨークのラガーディア空港を離陸したUSエアウェイズ機が、直後にハドソン川に不時着水した事故は、機長の的確な判断によって全員が無事生還した「ハドソン川の奇跡」として有名ですが、事故の原因はバードストライクでした。バードストライクは、航空機と鳥が衝突する事故だけを指すと思われがちですが、鉄道や自動車、ビル、鉄塔などに鳥が衝突する事例もバードストライクと呼びます。

航空機のバードストライクは、離着陸時のように比較的低速度で、しかも高度が低いときに多発しています。
ジェット機の場合は特に、エンジンのエアインテーク(空気吸入口)に鳥が吸い込まれて事故につながるケースが多く報告されており、日本国内においても年間1000件以上発生しています。

空港は広大な土地を造成して建設されるため、近くに鳥の営巣地域があることもしばしばで、同じ空域に航空機が侵入したときに起きやすいといわれています。特に、日本の空港の場合は、国土の狭さから海岸沿いに作られることが多く、水鳥によるバードストライクが多発しています。鳥類のなかでも水鳥は比較的大型種が多いため航空機に与えるダメージも大きく、ときには墜落事故を巻き起こす可能性もあるのです。


航空機の対策と空港管理での対応
バードストライク対策として、航空機から超音波や赤外線を発して撃退するといった方法が試みられましたが、鳥は可聴範囲、可視範囲が狭いためほとんど効果がなく、また順応性が高いため、最初は効果があっても次第に無意味になってしまうことが往々にしてありました。航空会社のなかには、エンジン部に目玉模様を付ける対策を施したケースもありましたが、当初は警戒するものの、これも危険がないと判断されれば次第に順応し、効果がなくなっています。

一方、空港周辺の対策としては、営巣地域を徹底して除去したり、えさ場となる草地を整備するなどの対策を講じています。捕殺によってその数を減らしていくことも、一つの対策になっています。また、空砲を使用して追い払う方法もありましたが、大音響には比較的速やかに順応する習性があり、大きな効果は望めませんでした。鳥が危険状態に陥った際の鳴き声である「ディストレスコール」も流しましたが、これも危険がないとわかれば順応してしまうようです。
このように、バードストライクには絶対的な対策がないというのが現実です。


空港の展望デッキで、滑走路の方向から鉄砲の空砲のような音を聞いたことはないだろうか?
実際はスピーカーから出されていることも多いが、これは滑走路周辺の鳥を追い払うための音で、その地域の猟友会に頼んで、空砲を撃ってもらうこともある。

鳥が天敵に襲われたときの鳴き声をスピーカーで流すといったことも行われている。しかしいずれも一時的に鳥を追い払うだけで抜本的な対策とはいえない。効果があるのは最初だけ、都会のカラスと同じで、危険がないことが分かると効果はなくなってしまう。そこで猛食類であるハヤブサを放って鳥を追い出すなどの対策も試みられている。

また以前、全日空では、鳥の嫌いな目玉の模様をエンジンのシャフト部分に、中心から少しずれた位置に描き、シャフトが回るとそれがくるくると動いているように見え、鳥が航空機に近づかないような対策もとられたが、これといった効果が得られず、このエンジンシャフトの目玉模様も現在では描かれなくなっている

話は飛ぶが、北海道を列車で旅していると、ときどきカモシカが逃げていくのを見かける。ニュージーランドの列車車窓からは羊が逃げていく光景を見た。共通していえるのは、線路から直角方向に逃げればいいのに、必ず列車の進む向きと同じ方向に死に物狂いで逃げていることだ。いくら逃げても列車のスピードのほうが速く、動物も必死なのだが、動物からすれば追いかけられている方向に逃げるというのが習性なのだろう。鳥の場合も同じで、航空機から離れようとせず、航空機の向かう方向に逃げてしまう。

2. 空港周辺に鳥が住みつかないような環境にすることも大切だ。2006年に日本全国で起こったバードストライクの件数は、発着回数1万回あたりで、神戸空港が50.7回、伊丹空港が3.75回、羽田空港が3.62回、成田空港は2.26回で神戸空港がダントツで多かった。

神戸空港は空港島の海側にあり、市街地側は民間向けの土地として売り、その売却益で空港建設費用を賄うはずだったのだが、ほとんど売れておらず、この空き地が野鳥の楽園となっているのが大きな原因だった。

東北新幹線が盛岡まで開通した直後、盛岡に到着した車両の先頭部はぶつかった多くの鳥の血で白い車体が赤く染まり惨たんたるもので、ウインドワイパーには死骸も引っかかっていた。運転手は「東北には新幹線ができたばかりなので、まだ沿線の鳥が新幹線のスピードに慣れていない」といった。神戸空港に当てはめると「空港ができたばかりなので鳥が飛行機に慣れていない」であればいいのだが。
かつては時刻表に、飛行機の出発時刻とともに、このモービルラウンジの出発時刻までが記されていた。
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